絵本「おさるのジョージ」シリーズの翻訳をつとめている福本友美子さん。もともと図書館の司書をしていたという福本さんに、「親子の心の中にかけがえのないものを育んでくれる」という絵本の読み聞かせについてお話を伺いました。

心に残るのは「誰が絵本を読んでくれたか」

── お子さん向けの絵本の翻訳をしている福本さんにとって、絵本の魅力はどこにあると思いますか。

 

福本さん:
絵本には必ず絵があるので、それを見る方の世界が広がります。

 

特に小さいお子さんにとって絵本は、“広い世界に開ける窓”だと思っています。親御さんたちはお子さんにできるだけ多くの体験をさせようと思って、お休みの日に遊びに連れて行くと思いますが、「おさるのジョージ」のように毎回、いろいろな体験をさせるのは難しいですよね。

 

翻訳を担当した絵本『としょかんライオン』(岩崎書店)の読み聞かせを行う福本さん

絵本の中ではさまざまな体験ができます。それに翻訳絵本の場合は、世界中のお話があるので、行ったことがない外国の子どもたちの様子もわかります。国や言葉、文化が違っても嬉しい、悲しいといった感情は一緒ですので、人に対する思いやりなども絵本を通じて感じられると思います。

 

── 共働きの家庭が増えていますが、時間に余裕がなく、読み聞かせが大変だという声も聞かれます。

 

福本さん:
絵本は、小さいころは誰かに読んでもらうものですね。子どもたちはその声を耳に聞きながら、絵を見て、想像を膨らませていきます。私はそれが大事なことだと思うんです。

 

ある大学で絵本の授業をした際に、学生に幼い頃に読んだ絵本について書いてもらったんです。そしたら、「この本は歌の部分を、お父さんが面白い節をつけて読んでくれた」とか、「寝る前に弟と一緒に並んでお母さんに読んでもらったあと、今度は私が弟に読んであげた」というような思い出が、必ず絵本のタイトルと一緒に書いてありました。

 

それを見て、絵本というのはお話そのものよりも、“誰が読んでくれたか”がいちばん残るんだということに気がついたんです。

 

小さいお子さんは、大好きな本をまるでお気に入りのぬいぐるみのように特別な愛情を持って接しているように思うのですが、誰かが自分だけのために、一緒の時間を楽しんでくれたことというのが、子どもたちの中にかけがえのないものを育むのではないかなと思います。

 

福本さんが翻訳をしている『おさるのジョージ』シリーズ(岩波書店)は、現在34冊になる