茂森あゆみ
いまも「5時起きで子どもたちのお弁当作りをしています」と話す茂森さん

「あのとき、ウーバーがあったらどれほど助かったか(笑)」と話す、茂森あゆみさん。第一子の出産では、尾てい骨にヒビが入り、車いす生活も経験。いまも18歳、14歳、11歳の子どもを育てています。育児の酸いや甘い、茂森さんはどう見ているのでしょう。

出産中に尾てい骨にヒビが入り痛くて痛くて

── 現在、18歳、14歳の男の子と、11歳の女の子のママの茂森さん。『だんご3兄弟』を歌った“あゆみおねえさん”が、実生活でも3人のお子さんを育てていらっしゃることに、不思議な縁を感じます。まさに、リアル「だんご3きょうだい」ですね。

 

茂森さん:それ、よく言われます(笑)。なので、次男が生まれたときには、「リーチ!」と新聞に書かれました(笑)。

 

── 1人目のお子さんを出産されたのは、32歳のとき。初めての出産と育児は、いかがでしたか?

 

茂森さん:出産はわりと壮絶だったんです。子宮口が開く前に破水し、予定日の2日前に入院したのですが、出産に2日くらいかかって。

 

最後は先生が馬乗りになってお腹を押して、子どもを吸引。出産が終わると、尾てい骨にヒビが入っていて、痛くて痛くて…。

 

茂森あゆみ
きょうだい仲や家族仲がいい茂森さんと子どもたち

入院中はずっと車いすでした。自宅に戻ってからも体中が痛くて、動くのもつらかったのですが、子どものお世話に必死で、それどころではなくて。

 

“こんなに大変だとは思わなかった!ほかのママたちはどうやっているの?”というのが、正直な気持ちでした。

 

── 大変な状況だったのですね。

 

茂森さん:当時、テレビ局に務める夫は担当していた番組がスタートしたばかりで、ものすごく忙しく、ほとんど家にいませんでした。

 

実家は九州なので母に頼ることもなかなかできず、ほぼワンオペ状態。子どもから目を離せず、気が抜けない毎日で精神的にも余裕がありませんでしたね。

 

あの時、Uber Eatsがあれば、どれほど助かったかと思います(笑)。

 

── お仕事はどうされていたのですか?

 

茂森さん:完全母乳で人に預けることができませんでした。出産前から出演していたクラシック音楽バラエティー『クインテット』(Eテレ)のパペット声優のお仕事には、子連れで出勤していました。

 

収録の途中で「あゆみちゃん、授乳タイムで~す」と、休憩をとってもらいながら。その後はお仕事をセーブし、育児に専念しました。

収録のために子どもを連れてきてくれたお母さんたちに感謝

── それまで「うたのおねえさん」として、たくさんの子どもたちと触れ合ってきた経験は、ご自身の子育てにも生かされされましたか?

 

茂森さん:番組で何万人ものお子さんと触れ合うことで、どうすれば喜んでくれるのかを学ばせてもらったので、それが子育てにも役立ちました。

 

ただ、本当の意味でお母さんたちの苦労が理解できるようになったのは、自分が子どもを産んでからでしたね。

 

茂森あゆみ
長女とデート中に巨大なレインボー綿菓子を手にビックリする茂森さん

“あのときの私はわかったふりをしているだけで、何もわかっていなかったんだな”と、申し訳ない気持ちにもなりました。

 

── どういうことでしょうか?

 

茂森さん:じつは子どもが小さいころ、リハーサルを見学するためにスタジオに連れて行ったことがあったのですが、本当に大変で。

 

まずスタジオに着くまでにひと苦労で。渋谷駅を子連れで移動すると、エレベーターのない階段では、“どうやってベビーカーを下ろせばいいのだろう…”と途方にくれました。

 

“番組収録時のママたちもきっとこんな思いをしながら、お子さんを連れて参加してくださったんだなあ”と思うと…。

 

感謝の気持ちと申し訳なさで胸がいっぱいになり、“お母さんたちを抱きしめたい!”と思ったくらいです。

 

── 36歳のときには、2人目を出産されています。

 

茂森さん:本当はもっと早く欲しかったのですが、なかなか授からなくて…。でも、長男が3歳のとき、七夕の短冊に「おとうとがほしい」と書くと、直後に妊娠して、翌年の七夕に次男が産まれたんです! 

 

ちょうどオリンピックイヤーだったので、夜中に競泳の北島康介選手を応援しながら授乳していた思い出があります。

 

── まさにミラクルですね!短冊パワーでしょうか(笑)。きっとお兄ちゃんにとって、忘れられない七夕になったでしょうね。

 

茂森さん:すごく喜んでくれて、ずっと弟の面倒をよくみてくれましたね。弟もそんなお兄ちゃんが大好きで同じ中学校を受験し、部活も一緒。いまもすごく仲がいいんですよ。

 

── 兄弟仲がいいのは微笑ましいですよね。インスタグラムでご長男の写真を見ましたが、すごく背が高くてスタイルがよく、モデルのようだと評判でした。

 

茂森さん:ホントですか?お兄ちゃんが喜びます(笑)。昔から背は高いほうで、中学校に入るときには160cm以上ありました。

 

そこからグングン伸びて、いまでは180㎝以上に。すごく食べるわけではないのですが、昔からとにかく牛乳が大好きで、家族全員で1日5リットルくらい飲みほします。

朝5時に起きてお弁当を作りマスクも準備して

── 1日5リットル!冷蔵庫がパンパンになりそうです。育ち盛りのお子さんが3人いると、家事も大変ですよね。

 

茂森さん:お弁当づくりもあるので、朝はずっと5時起きの生活です。

 

5〜6時の間に、お弁当と朝ごはんを作ったら、子どもたちの制服をすべてセッティングして玄関にかけておくのが日課です。

 

いまも5時起きでお弁当作りをする茂森さん。「急に“明日部活だから”と言われ、慌てて作った牛丼弁当です」

ハンカチやマスクなども、準備しておかないと気が済まないんです。夫には、「手をかけすぎ!この子たちのためにならないから」と言われるのですが、ついやってしまうんですよね…。

 

── 家事サービスを利用することもありますか?

 

茂森さん:キッチンと水回りのお掃除は10年以上前から、月に1回、プロの方に頼んでいます。

 

子どもが壁にひどい落書きをするなど、予期せぬトラブルが起きた時でも対応してくださるので、助かっていますね(笑)。

 

料理と洗濯は好きなのですが、掃除はあまり得意ではないので、適当に手抜きします。

 

するといつの間にか夫がやっておいてくれるので、「パパのほうが掃除はうまいよね~」と持ち上げて、いろいろと手伝ってもらっています(笑)。

 

── いちばん下のお子さんは、まだ小学生でしたね。

 

茂森さん:39歳で産んだ子ですし、ひとりだけ女の子ということもあって、どうしても甘くなってしまいますね。

 

長男からは“怒るときはちゃんと怒らないと、あの子のためにならないよ”と指摘されています(笑)。

 

長女と長男は7歳離れているので、パパに近い感覚があるみたいで、甘えて頼りにしていますね。

 

3人いることでありがたいなと思うのは、私が誰かを叱ったら、兄妹でフォローするなど、逃げ場がたくさんあることです。

 

だから、こちらも遠慮なく叱ることができますね。兄妹で助け合ったり、補い合う姿を見ていると、本当に幸せな気持ちになります。

 

子育ては大変ですが、終わってみればすべてが美化され、いい思い出。“なんとかなるさ!”の精神を大事にしています。

 

PROFILE 茂森あゆみさん

1971年生まれ。武蔵野音楽大学卒業。在学中に、NHK「おかあさんといっしょ」17代目うたのおねえさんに就任。6年間務める。1999年『だんご3兄弟』が大ヒット、その年の紅白歌合戦にも出場。32歳で長男、36歳で次男、39歳で長女を出産。

取材・文/西尾英子 撮影/坂脇卓也 画像提供/ホリプロ