痛ましいニュースは「思わず自分に置き換えてしまう」
── 実生活で小児科医と接することが、今回の演技に役立っている面はありますか?
中尾さん:
僕の役は救急救命医で小児科ではないので、これまで会ってきた優しい小児科の先生の姿を直接的に活かせる場面はないんです。たとえば病院のベッドで眠っている子どもを見つめながら、心のなかで「助けてあげるからね」と思う。
小児科医なら、そこで表情を緩めて気持ちを表現するかもしれません。でも今回演じている東上は淡々と仕事をしている人間だから、思いはもっているけれど表には出さない。そういう意味で、感情表現が難しい役です。
ただ「小児科医だったらこう演じるけど、救命医だから」とイメージする面で、実際に小児科の先生と接してきた経験が、自分のなかではとても大きいと感じますね。
── 小さいお子さんが命を落とす、事故や事件のニュースが少なくありません。報道を目にして、考えてしまうことも多いかと思います。
中尾さん:
親になってから、そういうニュースが目に留まるようになりましたね。見方が変わったというか、どうしても「自分がその子の親だったら…」と置き換えて見てしまいます。
痛ましい事件や事故の報道を見るたび、自分だったら何ができるか?と考えてしまう。実際は何もできませんが、だからこそ、今回のような“子どもの命と向き合う作品”を通じて伝えられることを、精一杯やるしかないと考えています。
演じる役に子どもがいる、いないはあるにしても、僕自身に子どもがいるので。そのことがやはり、演じるうえで思いの強さにつながるし、表現が変わってきます。そのバックボーンを大切に、演技を通じて作品のメッセージを伝えたいですね。
<作品紹介>
『PICU 小児集中治療室』
放送日時:月曜夜9時
出演者:吉沢亮、安田顕、木村文乃、高杉真宙、高梨臨、菅野莉央、生田絵梨花、中尾明慶、菊地凛子、松尾諭、正名僕蔵、甲本雅裕、大竹しのぶ 他
脚本:倉光泰子
演出:平野眞
プロデュース:金城綾香
©️フジテレビ
取材・文/鍬田美穂 撮影/二瓶彩