検温器が熱にすぐ反応する
コロナの蔓延で、こんな不便も生じました。
「お店などの出入り口に設置された検温機が、駐車場から店まで歩いただけで発熱した賀久にすぐに反応します。
その都度、コロナではなく難病によるものだと説明しなくてはいけないので、事情を知っている場所以外には行きづらくなりました」
かけっこで賀久くんが最下位だった理由は、他にもあります。
「生まれつき手や足の指が分離されず皮膚で固まっている部分があり、足の裏も皮膚が分厚かったり薄かったりするので、歩いたり走ったりが難しいのです」
賀久くんは他にも、多くのハンディキャップが──。弱視や皮膚の過多で耳の穴がふさがれる難聴。皮膚が突っ張り目を閉じることが難しく熟睡ができない。
保湿のために常にクリームを塗り、しみるのを我慢しながら皮膚を洗い落とすために何度も入浴する。
新しい皮膚が次々と再生するのでカロリー不足となるため、多くの食事をとる…などです。
服を着せることもできないと思った
そんな困難をものともせず賀久くんは来年、地元の小学校に通うことになっています。
幼くして亡くなってしまうこともある難病を抱える賀久くんに、両親はどう向き合ってきたのでしょうか?
「強く意識していたわけではありませんが、賀久に何かできたことがあれば全力でほめて、私たちも全力で楽しむようにしてきました。
というのは、生まれた直後は皮膚がボロボロで、歩くことも、ものを見ることも、服を着せることもできないと思っていたからです。
だから、私たちが普通にできることができただけで、感動してきたので、今回の運動会は断トツのトップです」