人と接触できない辛さを感じた10日間

── 芸能界でも感染される方が多い印象ですが、周りの方から連絡などはありましたか?

 

山田さん:
私自身の症状は軽く、かなり元気だったこともあって、感染してもそれほど深刻な感じはありませんでした。だけど、みなさんすごく心配してくださって…。「世の中のコロナへの反応は、こういう感じなんだな」と思いました。

 

でも私、コロナ自体は全然平気だったけど、「寂しい病」になっちゃいましたね(笑)。

 

10日間も誰にも会わないって、なかなかないじゃないですか。乳がんの入院も6日間だったのに、それよりも長くて…。

 

── 確かに、人と接触しないように過ごさないといけないのが、感染症の辛いところです。新型コロナウイルスは、隔離期間も長いですし。

 

山田さん:
電話をもらって、おしゃべりできるだけでも嬉しい。友達が家まで食べ物を持ってきて、ドアノブにかけてくれたこともありました。遠く離れてから「ありがとうねー」って、そういうことがすごくありがたくて、嬉しかったですね。

 

山田邦子さん
10日間の隔離生活では、乳がんの入院期間とはまた違った辛さを感じたそう

── 隔離期間の後半にはYouTube「山田邦子 クニチャンネル」を更新して、元気な様子を見せていらっしゃいました。

 

山田さん:
自宅から、YouTube配信はできましたね。

 

みなさんからもコメント欄に、「私もなりました」とか、「元気そうで安心した」とか、「無理しないで」と励ましのコメントをたくさんもらって、それも本当に嬉しかったです。

隔離期間は想像以上に有意義な時間に

── 元気な姿を報告したYouTube動画では、家の片づけをしてネタ用のマスクが出てきた話をしていましたが、隔離期間をどう過ごしましたか?

 

山田さん:
かなりのものを処分しましたね。すごい片づけて、部屋がきれいなっちゃって(笑)。

 

縫い物も、かなりやりました。元々、衣装を作ることが多くて、ドレスの裾を切ったら共布でヘッドドレスを作るとか、チクチク縫うのが好きなんです。自分で作れば、思い通りにできますからね。今日の上着も、自分でスパンコールや飾りをつけたものなんですよ。

 

台本や原稿を書くのも、すごく捗りましたね。あとは、料理。区から自宅療養者向けにレトルトとかの食料が送られてきて、友達もトマトとか、いろいろ食材を送ってくれて…。レトルトをアレンジしてみたり、トマトだけで何品作れるかチャレンジしたり、そんなことをやっていました。

 

山田邦子さん
自分で縫いつけたという装飾が素敵なジャケット。とてもお似合い!

── 元気とはいえ一応は療養期間なのに、全然休んでいないですね(笑)。

 

山田さん:
10日も身動きできないと、いろいろ影響がありましたからね。先日リリースしたアルバムのレコーディングも、当初の予定より遅れてしまって…。でもひとつだけ、予定通りにいかなかったおかげで、いいことがあったんです。

 

22歳のイケメン演歌歌手、青山新くんとデュエットした『あの日の恋物語』は、水森英夫先生に作曲していただきました。そのデモテープは、水森先生ご自身が歌入れしてくださったのですが、門下生の新くんに「そういうことは、他でやったことがない」と、すごく驚かれたんです。

 

たぶん、スケジュールが変わって歌唱指導できない代わりに、歌ってくださったんだと思います。楽曲の提供だけでも嬉しかったのに、歌入れしたデモテープまでちょうだいできて、本当に記念になりました。

 

隔離期間は本当に寂しかったですし、仕事も取材予定をずらしてもらったり、舞台の顔合わせに参加できなかったり、もどかしい思いも、申し訳ない気持ちにもなりました。本当は3日ほど行く予定だった、宮古島にも行けませんでしたし。でも、貴重なデモテープを手にできたから、「得しちゃった」という気持ちになれましたね。

 

PROFILE 山田邦子さん

1960年東京都生まれ。お笑い芸人、タレント、女優、歌手、漫談家のほか、「山田邦子 クニチャンネル」でYouTuberとしても活動。10月12日には歌謡曲ミニアルバム『ザ・山田邦子カーニバル!』が発売された。



取材・文/鍬田美穂 撮影/渡邉茂樹