憧れの人の生き方に触れて自分たちのテーマがみつかった

── 絵本作家として活躍する前に、絵本作家の五味太郎さんに出会ったと聞いています。

 

tupera tupera(亀山さん):
五味さんと会ったのは27歳ごろだったかな。

 

tupera tupera(中川さん):
25歳ぐらいだったんじゃない?ユニット結成のころだよね。

 

tupera tupera(亀山さん):
そうだ、ユニット結成は25歳だから、その前後に五味さんとの出会いがありました。

 

五味さんは「線を一本引いても五味太郎」といってもいいほど。作品も人間性も唯一無二の存在ですよね。まだ若くてこれからどうやっていこうかと試行錯誤していた時期に、そうした出会いがあったことは、幸運だったと思っています。

 

ワークショップをお手伝いしたり、五味さんと一緒にいる中で、今も大事な関係である出版社の方たちにも出会いました。

 

── 20代は成長する時期ですね、そのころに絵本作家の大御所である方との出会いから何を感じましたか。

 

tupera tupera(亀山さん):
五味さんから僕が感じ取ったのは、作家を仕事にしているのではなく、生き様としての作家が目の前にいることでした。自分が人生を楽しむことを優先している。そのことに衝撃を受けました。まさに成長の時期というか、人生の指針を決定したような気がします。今後の自分たちのテーマである「遊び心」ですね。

「絵本にパンツをはかせたい」は雑談がきっかけ

── 大ヒット絵本『しろくまのパンツ』の誕生のきっかけを教えてください。

 

tupera tupera(亀山さん):
五味さんとブロンズ新社の編集長の若月さんと、他にも何人かで毎週テニスをやっていたんですが、休憩中に雑談している中で「絵本にパンツをはかせたい」という絵本の提案をしたんです。その時すぐに、若月さんが「おもしろい!」と言ってくれて、どんな形で実現できるかを検討してくれました。そこからアイデアが生まれた絵本なので、ストーリーや展開は後から強引に(笑)。中川と一緒に考えていったんですよ。

 

ありがたいことに国内外で愛される絵本になり、今年で10年目。それを記念して8月に続編の『ねずみさんのパンツ』も刊行されました。

 

2012年発売の「しろくまのパンツ」(ブロンズ新社)が大ヒット。tupera tuperaさんのファンが増大

── 20年も続いているユニットですが、役割分担をしているのですか?     

 

tupera tupera(中川さん):
絵と文章で分かれているという様な、きっちりした分担はないんです。お互いの得意不得意はわかっているので、制作するものによって、自然と役割がわかれるようなことはあります。その作り方も含めて、二人の間でキャッチボールをしながら、作り上げていきます。

 

tupera tupera(亀山さん):
絵本の場合は、僕が絵本のアイデアをひらめいて、中川に投げることが多いです。『しろくまのパンツ』のようにね。でも逆に中川から提案されたアイデアもありますよ。『いろいろバス』や『めがめがね』とか。

 

いざ制作に入ると「どれを描こうか」というやり取りをしてから役割が決まります。例えば『パンダ銭湯』では、背景を中川が、僕がパンダを描きました。

 

── 二人の微妙なバランスがユニットの成功を招いているのですね。

 

tupera tupera(亀山さん):
僕はどちらかといえば、のめり込んで掘り下げていろいろ調べたりするタイプではなくて、広範囲に浅く興味があることを探して、つまみ食いをしたい方ですね。一方、中川は全体を俯瞰しながら、色やレイアウトを決めたり、形を作っていくのが得意。

 

どちらも「面白いことが好き」「好奇心旺盛」「多方面に広げていきたい」という共通したものがあって、自分たちが仕掛けた遊びを、他の人が楽しんでくれることでまた楽しくなるというタイプです。

 

『わくせいキャベジ動物図鑑』(アリス館)は、地球から831光年はなれた銀河のかたすみにある惑星に住む不思議で面白い野菜動物たちの特長や生態を解説した絵本図鑑です。

 

「わくせいキャベジ動物図鑑」は、第23回日本絵本賞大賞を受賞

読者にも、「惑星キャベジに住む動物を考えよう!」と募集したところ、これまでに投稿が2000通ぐらいあったそうです。

 

僕たちが考えた世界に読者も入り込んで、どんどん自由に広げていってくれる。そういう反応が嬉しいですよね。絵本を通して、自分たちが面白いと思った事をたくさんの人と共有できる。それは本当に幸せなことだなあと思っています。

 

PROFILE tupera tupera (ツペラ ツペラ)

亀山達矢と中川敦子によるユニット。2002年から活動開始。絵本やイラストレーション、工作、ワークショップ、アートディレクションなど、様々な分野で幅広く活動。絵本など、著書多数。

 

取材・文/夏目かをる 画像提供/tupera tupera、ブロンズ新社、アリス館