フレックスタイムでもなく時短勤務でもない。すべての社員を対象に週に1回、午後3時に業務を終了させて帰宅できる制度があります。リフォーム事業等を行う株式会社桃栗柿屋の「週1三時」退勤の制度です。始まったきっかけや社内で生まれた成果などを広報の石田瑞希さんに伺いました。

 

桃栗柿屋 広報の石田瑞希さん
広報の石田瑞希さん

週1回、午後3時に退勤OK「申請書も必要なし」

──「週1三時」退勤の制度について特徴を教えてください。

 

石田さん:
週に1回、社員が決めた曜日に午後3時で退勤できる制度です。対面の仕事が大半なので、基本的に会社に出社するスタイルですが、出勤時間は8時40分から午後6時までのため3時間早く帰れることになっています。

 

曜日は固定ではなく、週ごとに選ぶことができます。たとえば、「先週は火曜日にこの制度を利用したから今週は木曜日にしよう」と、自由に取得できます。

 

申請するための手続きや書類も特に必要なく、上司や担当者に「8月20日に取ります」という感じで、社内SNSでチャットを送るだけで完了です。

 

── 以前は申請書の提出が必要だったようですが、それがなくなったのですか?

 

石田さん:
はい。最近なくなりました。多店舗展開していることもあって、できるだけペーパーレスに、時差もなくせるようにと見直したんです。

 

── 週に1回、午後3時に退勤できることで気持ちのメリハリもつくような気がします。どんなきっかけで始まったのでしょうか。

 

石田さん:
建築業界は、閉鎖的で男性的な印象を持たれることが多いという課題感から始まりました。土日は忙しくて長時間労働のイメージも強く、休みは平日。働きやすさにおいて偏った見方をされがちなんです。

 

桃栗柿屋は2004年創業とまだ若い会社ですが、成長とともに、2013年の夏頃から社員が増えていきました。節目のライフステージを迎えた家庭の社員がいれば、ひとり暮らしの社員もいて。

 

当時は働き方改革が世の中で言われるようになった頃で、桃栗柿屋でも、「働きやすさは会社を継続するうえでもすごく大事になる」と検討を始めました。「働きやすさについて一度立ち止まって、一緒に考えていこう」と。

 

社長と社員とが出席する全体ミーティングの場でいろいろな意見を出し合ったとき、ノー残業デーなど当時世の中で増えていた制度もアイデアに出たのですが、「どうせならもっとアピールできる制度のほうが面白いよね」と。そうして「週1三時」退勤の制度が生まれました。

自由度が高いからこそ社員は自律的に働く

── 午後3時に帰宅するアイデアは社員の声を活かしたものですか?

 

石田さん:
そうです。最初は午後5時という話もあったのですが、「家事をしたらあっという間に1時間経ってしまう」と、どんどん前倒しになり、午後3時に落ち着きました。

 

── 通常の定時時間は午後6時ですが、みなさんは普段、何時くらいに退勤されているのですか?

 

石田さん:
営業職と事務職で異なりますが、平均すると午後6時半までには帰れることが多いです。でも、営業職はお客様の帰宅時間に合わせて午後6時から商談が始まるケースもあります。そうすると午後8時頃の退勤になると思います。

 

── 営業職の方も午後3時に帰ると決めた日には、商談を入れなくてもいいんですか?

 

石田さん:
もちろんです。午後3時に終わるように時間を調整してもらっています。外出先での商談では直帰もOKです。土日も週に1回、午後3時に退勤できます。もともとの休日の前日に午後3時退勤の制度を使って、1.5日の休みにする社員も多いです。

 

趣味のバイクを謳歌する桃栗柿屋の社員
趣味のバイクを謳歌する社員も

── 自由で柔軟な制度ですね。

 

石田さん:
制度の自由度が高いぶん社員の裁量が大きく、みんなやるべきことをやって、早く帰ると決めた日には退勤するなど、メリハリをつけて働いているようです。

 

私も導入当初は「やったー!」と声を上げたいくらい嬉しくて(笑)、ずっと活用してきました。欠勤ではなく、年休とは別での有給扱いになる点も気に入っています。