元TBSアナウンサー・堀井美香さん
「おばさんトークを女子大生にも聞かれていて戸惑いました」と笑う堀井さん

今年4月に長年勤めたTBSを退社し、フリーアナウンサーになった堀井美香さん。ジェーン・スーさんと歯に衣着せぬ“おばさん”トークを繰り広げるpodcast番組『OVER THE SUN』が人気を集め、新たなファンを掴んでいます。

 

独立したのは50歳という節目の年。これからは家族のためでも、自分のためでもなく、身銭を切ってでも誰かのために貢献しながら生きたいと話す堀井さん。年齢を重ね、いろいろな執着を捨てたことで見えてきたものとは…?(全3回中の3回目)

会社員時代とは価値観の違う生き方を

── 27年間勤めたTBSを退社されて、フリーアナウンサーになられましたね。生活もずいぶん変わったと思いますが、今後はどのような活動をする予定ですか?

 

堀井さん:
これまで家族のためにも、自分のためにもちゃんと頑張ってきた自負はあって、これからはそれ以外に目を向けていきたいです。よく年配の方がボランティアで花壇のお世話とかされていますよね。その気持ちに近いというか…。

 

これからひと財産築こうとか、名前を売ろうとか、そういうことにはまったく執着がなくて、それよりも人のために何かできることが、今はハッピーなんですよね。

 

大きく言えば、すべての子どもたちに幸せになってほしいし、軽い言葉に聞こえてしまうかもしれないけれど、世界が平和であってほしい。そういうことに自分の価値観が動いていて、お金をいただけるところでは稼いで、そのお金で何かに貢献できればと。

元TBSアナウンサー・堀井美香さん
「自分のために生きるのはもうやめるつもり」

── 会社員だったころとは価値観がまったく違う、新しい生き方ですね。具体的にどんな貢献をしていきたいか、計画はありますか?

 

堀井さん:
5~6年前から続けているボランティアがあって、それは点字の音訳です。日本点字図書館という視覚障害者のための図書館があるのですが、そこで利用者の方が借りるための音声データをつくるお手伝いをしています。本を読んで、音声をデジタル化する作業です。

 

もうひとつは子ども食堂のような事業でのお弁当の配達です。手作りのお弁当を各家庭に車で届けるボランティアもしています。

 

お金を使う活動としては、朗読会を開催しています。自分が持っているスキルは声を使うことや朗読なので、それを使って社会貢献というほどではないですけど…。あちこちで開催して、お金をバンバン使っていきたいと思っています(笑)。

「財産は自由に使いきるつもりです」

── 朗読会は、どこかに呼ばれるのではなく、ご自身で企画されるんですか?

 

堀井さん:
はい。全部自分で企画して、自腹でやっています。最近では、因島の浜辺で、大人と子どもが一緒になって本を読む「渚の朗読会」を開催しました。自分で思い浮かんだ企画を、因島の図書館にいきなりメールして…。最初は怪しい人だと思われたようでしたが、説明をして理解していただき、開催までたどり着きました。

 

子どもたちには、「悪いけど財産は使いきって逝くからね!」と伝えてあって(笑)。お金に執着しなければ、失敗することも怖くないですから。独立してからは新しい場所に行って、新しい経験をたくさんして、成長もできています。守るものがあればやっぱり守ろうとするけれど、守るものがなくなったいまがすごくいい状態ですね。

 

朗読会は長く続けたいと思っていますが、「やっぱりやめた」と途中下車してもいいと思っています。ガチッと自分を型にはめることをやめたら、心が自由になりました。

 

もちろん最低限の生活のための貯蓄は別にありますが、それ以上は執着がありません。だから少しずつ家の片づけも始めています。モノもなるべく持たないようにして、早いけれど終活というゴールに向かってポジティブにやっています。まったく仕事がなくなったら、どこかでアルバイトをする予定。それもまた新しい経験になりそうで、楽しみなんです。

元TSBアナウンサー・堀井美香さん
どんな職業にもチャレンジしたい気持ちがあるそう