周囲の理解を得るのに苦労したことも

── 動物好きとっては犬や猫のそばで働けるのは癒やされそうですが、オフィスとなると導入する時点で難しさもあったのではないでしょうか。

 

中村さん:
ペットと一緒に出社できること、またオフィスに猫が居住していることは一般的ではないため、やはり当初は課題がありました。まず、テナントとしてすでに契約しているビルで「ペットフレンドリーオフィス」をスタートしようとしたのですが、前例がないことなどから、ビルオーナーの理解などを得るのが難しく、実現できませんでした。

 

オフィス拡張に伴って移転をすることになった際に、契約の条件のなかに猫の居住やペットを連れて出社できることを入れて、「ペットフレンドリーオフィス」が実現できるビルを探しました。

 

また、2016年に拠点統合のために現在のオフィスに移転する際は、すでに「ペットフレンドリーオフィス」を導入しているオフィスを、ビルオーナーの方々に見学していただくことで、運用状況や、それまで大きな問題も起こらなかったことをご理解いただきました。そうすることで導入につなげることができています。

動物が苦手な人やアレルギー体質の人にも配慮

── 犬や猫のアレルギー体質の方もいるかもしれません。何か対応はされていますか?

 

中村さん:
「ペットフレンドリーオフィス」では、動物アレルギーや、犬や猫が苦手な人への配慮も検討したうえで制度づくりを行っています。アレルギーの配慮としては、オフィスに居住している猫に関しては行動できる場所をキャットルームと猫が行き来できる会議室に限定しました。

マースジャパンリミテッドの社屋にあるキャットルームの様子
キャットルームの様子

そうすることで、猫アレルギーのある人は、そのエリアに入らなければ猫と接触しなくてすみます。来客の際は、猫アレルギーの有無を聞いたうえで、猫の行き来できる会議室を使用するかどうかを決定しています。

 

また、ペットをオフィスに同伴する際には、コロナ禍前は周囲の人に声をかけたうえで連れて来ることで、動物が苦手な人が在宅勤務を選択したり、オフィスの中でも少し離れた場所で業務をしたりしていました。

 

現在は、出社予定を全社で共有するなどしています。ただ、実際は、苦手な人やアレルギーで接触を避ける人よりも、むしろペットがオフィスに来る予定を知って、出社を決める人のほうが多いようです。

マースジャパンリミテッド社屋内のキャットルームの様子
キャットルームでくつろぐ猫

業務を越えた「会話」が生まれる

── 「ペットフレンドリーオフィス」で、ペットがいるからこそ感じられるオフィスの良さはありますか?

 

中村さん:
オフィスにペットが出社する日は、自然にペットの周囲に人が集まってきます。ペットを通じて、飼い主やペットの周りに集まった従業員など、業務上関わりのない人との間でも会話をするきっかけが生まれるため、社内のコミュニケーションの活性化にもつながっています。

仕事中もペットの存在が当たり前になっているマースジャパンリミテッドのオフィス
仕事中もペットがいることが当たり前の光景に

また、コロナ禍をきっかけに、原則在宅勤務体制になったのですが、なかなかオフィスに出社するきっかけがない人も、ペットが出社する日に合わせて来たり、イベントを行ったりすることもあります。