出産に立会うも心ここにあらず
── その後妊娠、出産と経験されましたが、出産のタイミングで宮崎さんのスキャンダルがありましたね。
金子さん:
出産が2月5日で、報道が出たのが9日だったんですが、報道が出る前から夫には知らされていたらしく、朝8時に出産に立ち会ったときにも心ここにあらず、といった感じでした。
その後、京都の選挙区に戻って活動をするということで彼は京都に行ったんですけど、まさか最終の新幹線で帰ってきて、病室に来て、「不倫疑惑で記事が出る」なんて聞かされるとは思っていませんでした。
赤ちゃんと家族の幸せ空間だったはずなんですけど、とにかく驚きましたね。
でも驚きはしましたが、いままで積み上げてきた幸せがこのことだけで壊れるはずがないな、というのも思っていました。
── 強いですね。
金子さん:
強いとか、出産したばかりでよく耐えられましたねと言われるんですが、そこは政治家的発想かもしれないんですが「地元の有権者を裏切ったか、そうでないか」がまず大事だと思ったんです。
政治家としてまずあってはならないのは、お金など刑事罰になる問題。不貞行為については民事的な問題ではあるけど、夫婦の問題だと考えました。
ただ当時、夫は男性議員として育休を取ると宣言していたので、世間のイメージに対しての裏切りというものは大きく、世の中からはかなりバッシングされました。
でも彼は私に対していろんなことをしてくれていたというのは、世間の誰もが知らなくても、私だけが知っていること。共に政治活動をして、支え合いながらやってきた今までの歴史や時間は偽りのないものだとわかっていたので、それと不貞行為を天秤にかけたとき、私にとってはそんなに重いものではなかったんです。
── 怒りのようなものはなかったのでしょうか。
金子さん:
「何やってるんだ」っていう怒りは一瞬あったかもしれないですね。でも政治家をやっていく上で、「物事にはいろんな背景がある」と思って何事も見てしまうくせがついていたので、「きっと彼にも何か考えがあったんだろうし、そうなってしまった背景があったんだろう」と思い、まず話を聞くことに徹しました。
話を聞くと、結局彼の脇の甘さが招いた事態でもあったんですけど…本人の方がとにかく落ち込んで、パニックになっていました。逆にそれで私はますます冷静に考えるようになったというのもあるかもしれません。
PROFILE 金子恵美さん
1978年新潟県生まれ。新潟放送勤務を経て、2003年にミス日本関東代表に選ばれる。07年新潟市議会議員選挙に立候補し当選。新潟県議会議員を経験後、12年に衆議院議員へ。10年間の議員生活を経て、現在は企業顧問とテレビコメンテーターなどとして活動中。
取材・文/藤井みさ 撮影/井野敦晴