暴走族のバイクの後ろに乗ることも
── いろいろな方が来られるんですね。
篠原さん:
小学校3年のときに両親が理由もなく自分を置いて失踪したという子がいました。おばあちゃんに育てられていました。彼は高校を卒業して自衛隊に入って、2年で辞め、貯めたお金でバイクを買って、暴走族に入ったんです。
別の子のつき添いで寺にきたとき、その子に「暴走って怖くないの」って聞いたら「怖いっす」って話すんですね。
「じゃあ、いつまで続けるの」と言うと「わかんないっす」と言っていました。「暴走するのはあなたにとって、幸せなことなの」と聞くと、黙ってから「あまり幸せだと思っていない」と。
「なら、やめちゃえよ」と言うと「簡単にはやめられないっす」と首を振るんです。「じゃあ、死ぬまでやりなさいよ」と言うと「そんな死ぬまでなんてできませんよ」とそれまた、首を振るんです。
私も自分ではバイクを持ってないけど、彼のバイクに乗るためにヘルメットとジャンパーを持っていて、乗るんです。私を乗せると、彼は不思議と法定速度で走るんですね。
私が「暴走族がチンタラしてるんじゃないよ」って言うと「いや、まずいっすよ」って彼が諭すんですよ。「お前らいつもまずいことしてるんだろ」って言うと、彼は涙を流すわけです。
「ヘルメットがくもって危ねえじゃねえか」と言うと、「俺のオートバイに乗ってくれた大人は、住職さんが初めてです。嬉しいっす」って泣くんですね。