自死も考える悩める人々の駆け込み寺として約30年活動を続けてきた千葉県成田市、長寿院の住職・篠原鋭一さん(77)。あるときは暴走族のバイクの後ろに乗りながら、さまざまな若者の支援を続けています。

 

 ※本記事は「自殺」「暴力」などに関する描写が出てきます。ご体調によっては、ご自身の心身に影響を与える可能性がありますので、閲覧する際はご注意ください。

引きこもりの若者、会えば少しずつ変化

── 引きこもりの若者の相談にものっているそうですね。

 

篠原さん:
引きこもっている若者にも会いに行きますよ。「引きこもっているこの部屋でずっと過ごすのか、いつまで過ごすんだ」と聞くと、「わかりません」と呟きます。

 

「じゃあ私が生きている限り、生涯ここで過ごせ」って言うと、みんな、「そんなことできませんよ」と答えるんですね。

 

そこから、「まずは家の玄関まで行こう」と言って部屋から連れ出すんです。それを何回かすると、「もう少し歩きたい」と言うので、家から出て100メートルぐらい歩くんですよ。

 

ちょっとずつ移動する範囲を拡大していくのが訓練なんです。そのあたりのテクニックが難しい。もっと歩きたいと言っても「今日はここまで」と言って止めるんです。

 

ひきこもりをやめた人からは「家族は遠くまで連れて行こうとしたけれど、篠原さんはそれを許してくれなかった。それが家から出たくなる気持ちになって、よかった」と言われますね。