初めて持った定期券「新卒か!」という状況を乗り越えて

── 転職1年目など、しんどいときはどうされていましたか。中途で入る大変さもあると思いますが。

 

多田さん:
そうですね。会社員が初めてだったので、通勤定期を初めて持ち、通勤電車も初めて乗り、打刻も初めてして。「新卒か!」という勢いでした。

 

情けないぐらい何もわからなかったんですが、上司や周囲の社員が、手取り足取り教えてくれたんですね。

 

何もできない私をあたたかく受け入れてくれて、パソコン操作も一から教えてもらって、できるようになりましたね。文字を打つことすら遅かったです。

 

いちばんしんどかったことは、元々がフリーだったので、毎日同じ時間に通勤電車に乗って、同じ時間に帰るというのが体に馴染んでなかったんですね。毎日の通勤のルーティンに慣れるまでどっと疲れが出ました。

 

前職では自分の仕事だけしていればよくて、マネージャー、ヘアメイク、スタイリスト、番組スタッフさんなど、まわりの方が身の回りのことをなんでもやってくれました。今思えば本当に特殊な環境ですよね。今は当然、自分のことは自分でしますし、例えば経費の精算なども自分で行います。最初は戸惑いました。

 

でも、何でも経験ですね。今ではすっかり慣れました。

キャスター時代の多田さん

アイロンいらずの服を買って、家事育児と仕事を両立

── 育児との両立はどうされたんですか。

 

多田さん:
週末はもちろん、平日の朝晩は子どもと一緒にいる時間を密度の濃いものにできるように、とにかく会話をする、一緒に遊ぶ、絵本の読み聞かせができるように心がけています。

 

あとは、上手く家事の手を抜くというか、とにかく任せられる家事は機械に任せて、手を抜いています。アイロンいらずの服しか買わないとか、食洗機や洗濯乾燥機などフル活用してやっています。

 

── 今しんどいと感じることはありますか。

 

多田さん:
今は体力的にはないですね。子どもも入社当時よりは手がかからなくなっているので。来年は小学生。小一の壁にぶつかるとは思いますが、働き方については会社が柔軟に対応してくれるので、いま不安に思っていることはないです。

 

仕事が上手くいかないときの方がきついですね。仕事が不調の時の方が精神的にきます。

 

── 不調というのはどういう状態でしょう。

 

多田さん:
例えば、広報として上手くメディア露出に繋げられなかったときなど、思い描いていた目標に届かなかったときなどですね。

 

上手くいったらいったで、てんてこまいに忙しくなるのですが、そのときの方が充実していて。忙しいと自分の存在価値を感じることができるというか。

 

やっぱり自分はそっちのタイプなんだなと思うし、だから転職を決意したんだろうし、今を充実させるためにも頑張らないといけないんですけれど、なかなか頑張っても結果に結びつかないときもあって、辛いですね。

 

けれど、気持ちを切り替えていかないとと思っています。

 

── 切り替え方法は何でしょう。

 

多田さん:
娘の存在が大きいですね。帰って娘の顔を見ると、明日からまた頑張ろうとリセットされるので、存在は大きいと思います。この笑顔のために明日も頑張ろうと思えます。

 

失敗はしないとわからないし、失敗から学ぶことも多いので、しょうがないと切り替えて繰り返さなければいいと思えればいいと思い込むようにしています。

 

── 今、振り返って以前のキャスターのお仕事はどう思い出されますか。

 

多田さん:
あのときの自分があったから、今があると思います。貴重な経験をたくさんさせていただきましたし、番組スタッフ、ファンの方々、事務所の方々に支えていただきました。充実したキャスター時代を過ごせたと思います。

 

── いちばん印象に残っている仕事はなんでしょう。

 

多田さん:
「めざましテレビ」は特に思い入れのある番組です。初めてテレビに出た番組で、そこでど素人の私を育ててくださいました。携わることができて本当に良かったです。

 

今も「めざましテレビのちかちゃん」って言われるんです。ほかの番組のちかちゃんではなく、めざましの、お天気のちかちゃんと言われるので、それだけ多くの方が見ていてくださって印象が強いんだなと思いますし、ゼロから学んだ、私にとって原点の番組です。