「安田大サーカス」団長・安田さんと結婚した、安田さちさん。約13年に及ぶ結婚生活は、芸人ならでは?と言った2人の関係もあるとか。団長のポリシーに対して、さちさんはどう向き合ったのか。また、固定収入がない生活を過ごすなかで、さちさんが思うことは。
言わない約束だったのに
── 芸人である団長さんと結婚されて13年目とのことですが、結婚生活はいかがですか?
安田さん:実は、結婚会見の前日、団長と大喧嘩をしたんです。突然、団長が私がある男性有名アーティストのAさんに似てるって言い出して、翌日の結婚記者会見でそれを言うって。
確かに、そのアーティストの方はすごく素敵な方なんですよ。でもちょっと自分とは違うというか。自分とはまるで共通点がないのに似てるとか、完全にウケを狙っている気がしちゃって。当時、私が若かったこともあって、それがどうしても嫌で、思わず大泣きしたんですよ。結局、記者会見の当日の朝方まで話し合った末、団長は「よしわかった。さっちゃんの気持ちを尊重するよ」と言ってくれたんです。
しかし、ホッとしたのもつかの間。テレビで記者会見を見ていたら、団長が「奥さんと喧嘩をすることありますか?」と聞かれて、「僕は、嫁がアーティストのAさんに似ていると思ったんだけど、嫁がそれを記者会見で言うな!となって、昨日喧嘩しました」って言っていて…。
多分、普段だったら「あれだけ言ったのに!」と怒ると思うんですよ。でも、「あぁそうか、芸人の妻になるというのはこういうことか」って腑に落ちたというか。そこで腹をくくりました。私の人生は、きっとこれからこういう風にみんなにいじられてやっていくんだなと実感した出来事でした。でも団長のお笑いのネタになるなら、それもいいかなって(笑)。
いつ帰ってくるのかわからない
── テレビを見ながら驚きますね。
安田さん:他にも、安田家には「団長のスケジュールを絶対に聞かない」という暗黙のルールがあります。団長は、その日その日の仕事に全力を尽くしたいという思いがあるので、団長自身、翌日のスケジュールぐらいしか知らないし、聞かないんです。
だから、団長がいったん仕事に行くと、その日の夕方に帰ってくるのか朝まで帰って来ないのか。まったくわからない。私もいつ帰ってくるのかわからないから、髪も切りに行けなかったし、友達と約束するのも難しかった。子どもも小さかったですし、ひとりの時間をつくることもなかったです。
家族旅行に行くのも事前に予定がわからなくて計画を立てづらかったですね。だから、急に「よし、明日から行くぞ!」と決まったり…。まぁ、それはそれで楽しかったんですけど。
── さちさんの気持ちを、団長さんに話したことはあるんですか?
安田さん:何度も話し合いましたね。ただ、団長には団長のポリシーもあったので、結果的に彼の意志を尊重しました。それに、スケジュール以外については、私の意見も尊重してくれますし、私の思いに対していろいろ改善してくれてもいます。それもあって、団長が大切にしていることは、できるだけ私も受け入れようと思っています。
私は芸人の妻に向いているのか?
── 芸能界は浮き沈みが激しいと言いますが、生活を共にされてどう思いますか?
安田さん:団長と結婚すると決まったとき、まわりの人たちからすごく心配されました。芸能人に限らないことかもしれませんが、たとえば怪我をして働けなくなった場合、その間収入が途絶えますよね。実際、結婚してから4か月収入がなかったときもあったんですよ。
── それはちょっと不安にもなりそうですね。
安田さん:団長はすごく落ち込んでしんどそうでした。でも、私は逆にすごく楽観的にとらえていたというか。ただ、そこで「あなたの代わりに私が稼ぎます!」というタイプでもなかったんですけど(笑)。
「まあ、なんとかなるでしょう」という気持ちはずっとありますね。お金がないならないで、それなりの暮らしをしていけばいいし、これから先仕事がなくなったときのことも考えてないです。ただ子どもには、「お金がないから」という理由で物事を諦めさせたくないので、ある程度貯金はしておこうと思ってます。
団長は、意外と繊細で落ち込みやすい。自分が一家の大黒柱だからと思って、先まで考えて不安に思うこともあると思います。一方、私は楽観的なところがあって、ある意味芸人の妻向きだったのかなって。自然と夫婦でうまくバランスが取れていたのかもしれません。
PROFILE 安田さちさん
フリーアナウンサー。「安田大サーカス」団長安田の妻であり、2児のママ。タレントとして活躍していたものの結婚を機に家事、育児に専念。35歳でフリーアナウンサーとして活動を再開。
取材・文/間野由利子 撮影/坂脇卓也