企業にイノベーションをもたらすために、三井住友海上火災保険は社員の副業を推奨しています。しかし実際には、ほかにもさまざまなメリットがあるそう。人事部と副業をしている社員から実情を聞きました。

「これから資産運用について講義をします」

同社・個人金融サービス部の大平 拡・課長代理は母校の工業高等専門学校(高専)で、副業として投資や金融に関する講義を行っています。

 

三井住友海上本社外観

昨年は母校の恩師に「生徒に金融を教えてほしい」と頼まれてボランティアで引き受けました。今年は会社が副業を推進していることから、母校の授業をオンライン受講している関係企業から謝礼を受けることにしました。

部課長約780人が既に外部経験あり

三井住友海上火災保険は2021年4月に副業を解禁。さらに22年1月には、社員が課長に昇進するための前提として、出向や社外での副業など「外部での経験」を求めることを公表しました。

 

大手企業で管理職への昇進に外部経験を課すのは異例のこと。2030年度までを移行期間として、30年度には基本的に外部経験がある人が管理職になるよう社内に説明しており、すでに官公庁、ベンチャー企業、特許事務所などで副業、出向する例が出ています。

 

育児経験から、男性の不妊治療を支援する会社を起業した社員も。同社の部課長は約3900人おり、すでに中途採用者を含めた2割が外部経験があります。これまでの管理職にも副業や出向を推奨しています。外部経験がなくてもペナルティなどはありません。 

 

大平課長代理は証券アナリストとテクニカルアナリストの資格を保有。資産運用の部門で働いてきました。関連会社に出向して資産運用も行い、社内の研修制度でアメリカにも行きました。今は個人のお客様向けの金融サービスを開発しています。

大平課長代理

母校である高専の恩師と話した際、「金融の授業がまったくないんだ。みんな知らないんだ」と相談を受け、講義を引き受けることに。

 

高専のセミナーでは、資産運用についてオンラインで月2回程度実施。高専の教員や生徒のほか、高専と繋がりのある企業の従業員も参加できる「リカレント講座」も行っています。証券アナリストの視点から、どういう投資方法が数学的に正しいのかを噛み砕いて説明しました。

 

生徒の中にはすでに起業している人もいて「ファイナンスをわかっていないと会社を乗っ取られることもあるんですね。本当にためになりました」など感謝の言葉をもらったと言います。