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「排便は文化 気持ちよく出して」石川の保健師「うんこ文化学会」設立までの“フン闘”

仕事

2021.10.23

子どもたちに排便の指導をする榊原千秋さん子どもたちに排便の指導をする榊原さん

 

11月6日から石川県で、「日本うんこ文化学会」の第1回学術集会が開かれることになっています。

 

最近は「うんちドリル」や「うんこミュージアム」が話題になり、ポップな存在になりつつある“もの”ですが…。

 

代表の榊原千秋さん(59)は、保健師や看護師として排泄(はいせつ)に苦しんでいる人たちを見てきて、多くの人たちにオープンに話し合ってほしいという思いから、この学会を立ち上げたそうです。

排泄の問題は医療従事者だけでは無理

「文化という名前をつけたのは、排泄にまつわる問題は医療従事者の働きだけでは解決できないからです。

 

排泄行為は普段の食生活と関係がありますし、トイレ設備の問題は建築や設計分野からのアプローチが必要です。

 

便座が汚れからと、男性が立ち小便をできなくなったのは、テレビ番組の影響もあるなど、社会全体の問題として、さまざまな人たちが関わる必要があると考えたからです」

 

榊原さんは2015年に「うんこ文化センター おまかせうんチッチ」を設立。

 

本格的に排便に関わる相談を受けてきましたが、その悩みは高齢者だけの問題ではないと言います。

 

ぬいぐるみを使って排便の指導をする榊原千秋さん(左)ぬいぐるみを使って指導をする榊原さん(左)

食事とトイレの洋風化に問題も

「19歳の女性で、すでに痔の手術を3度も受けたという人もいました。

 

排便は、気持ちよくするものだという意識が低く、オープンに語り合うことができないので悩む人が多いのが現状です。

 

食事が洋風に変化して繊維不足となり、トイレも洋式化して、排便には決していい環境ではなくなりました」

 

洋式トイレの悪影響を榊原さんはこう説明します。

 

「排便の姿勢は直腸と肛門が開く角度になり、ロダン作の像『考える人』のような、つま先が床に付いて前屈になるような体勢が理想です。

 

その意味では和式トイレがよかったのですが、減っている現状があります。

 

最近は、小さい子どもはおまるを使わせてもらえず、洋式トイレにおしりを突っ込み、脚をぶらつかせた状態で、排便させられることが多くなっています。

 

洋式トイレで子どもさんの脚が付かない場合は、台座を用意してあげたいですね。

 

気持ちのいい排便ができなくなり、便秘の原因になるなど、最近の環境が悪影響を与えていると思います。

 

コロナ禍で外遊びや部活ができなくなり、ストレスがたまったり、食事量を制限したりして便秘になる子どもも増えています」

保健師をしていた20代のころの榊原千秋さん保健師をしていた20代のころの榊原さん

糞尿まみれの高齢者に衝撃

そもそも、榊原さんがそのような、排便について問題意識を持つようになったのは、高齢者のケアがきっかけでした。

 

「私は1984年から保健師をしていましたが結婚して、石川県小松市に移り、訪問看護をしていたときに衝撃を受けました。

 

各家庭で、糞尿まみれになっている高齢者が多くいたのです。

 

当時は質のいいオムツがないから、下剤の調整がうまくいってないから、という程度に考えられていました。

 

しかし、イギリスでコンチネンス(排泄)ケアを学んできた西村かおるさん(現・日本コンチネンス協会名誉会長)から、“大便や小便が漏れることには原因がある。それらは予防や治療ができる”と聞き、興味を持ち勉強することになりました。20代後半のころです」

 

1995年、30代になった榊原さんは、日本コンチネンス協会北陸支部を立ち上げることになりました。

 

「初級セミナーの開催や、勉強会などを地元で開催できるようになり、排泄ケアをともに学ぶ場ができたのは、今につながる大きな転換期でした。

 

しかし、状況はあまり改善されているようには見えませんでした。

 

やはり排泄は、マイナーで誰も触れたがらない分野なので議論や研究が進まず、下剤やオムツを使えばいいというような風潮でした。

 

“君はうんちが大事というが、それを好まない人がいることも知っておくように”と、言われたこともありましたね」

「ややのいえ」は榊原千秋さんが立ち上げた、うんこ文化学会、おまかせうんチッチや助産院などの拠点「ややのいえ」は榊原さんが立ち上げた、うんこ文化学会、おまかせうんチッチや助産院などの拠点

その後、大学院に進んだ榊原さん。

 

「40歳のときに金沢大学大学院に入学しました。修士はALS患者さんの介護をされた遺族の研究でしたが、博士課程は高齢者の排便ケアについて研究をしました。

 

ここでわかったことは、排便のチェックを毎日行いながら、食事を調整して、腹部のマッサージなど適切なケアを行えば、下剤の量を減らすことができるということです」

排便ケアのプロ養成制度を設立

その後、榊原さんは大学に残ることもできましたが、53歳のときに現場に戻ることを希望。

 

前述した「おまかせうんチッチ」や訪問看護ステーションを設立し、排泄にまつわる幅広い活動をしてきました。

 

「排便ケアのプロフェッショナルを養成する『POO(プー)マスター養成研修会』制度も立ち上げました。

 

排便のメカニズムなどを学び、適切な排便ケア方法を選択し、相手の気持ちや悩みを自分事として考え、コミュニケーション力をつける講座です。

 

そんな『うんチッチ』の活動は、石川県のベンチャービジネスプランのコンテストで優秀起業家賞も獲得して、励みになりました。

 

小松市で‘19年度から始まった、排泄ケアを支援する『コンチネンスパートナー』養成のコーディネートも手がけました」

自著の絵本を手にポーズをとる榊原千秋さん自著の絵本を手にポーズをとる榊原さん

“便育”を広めていきたい

最近では、絵本『そのとき うんちは どこにいる?』、『気持ちよく出す排便ケア』など子ども用と大人用の書籍も出版した榊原さん。

 

排便のためにまさに、“フン闘”していますが、これからは、どんな未来像を描いているのでしょうか?

 

「すべての人が気持ちよく排便できるように、妊娠中のママを含む0歳児からの “便育”を広めていきたいです。

 

幼いころから、うんちは汚いものという刷り込みが、排便について語ることを難しくしていると思います。

 

食べたものが、うんちになることを知ってもらい、リラックスして気持ちいい排便をするにはどうしたらいいのかー。

 

朝きちんと起きて、日光を浴びて精神を安定させる物質であるセロトニンを分泌させ、野菜を食べて食物繊維を摂取し、正しい姿勢で排便することを伝えていければと思います」

「POOマスター」オフィシャルぬいぐるみの「そらぶら」を持つ榊原千秋さん「POOマスター」オフィシャルぬいぐるみの「そらぶた」

ママさんたちにも“うん”と伝えたいことがあると榊原さん。

 

「水分の摂りすぎに注意してほしいです。排便に必要なのは1日に1500ミリリットル程度なので、それ以上の摂取は頻尿の原因になります。

 

ダイエットによる偏った食事も便秘の原因となるので、腸内細菌を整える乳酸菌やビフィズス菌を摂るようにしたいです」

 

“臭いもの”だからといってふたをしない意識が、私たちの将来や子どもたちのためになりそうですね。

 

PROFILE 榊原千秋さん

さかきばら・ちあき。1962年、愛媛県生まれ。保健師。助産師。看護師。金沢大学大学院博士課程修了。「うんこ文化センター おまかせうんチッチ」のほかに、助産院や訪問看護ステーションも設立。「日本うんこ文化学会」の第1回学術集会が11月に控える。

文/CHANTO WEB NEWS 写真提供/榊原千秋さん

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