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「日本の先生は優秀」の弊害。教員はスーパーマンじゃない…業務範囲はどこまで  

仕事

2021.07.08

2021.07.16

「#教師のバトン」が炎上し、学校の働き方改革が問題視される中、どうしたら教員が働きやすく、子どもたちにとってより良い学校になっていくのか——。

 

教育研究家で全国各地で教職員研修やコンサルティングを行う妹尾昌俊さんに聞きました。

スーパーマンだけが生き残る学校では困る

── 児童に傷があることにある教師が気づき、すぐに教師が、自治体、児童相談所などと連携し保護したケースがありました。夜、家庭訪問に向かう先生もいます。

 

妹尾さん:

そうした先生のご尽力には頭が下がりますが、賞賛してばかりも疑問です。まるで教師がスーパーマン、スーパーウーマンみたいに捉えるのは。それではいけないんです。普通の人ではつとまらない仕事ということですから。

 

よく文科省などでも「日本の教員は優秀だ」という前提で話を組み立てている人が多い。でも、もう少し考える必要があります。

 

普通の教師でまわる仕事でないといけない。企業で全員スーパーマンじゃないと仕事がまわらないということはありますか?そうでなくても、なんとかまわりますよね。

 

職員室がスーパーマン、スーパーウーマンだけが生き残る職場では困るんです。

 

日本の先生が優秀である前提で、どんどん重い荷物を背負わせすぎている。その前提で業務が組み立てられすぎていて、無理がきています。

 

懸念がある児童への家庭訪問も本来、子どもや家庭ともめて事態の解決をむしろ遠ざけることもありますし、訪問した教師が危害を被るケースもあります。とてもリスクのあることなんです。本来ならソーシャルワーカーらプロの仕事です。

 

新卒の先生で担任として授業をし、家庭とのコミュニケーションが得意で、ムードメーカーで、ICTも得意で、なんて全部できる人はそういませんよね。

それぞれの人のでこぼこや強みが合わさって、補えるチームのほうが強いと思います。だけど、学校は教壇にひとりが立って授業をする。ひとりの先生がある程度できる前提で進めすぎている。

 

一人で何役しているのだろうと思います。

学校の先生は警察、弁護士でもない

── いじめの問題の対応に関する難しさもあります。

 

妹尾さん:

放課後、いじめのトラブルがある。それで学校の先生が尽力している。冷たい言い方かもしれませんが、放課後、学校の管理外で起きたことは本来、家庭の問題なのだから、家庭同士で解決する、または、弁護士や警察に介入してもらう事案なのではないでしょうか。

 

学校の責任を明確にしないといけないと思っています。学校の役割を大きくして、弁護士でもない紛争に慣れていない先生が、被害者、加害者双方から文句を言われつつ、話を聞いて、教育的配慮という名のもと、自力救済しようとして疲弊している。すべて学校だけでやろうとしてはいけません。弁護士等の協力を得られる体制を作ることも大切です。

 

── スクールロイヤーのほか、スクールソーシャルワーカーなど福祉専門職の常駐が必要ではないでしょうか。養護教諭やたまに来校するスクールカウンセラーだけではカバーしきれない気がします。

 

妹尾さん:

家庭がしんどい子、苦しい子はたくさんいます。本来はスクールソーシャルワーカーらが家庭訪問など支援をすることだと思いますが、まだまだ人が足りていない。育成もできていません。

 

子どもたちを守るためにも教員だけに依存することは、やめるべきです。スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、弁護士、警察や家庭にもっと頼れる環境を作る必要があると思います。

 

「チーム学校」と言われていますが、それだけのスタッフが残念ながら配置されていない。他職種と連携し、保護者面談でも保護者が担任以外のいろんな人と話せた方が良いでしょう。

 

── もう少しスクールサポートスタッフを各学年に配置するなど必要でしょうか。

 

妹尾さん:

スクールサポートスタッフという補助的な業務を行ってくださる方の存在は、とても助かりますが、これに限らず、学校がいろんな職種の人が活躍する場になっていく必要があります。教師以外のスタッフ、ICT支援員などが常にいることが大事かと思います。

 

うつ病などの精神疾患で病気休職となった教員の数は、公立学校では2019年度に5478人と過去最多に。10年以上毎年5000人前後の人が精神疾患で病気休職となっている現状です。

 

5000人は氷山の一角です。その前に3か月の病気休暇もあります。それを取らなくてもしんどいと思ってやっている人もいる。先生がしんどいと思って子どもに接していても、子どものためになりません。

 

過剰に適応できる人が生き残れるのはおかしい。何割か過労死レベルで乗り切っているのはおかしい。

 

教員も児童のためと思ったら、もっとやってあげたくなるかもしれないが、やめられることはやめていかないといけません。

 

── 私たちも学校だけに頼るのではなく、地域、家庭でも協力したいですね。そして、スクールロイヤーなどの予算がついていくよう社会で学校のあり方について考えていきたいですね。

 

PROFILE 妹尾昌俊

教育研究家、合同会社ライフ&ワーク代表。徳島県出身。京都大学大学院法学研究科を修了後、野村総合研究所を経て、2016年から独立。文科省での講演のほか、全国各地で教職員研修やコンサルティングを行う。著書に「教師崩壊」「教師と学校の失敗学」など。

取材・文/天野佳代子

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