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ママアスリート・寺田明日香から娘へ「生理や出産で仕事を諦めないで」

仕事

2021.02.11

寺田明日香さん

日本では数少ない“ママアスリート”として世界を目指す寺田明日香さん。23歳で現役を引退した後、結婚、大学入学、出産を経て、26歳で7人制ラグビーに現役復帰し、28歳で陸上選手として再出発しました。

 

復帰当初から寺田さんが掲げている目標は、オリンピック出場とアスリートのキャリアの可能性を広げること。

 

母となり、再びアスリートを仕事に選んだ寺田さんは、女性が社会で働くことをどう考えているのでしょうか。そして、同じ女性として娘さんに伝えたいこととは?

 

日本では競技のために妊娠・出産を諦める選手が多い

—— 寺田さんは、日本では数少ない“ママアスリート”です。そもそも、なぜ子育てをしながら競技をする女性の数が少ないのでしょうか。

 

寺田さん:

女性には、男性に比べてさまざまなライフステージの変化がありますよね。なかでも妊娠・出産は、女性の心身に大きな負担を与えます。アスリートは体を使う職業なので、自分の体に敏感。そのため、「競技のために結婚、出産を諦める」風潮がまだまだ強いんです。

 

日本では、選手の産後復帰を支援する公的なプログラムも存在しません。欧米では15年ほど前から、妊娠中から産後までのトレーニングをサポートするプログラムや、復帰までの手順も整っていると聞きます。選手が大学生になったら、それらを知らせるそうです。

 

日本では、JISS(国立スポーツ科学センター)などの一事業として産前・産後のサポートプログラムがあるのみ。それすら知らない女性選手も多く、よく「誰に相談しているの?」と聞かれます。アスリートは個人事業主がほとんどなので、子どもの預け先を探すのも難しいんです。

 

—— 日本の社会で、まだまだ「子育ては女性がするもの」という意識が強いせいもあるかもしれませんね。

 

寺田さん:

そうですね。一般企業で働くママ友さんたちを見ていても、多くのご家庭で母親が時短で働くことが当たり前になっているんだなという印象を受けます。父親はフルタイムで働けるのに、母親だけが子育ての影響を受けて、働き方を変えている。収入面でも、女性が出産の影響を受けるということです。

 

ただ、最近はパパが主夫だったり、時短で働いたりしているご家庭も増えつつありますよね。実はオリンピック出場選手も、近年の大会では男女の割合はほぼ半々です。世界全体でも日本でも。2018年平昌大会では58.1%と女性比率が過去最高だったんですよ。今後はオリンピックに続いて、もっと速いスピードで、男女が同じように働き、子育てができる社会になっていってほしいですね。

 

PMSや生理のつらさは医療の力で手放していい

寺田明日香さん

—— 妊娠・出産だけでなく、毎月のPMSや生理もまた心身に影響します。体が資本のアスリートとして、これらとどう付き合ってきましたか。

 

寺田さん:

私は学生時代からPMSや生理の影響を受けやすく、鉄欠乏症貧血や生理不順に悩まされた経験もあります。つらくて練習がままならず、10代の最後から低用量ピルを飲んでコントロールしていました。

 

当時は、生理で具合が悪いから練習を休んだり、少し緩めたりすることが悪という時代でした。今は、選手がつらいときは無理をさせないコーチもだいぶ増えてきています。

 

—— 現在、寺田さんはどのように月経コントロールをしているのですか?

 

寺田さん:

子宮内避妊具「ミレーナ」を使っています。子宮内に装着すると5年間にわたって黄体ホルモンが放出されるもので、月経過多や重い生理痛、生理不順などに効果があるとされています。産後、5カ月ほどで生理が戻り、相談したスポーツドクターに提案してもらいました。ちなみに、費用は保険適用で1万円程度です。

 

先日、ちょうど初めてミレーナを入れてから5年が経ち、取り替えのタイミングだったんです。それをInstagramのストーリーズで投稿したら、複数のママ友さんから「どうなの?」と連絡があって。産後の女性ホルモンの波を経験し、閉経を前に更年期障害の兆しが見え始めて「なぜまだ生理があるんだろう」と考える女性は、意外と少なくないんですよね。

 

もう生理が必要ないと感じるならば、コントロールしてつらさを手放していいと思うんです。ミレーナや低用量ピル以外にも選択肢はありますし、信頼できる産婦人科医の先生を見つけて、相談してみてほしいですね。決して恥ずかしいことではないですから。

 

ママアスリートとして娘に伝えたいこと

寺田明日香さん

—— 産後復帰して競技を続けることで、娘さんに何を伝えたいですか?

 

寺田さん:

まず、自分の好きなことに一生懸命取り組むのはすばらしいのだということ。そして、自分の仕事がだれかの役に立てばうれしいし、やりがいにつながるということ。そのためにも、子育てと両立するだけでなくしっかりと競技で結果を出していきたいです。

 

娘にもいつか好きなことに打ち込める人になってほしい。陸上選手の子どもは「運動神経がいい」「走るのが得意」といった偏見を持たれがちですが、「ママは足が速いけど、私はチアやフィギュアスケートがやりたいから」なんて笑い飛ばすぐらいの強さも兼ね備えてくれたらうれしいですね。

 

将来、仕事と妊娠・出産とを天秤にかけることがあっても、「ママはどうしていたかな?」と思い出してくれればと思います。

 

—— 女性が体をコントロールする大切さも伝わればいいですよね。

 

寺田さん:

そうですね。彼女に初潮が来るころには選択肢はもっと広がっているでしょうし、悩みがあったら一緒に考えたい。生理やその意味については、今から知らせているんですよ。

 

例えば、ミレーナを入れていてもたまに不正出血があるので、そんなときは娘を呼んで、「お姉さんになって、赤ちゃんが産める体になってきたら血が出てくるんだよ。もし血が出てきたら教えてね。悪いことじゃないからね」と伝えています。

 

日本の性教育はかなりクローズドですが、私は男女ともにきちんと性についての知識を持っていたほうがいいと考えています。大事なことですし、自分や体を守ることにもつながりますから。

 

PROFILE 寺田明日香(てらだ・あすか)さん

1990年、北海道生まれ。100mハードルでインターハイ3連覇、日本選手権3連覇、世界陸上出場などを果たす。2013年に現役引退後、結婚、大学進学、出産を経て2016年に7人制ラグビーで現役復帰。2018年、陸上競技に復帰し、2019年に日本新記録を樹立。世界を目指しながら、アスリートのキャリアについても発信している。

 

取材・文/有馬ゆえ 撮影/河内彩

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