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29歳で日本新記録・ママアスリート寺田明日香“メンタルを保つ言葉”

仕事

2021.01.28

寺田明日香さん

“ママアスリート”として世界を目指す100mハードラーの寺田明日香さん。寺田さんは、23歳で一度陸上を引退し、結婚、出産、競技転向などを経て28歳で復帰。復帰翌年の2019年には100mハードルで日本新記録を樹立しています。

 

アスリートは、精神力が求められる職業。寺田さんは、一度目の陸上人生と二度目の陸上人生では、自信の持ち方が変わったと話します。

結婚、出産を経て、ありのままの自分に自信を持てるようになった

—— 自分に自信を持つためには、何が必要だと思いますか?

 

寺田さん:

一番は、「弱い自分」と「強い自分」を認めてあげることだと思います。自分の弱い部分を認めるのって難しいですよね。私は一度目の陸上人生では、「完璧で強い寺田明日香」でいないと自信が持てませんでした。他者からの目線が気になって、弱さを見せたら終わりだと思っていたんです。

 

でも、結婚、出産を経験し、「これからどんなことが起きようとも夫と子どもとはお互いにそばにいるのだろう」と思えたとき、自分を繕う必要はないのかもしれないと気づきました。ありのままの自分を受け入れてくれる人ができたことで、弱い自分でも大丈夫だと思えたのだと思います。

 

—— 無理して自信を持つのではなく、今の自分でいることに自信を持てるようになったのですね。

 

寺田さん:

そうですね。それからは、競技や仕事でも、今の寺田明日香を評価してくれる人たちと一緒にやっていけばいいと考えられるようにもなりました。

 

一度目の陸上人生は、完璧を求めるあまり、苦しい思いもしました。過去の自分や同じような気持ちを抱いている今の若い子たちを救うためにも、無理せずありのままの自分を大切にする生き方をしていきたいと思っています。

メンタルを保つための「準備」と「文句」

寺田明日香さん

—— アスリートは、大会で結果を出すことが求められます。自信を持ってレースに挑むための秘訣とは?

 

寺田さん:

しっかりと準備をしておくことです。レースの直前になったら、ウジウジ考えていても結果は変わらない。本番でやってきたことを出し切るしかないのであれば、その前に十分な準備をしておくことが何よりの自信になります。「これだけ準備してダメなら仕方ない」とも思えますしね。

 

調子がいいときも悪いときもあるのが人間。ここぞというときに調子が悪いこともあるんですよ。2位に終わった2020年の日本選手権はまさにそうでしたが、「調子が悪いのは仕方がないから、できる最大限のことをしよう」と考えていました。

 

—— 日々、メンタルを保つために心がけていることはありますか。

 

寺田さん:

人の言いなりにならず、納得できないならとりあえず文句は言うことかな()。例えば、日々提示される練習メニューのなかには納得できないものもあります。そういうときは、「ちゃんとやるから、なんで3回もこのメニューをやるのか教えて」とスタッフに聞く。

 

スタッフは私の性格をわかっているので、「こういう時期だからこういうトレーニングが必要だ」とか「走り方がこうだからこういう練習方法にしたい」などと納得できるような情報を与えてくれます。もし不満があったとしても、納得してやるのと納得しないでやるのとでは、気持ちが全然違いますよね。

世の中、全部がうまくいくわけじゃない

寺田明日香さん

—— 行き詰まったときは、どのように気持ちの切り替えをするのでしょう。

 

寺田さん:

行動を切り替えることで、気持ちも切り替えています。例えば、陸上の練習で思うように走れないなら、人のトレーニングを見学してみる。子どもに怒り疲れたら仕事をしてみたり、「心を洗おう!」と掃除を始めたり、「いっそマンガ読んじゃうか」なんてこともあります()。

 

自分には、いろいろな顔があってよかったなと思います。独身時代は、アスリートの顔しかなかったから、「なぜできないんだろう」とぐるぐる悩んで抜けだせないこともあって。

 

多くの役目を持つというのは、いい意味で逃げ場があるということ。生きていたら、逃げたいときもある。逃げるっていいイメージを持たれにくいけれど、方向転換をしてみたら視野が広がったり、すべきことに対して違う視点を持てたり、プラスになることもあるんですよね。

 

—— それでも気持ちが切り替えきれず、落ち込んでしまうこともありますか?

 

寺田さん:

ありますよ。すごく落ち込むときは、たいてい疲れているんです。あまりに多くのことが重なっていたり、1か月間以上、丸1日の休みが1日もないときだったりする。だからまずは、「疲れてるんだな」と受け止めて休むことにしています。休んだら、それを後悔しないのも大事。

 

同時に、うまくいかなくて落ち込むことがあっても、「でも世の中、全部がうまくいくわけじゃないし」と俯瞰するようにしています。そして、落ち込んでいる中で、うまくいくためにはどうすればいいのか、何に楽しみを見いだせるのか考えてみると、意外にできることはある。それを着実にこなし、少しずつでも前に進むことが大事なのだと思っています。

 

PROFILE 寺田明日香(てらだ・あすか)さん

寺田明日香さん

1990年、北海道生まれ。100mハードルでインターハイ3連覇、日本選手権3連覇、世界陸上出場などを果たす。2013年に現役引退後、結婚、大学進学、出産を経て2016年に7人制ラグビーで現役復帰。2018年、陸上競技に復帰し、2019年に日本新記録を樹立。世界を目指しながら、アスリートのキャリアについても発信している。

 

取材・文/有馬ゆえ 撮影/河内彩

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