企業姿勢やブランドの思いを一貫して伝える
──採用フォーマットを変更することで、実際の手間はどうだったのでしょうか?
バスマジェさん:
新卒採用は管理フォーマットを一括変更しただけで、実際には苗字の重複は電話番号や生年月日で照合すれば応募者を把握できました。中途採用はエージェンシー経由が大半のため、開始当初は弊社にとって不要な項目を消す専用要員を予め用意していました。でも理由を説明するとエージェンシー側にはむしろ好意的に受け取ってもらい、予め応募者の項目を削除した書類を送ってくれるようになりました。
──エージェント側も、企業姿勢が明確なことで自信を持って良い人材を推薦できるのかも知れないですね。では、面接はいかがですか?選考が進むにつれて、応募者と対面する機会も出てくるとは思うのですが……。
バスマジェさん:
面接はあくまでも「聞きたいことを聞く場所」なので、極論ですが私たちは本人が好まないのなら顔が見えなくてもいいと思っています。ただ実際に入社してからは顔を合わせて働くことになるので、いずれはお互い顔を見て話す機会を設けることは重要です。
そのため、面接官には事前にアンコンシャス・バイアスを取り除くトレーニングを受けてもらいました。写真やキーワードを見せて誰にでもバイアスがあることを認識してもらい、「何か感じがいい」という抽象的な評価ではなく、具体的に何が良かったのかをフィードバックできるようにしました。また全マネージャーに面接で応募者に尋ねてはいけない質問リストを配布して「結婚の予定など、業務に関係ない話をしない」「子どもがいるからといって、業務量をセーブしたいかは人による」など、その人自身を客観的な視点で見られる体制を整えました。
高野さん:
ブランド側からこうした発信をする以上、口だけではなく行動が伴うことも重要です。ブランドが発信する「say」と、実際の行動「do」が結び付いて、初めてブランドや企業の行動に対しての共感が生まれます。そこまでして初めて選ばれるのだと考えています。
──メッセージを形にしていったのですね。現時点で「LUX Social Damage Care Project」から、実際の採用に至った方はいるのですか?
バスマジェさん:
2022年入社予定の新卒内定者17名は、今回の方式で採用しました。実感として若い世代の方がダイバーシティやジェンダーに興味関心があり、就職活動でも軸の一つに据えていると感じます。
私自身も国際結婚をしており、産育休の経験者ですが、ユニリーバは社員というよりも一人の人間として尊重してくれる会社です。LUXは「女性の輝き」を、ユニリーバは「あなたらしくいることが素晴らしい」と常に伝えてきました。今回のことがブランドや企業らしさを伝えられるアクションとなり、実際に応募者からも「プロジェクトがあったことで、女性でも活躍できる会社だと思い応募しました」と反響をいただいています。