共働き時代に合った私らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。
2020年3月の採用活動より、性別につながるおそれのある情報をすべてシャットアウトすると発表したLUX。下の名前、性別、顔写真欄を履歴書からなくす「#性別知ってどうするの/LUX Social Damage Care Project」の企業広告は、SNSを中心に社会的にも大きな反響を呼びました。今回は、そんなLUXのブランド戦略に携わる高野美欧さん、採用を担当するバスマジェ詩織さんに、一連の採用活動の狙いについて伺いました。
PROFILE 高野美欧さん
PROFILE バスマジェ詩織さん
賛否両論があった、履歴書フォーマットの変更
──LUXでは採用選考時の履歴書から下の名前、性別、顔写真の項目を廃止すると発表しました。なぜこうした決断に至ったのか、教えてください。
高野さん:
LUXはビューティーの分野で、女性を輝かせるブランドとしての立ち位置を確立させてきました。でも女性の置かれている現実を見てみると、男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数は153国中、日本は121位。男女雇用機会均等法などの法律が整備されても、社会的にはまだまだ女性が生きにくさを感じる機会が多いです。
加えて私たちが全国で採用書類審査の担当者424人に聞いたアンケート調査でも、約4人に1人が「採用過程において、男性と女性が平等に扱われていない」と考えているデータが出ました。「履歴書に貼る写真が採用に影響する」と考える人も44%います。
──悪気はなくても、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に気付いていないケースも多そうですね。残念ながら、未だに女性は採用面接時に容姿が合否に影響するケースもあるのが現状ですね…。
高野さん:
私たちLUXは女性の輝きを応援するブランドとして、社会の固定概念に縛られることなく、誰しもが輝ける場所を作るため、まず仕事のすべての始まりである「採用」でアクションを取ることをユニリーバに提案しました。ただ当初、人事からの反応はネガティブというか、「取り組み自体は素晴らしいけれど、なぜ今更?」とあまり好意的ではありませんでした。
──ブランド側からの提案だったとは、意外ですね……むしろ全社一丸となって取り組んだのだと思っていました。
高野さん:
人事担当者としてはオペレーションが煩雑化する懸念に加えて、フォーマットに関わらず従前からきちんと人物を見て採用している自負があり、今までの採用活動を否定されたように感じたのだと思います。
「そうではなくて、これは社会的に意義があることなんだ、ブランドから社会に向けて発信する必要があるのだ」と何度も訴えました。社内では性別や学歴にこだわらないのは既に当たり前の価値観でしたが、ブランドから発することで社会にも大きなインパクトがあると思ったのです。最終的には経営層にまで意図を理解してもらい、実現に結び付けることができました。