夫に「復職後の話」を切り出すきっかけを

──「セレクト」ということですが、スタッフはどこまで勤務希望を出せるのですか?個人からの細かい要望が集まると、調整が難しそうな気がしますが…。

 

高砂さん:

1日6時間、月130時間以上というルールを守れば、働く曜日や時間帯は個人が自由に希望を出せます。「子どもの年齢〇歳まで」といった制限もありません。個人的な事情を考慮して、働き方は自分次第で決めることができます。

 

たとえば私は土日に家族が寝ている朝の時間帯に出勤して、ランチタイムにパパが子連れで私の働いている店にお迎えがてら来店し、ランチして一緒に帰るスタイルが恒例でした。シフト勤務で時間の融通が利くのが、逆に生きていると思います。長男も誕生日にスープストックトーキョーのカレーを食べたがる程ファンなので、好きなものを食べさせてあげられました(笑)

 

江澤さん:

細かい時間や曜日が上がってくるので、本社は申請ベースで人事や配属を考えます。もし人手が足りなそうなら、先程お話した「拡充隊」を配属するなど

工夫します。色々な立地にお店があるので、希望を叶えやすいことも強みです。

世の中だけでなく、社員の家庭の体温もあげる制度設計

Welcome Back研修の様子

 

──共働き世帯が増えてきているとは言え、育休中に母親である女性が家事育児を主体となって引き受け、復職後もその流れで…と女性に負担がかかっている家庭も多いです。スープストックトーキョーでは、そうした女性社員に向けてのサポートもあると聞きました。

 

高砂さん:

復職後が不安なママ社員のために、保育園に願書を出す秋に合わせて「Welcome Back研修」を行っています。特に第一子ママ社員は、初めて我が子を預けることへの不安や仕事と家事育児の両立がイメージできにくいです。産育休中の会社の状況や周りのママ社員の状況、先輩ママの座談会で実際の保活はどうだったか、生活の変化やそれに合わせた対応などを聞く機会にしています。

 

実際に話を聞いてみると、今まで自分がやってきた家事分担についてどう切り出せばいいのか緊張して、泣き出してしまう社員もいました。そうしたママ社員仲間にも寄り添っていきたいと思っています。

 

江澤さん:

育休中と仕事復帰後では今までと同じようにはできないのに「仕事も家事育児もやらねば」と頑張ってしまうメンバーが多くて…。仕事のことはもちろんサポートするけれど、他にも会社として何かしたいと思い、2年目からは自宅にお手紙を送っています。

 

 

「〇〇さんとまた働けるのを楽しみに待っていますよ!」「私たちの会社は、奥様をこれだけ必要としています」と形にすることで、パートナーの方も「妻も復帰するんだな」と心構えが変わってくるし、これからどうしようかと話すきっかけも生まれると思うんです。家でいるときの妻や母の顔と、会社での仕事の顔は、ちょっと見え方が違うと思うんですよね。

 

──うわあ…!それはうれしいサポートです!「世の中の体温をあげる」という企業理念のように、人間味を感じられるアイデアですね。

 

江澤さん:

復帰前面談では、復職後の見通しが立てられるように仮の配属店舗も伝えています。事前に分かっていた方が、「朝は〇時に家を出ればいいな」「保育園は△△の方が近い」など、より具体的に復帰後の生活をイメージ出来ると思うんです。本人の希望を元に、会社としては何時から何時まで働いてほしいということも伝えています。

 

退職全般に言えるのですが、辞める理由が「他のことに挑戦したい」など自分自身の理由なら応援できます。でも仕事が好きで続けたいのに、仕組みやサポートが整っていないから辞めざるを得ないのなら、それは会社側も自分事として対処しなくてはいけません。

 

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