HSPだからこその長所もある
── HSPの気質は、どのような長所になりうるのでしょうか。
長沼さん:
共感性が高く他人に優しい、素直、真面目、正義感が強い、相手の気持ちを察することができる、礼儀正しい、人を守りたいという気持ちが強い、感受性が強く想像力が豊か…。
一般に美点とされるこれらの優れた気質や才能は、HSPの特性に由来しているケースもあります。
原因は、脳の神経回路の炎症
── そもそも「敏感すぎる」気質は何が原因でそうなるのでしょうか。
長沼先生:
人間の脳はさまざまな神経回路が複雑に絡み合いながら活動しているのですが、HSP気質の人は脳の神経回路に炎症が起きたことで、本来ならば不安や恐怖を抑制する神経回路が過剰に活動しやすい状態にある、といえるでしょう。
母親のお腹の中にいるときから何らかの原因で脳の神経回路に炎症が起こり、生まれた時点ですでに敏感すぎる気質を持っているケースがある一方で、後天的にHSPとなる場合もあります。
後天的というのは、つまり生育環境です。心理的・身体的虐待や過保護、あるいは過干渉、ネグレクトなどによってトラウマ(深い心の傷)が生じ、それがHSP気質として増幅するケースもあるでしょう。
── 持って生まれた気質が発現する場合もあれば、育った環境によってHSPの傾向が増幅する場合もあるのですね。
長沼さん:
そうです。ただ、難しいのはHSPが「感覚」の問題だということ。感覚は外からは見えませんから、どうしても本人の主観的な感じ方から判断するしかないんですね。
5人に1人とされるHSPですが、全体の割合から見るとやはり少数派です。ですから、敏感さによって心が疲れてしまうことも悩みですが、どちらかといえば「それによって生じるつらさを周囲に理解してもらえない」「自分に自信が持てない」ことに悩んでいるHSPのほうが多い印象を受けます。
── ではHSPの人は、どうすれば自分自身を肯定できるようになりますか。
長沼さん:
まずはHSPという気質・特性を理解しましょう。その上で、遠ざけられる刺激は遠ざけるなど、自分を守り、不安を最小限にする工夫をしていきましょう。HSPの知識を持つカウンセラーや臨床心理士を探して、普段の悩みを相談することもおすすめします。