イライラしている人や怒っている人が近くにいると、すぐ動揺する。騒音やまぶしい光が苦手。他人に深く共感しすぎる。なぜだか軽く見られてマウントを取られる…。

 

もしも長年にわたってそんな悩みを抱えているのなら、それはあなたがHSP (ハイリー・センシティブ・パーソン)と呼ばれる「非常に敏感な気質」の持ち主だからかもしれません。

 

5人に1人と考えられているHSPとはどのようなものでしょうか。また、HSP気質を持つ人が子育ての場面で抱えがちな悩みとは? 

 

HSPの自覚がある、もしくは「私はHSPかもしれない」と感じているママが、自分のよいところを肯定しながら、周囲の人々と向き合っていくための心構えを専門家に伺います。

 

第1回のテーマは、「そもそもHSPって何?」。

 

『敏感すぎて生きづらい人の 明日からラクになれる本』をはじめ、HSP気質を読み解く多数の著書で知られる十勝むつみ十クリニック院長・長沼睦雄さんにお聞きします。

5人に1人が「敏感さ」に悩んでいる

──  HSPという言葉を聞く機会が増えたように感じますが、そもそもHSPとは何でしょうか。

 

長沼さん:

HSPは、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン:非常に繊細な人)の略で、心理学者のエレイン・N・アーロン先生によって1996年に提唱された概念です。

 

不安や恐怖、色、音、匂いなどさまざまな刺激に敏感である、感受性・共感性が強い、繊細である。そういった特性を持つ人がHSPであると考えられており、5人に1人はHSPであるといわれています。

 

ただ、HSPはあくまで「気質」であって、病気や障害ではありません。そのため、病院で敏感さから生じる生きづらさを訴えても、「あなたはHSPです」と診断されるものではないんですね。医学概念ではないため、HSPを知らない医師もまだまだ大勢います。

 

「心」というものは非常に広く、曖昧な領域です。ところが、近代医療では原因を分析・分類して因果関係を証明していく手法が一般的ですから、HSPのような感覚領域の問題は心理カウンセラーのあいだでもまだまだ扱いが難しい、というのが実情です。

 

──  そうなると、HSPかそうではないかは、自分で判断するしかないのでしょうか?

 

長沼さん:

HSPと非HSPの間に、明確な境界線はありません。ただし、次の4つの特性に当てはまる場合はHSPの気質を持っていると考えられます。

 

(1)情報を深く処理する

(2)過剰に刺激を受けやすい

(3)感情の反応(特に共感力)が高い

(4)ささいな刺激を察知する

 

これらの特徴は日常において、「場の雰囲気や人の感情などを深く読み取りすぎてしまう」「人混みや騒音、匂い、光などに敏感に反応しやすい」「親や身近な人の感情に引きずられ、同調しやすい」「刺激に対して敏感でストレスを感じやすい」などの形で現れます。

 

上記の4つがすべて当てはまるようであれば、相当敏感なHSPであるといえるでしょう。

 

また、ひと言でHSPといっても、人によっては程度に差があります。すべてに当てはまらなくても、どれかの項目に強く当てはまると感じられる場合は、HSPである可能性が高いと考えられます。

 

これまでは怖がり、恥ずかしがり屋、内気、引っ込み思案などの言葉で表現されていた性質も、HSPという概念で説明できるケースも少なくないでしょう。

 

そしてマイナスばかりではなく、HSPであることが長所になる場合ももちろんあります。

 

>> NEXT HSP気質ならではの長所や才能とは?