2019.04.08
主婦であるこだまさんが、夫との性生活の悩みをはじめとし、生きる上でのさまざまな葛藤を綴ったエッセイ『夫のちんぽが入らない』(扶桑社)。タイトルのインパクトからも、2017年に発刊された当時より大きな話題となりました。そのエッセイを原作とした連続ドラマが、この春FOD・Netflixにて配信スタート!今回は、作者の夫役“研一”を演じる中村蒼さんにインタビュー。夫婦のあり方や普通とは?について、語っていただきました。
“夫婦とは?” “普通とは?”いろいろと考えさせられる作品です
夫婦に大切なのは、相手への“リスペクト”
まずはドラマのあらすじを簡単に教えてください。
中村蒼さん:
なかなか衝撃的なタイトルなんですけど……あらすじとしてはもちろん「入らない」という話もありつつも、寄り添いながらすれ違いながらと日々絆を育んでいく、ごく普通の夫婦の生きざまが描かれています。
夫婦二人だけの小さいコミュニティの中での話が淡々と進んでいくので、すごくドラマチックな愛の物語っていうわけでもないんですが、だからこそ、僕自身も共感できる部分がたくさんありました。
人生において当たり前と言われることができない…「入らない」ことから派生する夫婦のすれ違いに日々悩む“久美子”。その夫・“研一”を演じて、中村さんご自身が共感した部分はありましたか?
中村蒼さん:
世の中的には、どうしても多くの人がやっていることと違うことをしたりとか、多くの人ができていることができなかったりとかすると、批判されたり悪くいわれたりすることが多かったりします。それは傷つくことでもありますけど、でも一番大切なのは、「夫婦二人が信じた道を、誠実に進んでいくこと」というところに、研一さんと久美ちゃんは行き着くんです。そういうところは共感というか、自分にもこう、すごく学ぶ部分がありました。
周りがどうあれ、二人なりの考えで進み方を一緒に考えられて幸せに生きていくことができた。そんな二人の姿に、僕も生きる力をもらえましたね。
夫婦二人の生活ですれ違い始める……そんな局面に立ったらどう振る舞い、どう考えたらいいですかね?
中村蒼さん:
劇中では「入らない」という問題が問題だけに……夫婦といえど、というか、夫婦だからこそ聞けない部分もあったりするんです。相手のことを思っているんだけど、想像で行動して、それがだんだんとずれてきてしまって。
そんななかでも、根本には二人ともやっぱりお互いを尊敬していて、お互いを好きであるから、夫婦としてやっていけたんだと思います。そこが自分自身にも響きましたね。もちろん夫婦をやっていると、相手に対して憤りを感じることもあるのでしょうけれど、“相手へのリスペクト”がしっかりしてればいいのかな、と。
子育て、仕事、家のこと……いろいろある中で旦那さんとの関係性が崩れた場合も、やっぱり“リスペクト”が必要?
中村蒼さん:
劇中で、研一さんが久美ちゃんに「共働きだからゴハンつくらなくてもいいよ。できあいのものでもいいよ」というシーンがあって。僕は研一に愛着があるんで(笑)、“研一はやさしいな〜”と思いながら演じてたんですけど……。
あるとき、男性スタッフさんが「自分だったら、奥さんにあれ言わないな」と。例えば、仕事が8時くらいに終わったとしたら、どこかでゴハンを済ませて帰ってくるほうが奥さんにとっては負担がないのでは?ということで。「できあいのものでも」ということは、結局、「ゴハンを用意して」ってことじゃないですか。その意見を聞いたとき、確かに、と思いましたね。
そうやって、自分が良かれと思ってした言動でも、相手に対して負担になることもあるんだな……と。どんな局面でも“相手に対してのリスペクト”は忘れずにいることが大事なんだと思います。
気持ちが離れても、結局別れずに一緒にいた。そんな研一と久美子の結びつきを完全に離さなかったものって、なんだと思いますか?
中村蒼さん:
すごいですよね!そこは、純粋に二人が愛し合い好きだったのかなと思いますね。
“普通”にとらわれすぎず、自分の思いに正直に
台本を読んで、まず“普通ってなんだろう、自分が普通だと思う感覚は自分にしか当てはまらないな、と思った”とおっしゃっていますよね。
中村蒼さん:
「入らない」ということをはじめとして、“世の中の普通”にしばられ、苦しめられた二人。だからといって誰かに相談することもできず、なかなか前に進めないんですけど、遠回りした分、二人だけしか感じ得ない幸せを見つけるんですよね。遠回りしたからこそ見える景色があるんだなと。
僕も思ったことを口にしたりするのがニガテなタイプなんですけど、そして、割と流されやすいタイプの人間だったりするんですけど、それでも周りがどうであれ、自分の思うことに正直に行動するべきなのかな、って。
内容は違えど、誰もがみんな悩みを持っていると思います。かといって、悩みを解決するために、みんなと同じように馴染まないといけないとか、こうしないといけないとかはないんだよ、ということを教えてくれるドラマだと思います。
ドラマで研一を演じていて、一番印象的だったシーンは?
中村蒼さん:
えーっと、そうですね。学生時代に二人が出会ってからの10年を描いているんで、いろいろなポイントでそれぞれ思い入れはあるんですが。
研一さんが「久美ちゃんが他の人は“入る”」っていうのを知ってしまいケンカになり、お互いが家出して、学生時代に一緒に住んでたアパートで偶然に出会うシーンがあるんです。
そこで、二人が素直にいろいろ話すんですけど。初めて会ったとき研一さんが久美ちゃんに声をかけたのはこういう気持ちだった、とか、これからは二人でこうしていこうね、とか。そのシーンが、なんだかすごく印象的でしたね。
出会ったアパートで、成長した2人が原点に戻りつつ未来を一緒に語って、次に進む。初心に帰るって、やっぱり大事なんだなと。
原作にはそのシーンはなかったですね
中村蒼さん:
そうですね。ドラマには、原作になかった研一さん側の目線で進む1話もあるんです。原作者も知らない、研一さんの話。全10話ある中の1話だけが、研一さんはもしかしたらこういうことを思ってたかも……というドラマ仕立てになっているんです。それは楽しみにしてもらいたいですね!
最後に、読者へのメッセージをお願いします!
中村蒼さん:
まず僕の場合でいうと、俳優という仕事はみんなで作っているとはいえど、上司と部下の関係もなく、割と意見を言い合うのがよしとされているというか。“普通”とは少し違っていても、それがよしとされている世界だったりします。
とはいえ、当然悩むこともあります。僕は悩みがあると自分のなかで解決することが多くて、ストレスを発散するのがあんまりうまくできないタイプで。でも、自分の人生だし、“世の中の普通”にとらわれすぎず、自分を信じて進めばいいのかなと思います。
みなさんも、仕事や人間関係などいろいろ悩みがあると思うんです。世間体があったり他人からいろいろ言われたり。もちろん、そういうのを聞いて「もっとこうしたほうがいい」と思ったり自分には見えていなかった道が見えたりすることはあります。でも、最後はやっぱり“自分の思うこと”こそが、大事だと思うんですよね。
自分のことを信じてあげて、自分の味方で最後まであり続けていればいいのかな、と。そこさえブレなければ、“世の中の普通”にとらわれすぎず、悩みを乗り越えられるのかも、と。
自分自身に対しても、そう思います。
始めはタイトルに衝撃を受け、物語の世界に引き込まれます。物語の舞台は、夫婦の何気無い日常。それを通じて、人生で問題にぶつかったらどう考えていくか、の根本的なことを考えさせられる。そんな、心にしみる作品です。今回配信されるドラマ版では、原作とは違う目線も挟みつつ、描かれているそう。中村蒼さん演じる“研一”と石橋菜津美さん演じる“久美子”の夫婦のやりとりも、楽しみに見させていただきます!
PROFILE 中村蒼
福岡県福岡市出身。2006年、寺山修司原作による舞台「田園に死す」で主演デビュー。その後、ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。2019年3月20日FOD・Netflixにて配信『夫のちんぽが入らない』主演、3月23日NHK総合にて放送『詐欺の子』主演、3月NHK総合にて放送『浮世の画家』など出演など、この春は多くのドラマに出演。7月末からは舞台『お気に召すまま』もスタート。
取材・文/松崎愛香 撮影/田尻陽子
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