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小川糸さん「子育てや働くことで大切なのは”ムリをしないこと”。心の声を聞くことも大切です!」

ライフスタイル

2019.11.15

2020.01.20

「ライオンのおやつ」発売記念インタビュー!

 

『食堂かたつむり』『ツバキ文具店』の小川糸さんの最新作『ライオンのおやつ』が発売となりました。若くして余命を告げられた主人公の雫が、瀬戸内の島にあるホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、穏やかな景色の中、本当にしたかったことについて考える物語です。

 

CHANTO WEBでは、現在、ドイツ・ベルリンと東京を行ったり来たりしながら生活している小川さんにインタビュー! 『ライオンのおやつ』で伝えたかったこと、小川さんのおやつの思い出や死生観について、そしてドイツでの暮らしについていろいろとお話を伺いました。

 

きっかけは「死ぬのがこわくなるような物語を書きたい」という気持ちから

 

—— 「死ぬのがこわくなるような物語を書きたい。」という気持ちで書いた本とのことですが、小川さん自身は「死」をどのように捉えていますか?

 

小川さん 死には、自分が死ぬという死と、自分以外の人が死ぬという死の2種類があります。まずは自分の死については、それを経験したときに書くことができないのがすごく残念だなと思っています。

 

自分自身は死について「怖い」と感じたことはなく、逆に「何が起きるんだろう」と興味というか、ワクワクするという感じの方が強いんです。一方で、自分以外の死は想像するだけで恐ろしいし、喪失感や悲しみがあるので、捉え方はまったく変わってきますよね。

 

—— 小川さんが「死」を意識するときってどんなときですか?

 

小川さん 小さい頃は「死んだらどうなるんだろう」と単純に考えたりもしたけれど、やはり40歳を過ぎて、人生の折り返し地点を過ぎたときに、自分がいつ死んでもいいように、みたいなことは考えますね。

 

たとえば、もうそろそろ、遺言のような、自分がこうしてほしいという要望をまとめておこうかなとは思っています。自分にとっての優先順位って、そのときそのときで変わって来ます。だからこそ、その都度更新することが大切だと思っているし、第三者が見てもわかる形、伝わる形で残しておきたいと考えています。

 

—— 「ホスピス」を題材にするうえで、たくさんリサーチをしたかと思います。何か印象的だったことはありますか?

 

小川さん ターミナルケアをしている医師の方に、作中の登場人物のように、実際に死が近い方たちのお話を伺いました。

 

ホスピスは死を受け入れて静かに淡々と、心穏やかに旅立って行く人たちの場所という印象があったのですが、実際は、死という自分の運命を受け入れられない人もいて、葛藤もあれば喜怒哀楽もあるということ。生々しい人間の感情があるんだということを知りました。でも、そんな環境の中でも「人は生きている限り、(考え方なども)変わることができる」ということを実際に目にしてきた人に伺えたことはとても大きかったです。

 

 

小川糸さん公式サイト:「糸通信」より。

 

—— 最後に食べたいおやつって、意外と浮かばないですよね。

 

小川さん 私自身、ずっと考えているのですが、なかなか浮かんでこないんです。最後の食事って、決めている人も多くてすんなり答えられるけれど、おやつってパッと出てこない。

 

いろいろと考える中で、祖母が作ってくれたホットケーキが食べたいとか、母の作った牛乳寒天美味しかったなとか、忘れかけていたことを思い出しました。振り返ることによって、幸せな記憶、甘い記憶に結びつく。自分の人生にもいい思い出があったんだなっていうきっかけになったらいいなと思います。

 

—— 逆に雫のように自分が作るおやつが誰かの思い出になることもありますよね。

 

小川さん 雫の場合は、作ってもらったのではなく、自分が作った記憶です。私自身も自分が作ることも多いし、作る立場でもあるので、そちらの記憶の方が残っているかもしれません。

 

小学生の頃に、一生懸命作ったバナナオムレットを後で食べようととっておいたら、姉に食べられてしまったことがありました。食べられちゃったという記憶だけが残っていますが、それもいい思い出ですね。小さい頃からクッキーを焼いたり、お菓子はよく作っていました。

 

おやつの思い出について語る小川さん

 

—— おやつには不思議な力がありますよね。週に1回のおやつの時間を作ることは、とても重要な役割を果たしていたと思います。

 

小川さん 「ライオンの家」にたどり着いた人たちは、辛い思いをして戦って来た人たち。最後はもう戦う必要はなく、ただ人生のご褒美の時間を過ごすことが大事だと思いました。余命宣告されたら、悲しみや辛さがつきまとう恐怖感があるもの。でも、実際にはそういう中にも、よろこびや楽しさ、笑いだってあるわけです。死は日常の一部だということを実感します。

 

今は、日常から切り離されているので考えていないけれど、だからこそ、怖いという感情に結びつくのかなと。本来、死は普通の暮らしの先にあるものかなって思っています。

 

—— 小川さんは、自分がいつ死ぬのか知りたいと思いますか?

 

小川さん 知った方が最後の計画まで自分でできるので、できれば知りたいです。でも実際は知ることができないので、今できることは、なるべくいろいろなものを手放して、荷物を少なくするという引き算は意識しています。

 

生きているとどうしたって荷物は増えていきます。「自分にとって必要なもの」を考えるようにしていますね。

 

 

自分が「心地よい」と感じることが大事と話す小川さん

 

—— シンプルに生活するコツなども著書で紹介されていますよね

 

小川さん モノがある方が落ち着くという人はそうすればいいと思います。どういう状態を自分が心地よいと思うのか、快適に過ごせるのかを考えればいいかなって。

 

例えば食器であれば使える限度を超えたら、もうそれは持っていなくてもいい。私はコレクターではなく使って楽しみたいから、使わないものは誰かにもらってもらう。モノが溢れないようにしています。

 

—— そういう考え方になったきっかけはありますか?

 

小川さん 10年くらい前にモンゴルに行ったときに、ゲルの暮らしを経験しました。1つのものをいろいろと活用しているんですよね。例えばフライパンでお湯を沸かしたり、炒めたり、温めたりという工夫をします。その生活から学んだことは大きかったですね。

 

小川糸さん公式サイト:「糸通信」より。

 

—— 本作の冒頭に「幸せ」というキーワードが出て来ます。小川さんが幸せを感じる瞬間はどんなときですか?

 

小川さん 犬と散歩しているときや、一緒に寝ているときです。作中に出てくる犬の六花は私の犬・ゆりねがモデルなんです。

 

セラピー犬とかになって、誰かの役に立てたらいいな、なんて考えていたのですが、食いしん坊なので、そういうことには向いていないようなんです。なので、本の中でモデルになることで、人を癒したりできたらいいなって(笑)

 

小川糸さん公式サイト:「糸通信」より。

 

—— 瀬戸内を舞台にした理由を教えてください。

 

小川さん 海と死は近しいというイメージがありました。生まれてくるときは満潮のときに、亡くなるときには引き潮と共に海にさって行くとかって言いますよね。「ライオンの家」は決して人に恐怖を与えない、守られていると感じるような海のそばがいいと思いました。そういう海をみて過ごせたら、穏やかな日々が過ごせるんじゃないかなって。

 

 

現在、ドイツ・ベルリンに暮らす小川さん

 

—— ここからは、現在のライフスタイルについてお聞かせください。ドイツでの生活はいかがですか?

 

小川さん 以前は夏だけだったのですが、2年半くらい前からドイツのベルリンと東京を行ったり来たりして生活しています。初めてベルリンに行ったときに、住んでいる人が楽しそうで幸せそうで、活き活きとしている印象を受けました。ここなら自分も無理せず生活できるんじゃないかなと思ったのが、ベルリンを選んだ理由です。

 

なんとなく実家を出て、なんとなく東京に住んでいたけれど、本当は自分の住みたいところは自分で選べるはず。一生に一度くらいは自分の意思で住みたいところを選んでみたいと思っていました。

 

—— 小川さんが感じた日本とドイツの共通点または、違いなどはありますか?

 

小川さん 共通点は真面目なところですよね。時間を守るところはすごく似ていると思います。違いといえば、ドイツの子どもたちをみていると、幼い頃から自分の考えを持っていてそれをきちんと人に伝えています。そこは、日本と違うなという印象です。それが大人になっても続いていくので、自分も尊重するし、相手の考え方や生き方を尊重する。自由というものにたいして、自分たちの手で守っていかなければいけないという考え方は、壁があったことも大きく影響していると思います。

 

小川糸さん公式サイト:「糸通信」より。

 

—— 食事はいかがですか?

 

小川さん 基本的には和食です。ベルリンに行ってから、お味噌を作るようになりました。想像していたよりも簡単で、材料は豆と生の麹と塩だけ。空気が乾燥しているので、カビが生えにくいから、すごくいいお味噌ができるんです。自作のお味噌と日本から持っていくにぼしで作ったお味噌汁と、ご飯を炊いて。近所でおいしい卵が手に入るので、たまごかけごはんにしています。

 

小川糸さん公式サイト:「糸通信」より。

 

—— ドイツ料理で得意なレシピはありますか?

 

小川さん ドイツの人はそんなに料理をしないんです。ハムやソーセージ、パンを買ってきて食卓に並べるだけ。ジャガイモをオーブンで蒸し焼きにして、薄く切ったハムにをのせて食べるのも好きですね。切って並べるだけのシンプルなレシピでも素材がおいしいので、立派な料理になるんです。

 

—— ドイツといえばパンもおいしいですよね。

 

小川さん 近所に美味しいパン屋さんを見つけて、そこで買うようにしています。基本的に、お取り寄せという考え方はないです。冷蔵便がないですから。食べ物は自分が買いに行ける範囲のお店で買うのが当たり前なんですよ。

 

最近ではAmazonとかで買う人も増えているようですが、配達が追いつかないという印象です。在庫がないと、手に入れるまでに何ヶ月もかかることもある。それだったら、自分の足で買いに行くほうが早いし、確実ですからね。不便だけど、だからこそ地元の商店街、パン屋さんやお肉屋さんのような専門店がやっていけるのだと思います。地区ごとに街を愛する「郷土愛」のようなものを感じるのもそういった理由なのかもしれません。

 

小川糸さん公式サイト:「糸通信」より。

 

—— シンプルで丁寧で素敵な生活ですね。では、最後にCHANTO WEBの読者にメッセージをお願いします。

 

小川さん 子育てや働くことは、自分を犠牲にする場面がすごく多いと思いますが、その都度、自分の心の声を聞いて「無理しない」ことも大事。そうすることがなかなか難しい状況ではあっても、自分自身を大切にしてほしいなと思います。

 

小川糸 / 作家 

2008年に発表した小説『食堂かたつむり』(ポプラ文庫)は柴咲コウ主演で映画化され、ベストセラーに。同書は、2011年イタリアのバンカレッラ賞、2013年フランスのウジェニー・ブラジエ小説賞をそれぞれ受賞。そのほかおもな著書に、『喋々喃々』『ファミリーツリー』『リボン』(以上、ポプラ文庫)、『にじいろガーデン』(集英社)、ドラマ化された『つるかめ助産院』(集英社文庫)や『サーカスの夜に』(新潮社)がある。その他、エッセイ『ペンギンと暮らす』(幻冬舎)『これだけで、幸せ 小川糸の少なく暮らす29ヶ条』(講談社)、多部未華子主演でドラマされた鎌倉を舞台にした『ツバキ文具店』(幻冬舎)も話題に。

 

『ライオンのおやつ』(著・小川糸/ポプラ社刊/定価:本体1600円+税)

 

[書籍情報]

『ライオンのおやつ』

◉発売中

◉著:小川糸

◉出版社:ポプラ社刊

◉定価:本体1600円+税

◉公式サイト:https://www.poplar.co.jp/pr/oyatsu/

◉小川糸さん公式サイト(糸通信):ogawa-ito.com

取材・文/タナカシノブ

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