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妻がバリバリ働き、夫が家庭を守る…新しいスタンダードが「夫婦の多様化」のベースに

コミュニケーション

2020.07.21

2020.07.30

夫婦別姓や事実婚、国際結婚、同性カップルなど、日本の「夫婦ダイバーシティ(多様性)」をテーマにお届けするオピニオン特集。

 

今回登場するのは、夫が1年間の育児休業を取得した中西さんご夫妻。ある調査(※)によると、男性の育児休業取得率はわずか6.1%。まだまだ育休は女性が取るのが主流ですが、あえて別の選択をしたお二人に、枠組みにとらわれないパートナーシップを築く秘訣を伺いました。

※厚生労働省「平成30年度雇用均等基本調査」調べ

 

コロナ禍のため、オンラインにて取材。週末の昼下がり、お子さんのお昼寝の最中に夫婦で取材に応じてくださった。 

 

Profile 中西信介さん・味愛(みあい)さん

信介さん…都内で複数の認可保育園を運営する会社にて、コミュニティコーディネーターとして働きながら、保育資格を取得。復職後は副園長に就任。国家公務員、豆腐の移動販売業などを経て現職に。

味愛さん…株式会社陽と人・代表。東京と福島県国見町を行き来しながら、国見町の農産物の価値を広く伝える事業などに取り組む。https://hito-bito.jp/

 

自分たち夫婦にフィットする選択をしただけ 

——まずは、妻ではなく夫が育休を取った理由を教えてください。

 

信介さん:

自分のなかで「子どもの成長を間近で見たい」という興味と意欲がわいたのが一番の理由ですね。僕は当時、保育園で「コミュニティコーディネーター」として、子どもたちと地域の方の接点を作ったり、保護者同士の出会いを増やしたりする仕事をしていました。悩みながらも仕事と子育てをうまく両立している親の姿を目の当たりにし、いつか自分に子どもが生まれたら、育児に時間を費やしたいと思うようになって。

 

そんなとき、社長に子どもが産まれて、1か月休暇を取ったんです。経営者なので育休制度は使えないけれど、仕事をうまく割り振って休んでいるのを見て、自分にもできるんじゃないかと思いました。

 

 

——育休1年という長さは、男性では例が少ないですよね。長いスパンで取得したのはなぜですか?

 

信介さん:

妻は経営者なので育休制度を使えないし、なかなかストップできない業務もある。だったら、休みやすい僕が1年間取ったほうが理にかなっているかなと。

 

味愛さん:

「1年間休みたいと思う」と言われたときも、すんなり受け入れられました。というのも、妊婦健診のときから、夫は自主的に時間休を取って毎回付き添ってくれていて。私の妊娠中から育児に向き合っていると感じました。

 

——仕事で1年間ブランクができることに対して、不安はありませんでしたか?

 

信介さん:

まったくなかったです。0歳から1歳の成長目覚ましい時期にがっつり子育てに関わることは「今しかできないこと」で、かつ自分の成長に繋がる、今後の仕事の糧になると思っていたので。そう思えたのは、何社か転職することで「自分はこうしなければならない」という固定概念を手放せたからかもしれません。

 

僕は新卒で国家公務員になったけど、長時間労働が合わず4か月で辞めちゃいました。その後、豆腐の移動販売など何社か転職するうちに、仕事の成功にもいろんな形があるし、人生で仕事だけが全てではないと感じるようになったんです。もし、公務員を辞めずに競争社会に身を置いていたら、1年間の育休はキャリアが不安で取れなかったかも。

 

 

 

会社と折り合いをつけて育休を取るコツとは?

——育休を長く取りたかったけれど、会社と折り合いがつかず断念したという声も聞きます。中西さんの場合はいかがでしたか?

 

信介さん:

職業柄か、スムーズに交渉できました。とはいえ、社内で1年間育休を取る男性社員は初めてで。急に長期間休みたいと伝えても会社は困るだろうと想像がついたので、早め早めに手を打ちました。妊娠がわかる前から「育休を取りたい」と意思表示したり、妊娠がわかったら安定期を待たずにすぐ上司に話し、4月から1年間育休を取りたいと伝えたりもしました。

 

一番ネックになる人員配置については、上司と一緒に考えながら動きました。僕のポジションは自分一人しかいなかったので、12年先のヴィジョンや、どこから人を引っ張ってくるかを相談しつつ。会社に丸投げせず、自分である程度道筋を立て、積極的に提案する姿勢も必要だと思います。

 

 

「家事や育児は妻がやるべき」という思い込みを今すぐ手放して

——育休中の育児と家事の分担はどんな感じでしたか? 

 

味愛さん:

明確な役割分担があるわけでなく、“気づいた方がやる”スタンスでした。赤ちゃんのお世話は、保育士の資格を持っている夫のほうが私より詳しかったですし(笑)。夫は妊娠中から分厚い育児本を読みあさっていたので、頼りになりました。

 

信介さん:

家事もどっちでもできるような状態を心がけていました。料理は妻が得意なので任せることが多いけれど、離乳食は僕が作り、夫婦の食事は妻が作る、みたいな。二人で全体を把握していれば、復職後どちらかの仕事が忙しくなっても一人で対応できると思ったんです。

 

味愛さん:

夫婦が同等に家事ができると本当に助かります。たとえば子どもの入浴から着替えまで一人でやるとなると大変だけど、お風呂上がりを夫に任せれば、自分はゆっくりお湯に浸かれる。ちょっとしたことだけど、自分のために時間を使うのはすごく大事だなぁと実感しています。できないと、日々の疲れがどんどん積み重なってしまいます。

 

 

——そのような形になるまでに、もめたりはしませんでしたか?

 

信介さん:

特にもめなかったです。妻が「家事や育児は妻がやるべき」という概念を手放していたからかも。パパ友の話を聞いていると、意外と「自分でやらなきゃ」「ここからは夫に任せたくない」という女性が多い。でも、妻はそういうこだわりがないのでやりやすいです。

 

味愛さん:

正直、育児も家事も仕事より大変な面があると思う。その大変さを共有したいという思いがありました。その代わり、家事の出来へのこだわりはほとんどなくて。「死なない環境であればOK」という感じです。

 

 

柔軟な思考で平等な夫婦関係を築く極意とは?

——男性だから、女性だからという概念にとらわれないフラットな夫婦関係が素敵です!その関係性を築くために心がけていることはありますか?

 

信介さん:

妻には楽しく働き、人生を満喫して欲しいですね。妻がイキイキしていることが、僕にとっても家族にとっても幸せだと思うんです。

 

味愛さん:

私は夫に経済的な大黒柱でいてほしいという発想がまったくないんです。夫は学生時代から稼いでいないときも人におごっちゃうような、根っからのいい人タイプ(笑)。その彼にプレッシャーをかけてガンガン稼ぐようなことをさせると、追い詰めてしまいかねない。逆に私はずっと家庭に収まっているのが無理なタイプなので。お互いが暮らしやすいベースを作りつつ、やりたいことを実現していくほうが、ハッピーな関係でいられると思っています。

 

信介さん:

僕は自分も大黒柱だと思ってますよ。大黒柱って家の支えになる人のことだから、外で稼いで支える人もいれば、家の中で切り盛りして支える人も大黒柱なのかなと。そういう考え方も平等な夫婦関係に繋がっているのかもしれません。

 

——夫が長期育休を取るケースは珍しいですが、周囲の反応はいかがでしょうか?

 

味愛さん:

友人には「中西さんのパパがこんなことやってたよって、うちの夫にも伝えてるよ!」「うちのパパにもアドバイスしてよ」という感じで、いい刺激になっているようです。

 

私の母も「すごくいいね!」と絶賛してくれています。母は大企業で働いていたのですが、当時は妊娠したら辞めるのが当たり前でした。仕事を続けたかったのにかなわず、悔しい思いをしたからこそ、応援してくれているんだと思います。

 

信介さん:

僕の両親は、僕が4か月で国家公務員を辞めたときにすごくショックを受けていて。たぶん両親にとっては一番の大ごとだったと思います。でもその後、僕が楽しく働いている姿を見て安心したようでした。以来、「何をしだすかわからない存在」と思われているらしく(笑)、1年間の育休にも驚かず、応援してくれました。

 

——周囲の意見に振り回されるようなことはなかったのでしょうか。

 

信介さん:

なかったですね。でも、周りに振り回れされてしまう人がいてもおかしくないと思います。身近で育休を取っているパパはまだまだ少なく、男性が「子育ての横のつながり」を得るのは難しいなと感じるので。

 

振り回されそうになったらツイッターやSNSを活用するといいと思います。全国には1年育休を取っているパパはたくさんいるし、シュフ業に専念して3人の子どもを育てる強者パパもいる。子育ての悩みや喜びを共有できると満足できて、周りの意見が気にならなくなるのかなと。子どもの成長をそばで見られるのは貴重でとても楽しい時間なので、悩みすぎず気楽に取り組んでほしいですね。

 

——一般的な考え方に流されるのではなく、自分たちにフィットする選択を模索し続けることが大切だと改めて感じました。次回は「夫婦別姓」と「事実婚」を選んだ女性に話を伺います。

 

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取材・文/小松﨑裕夏

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