2018.12.20

産後クライシスは夫にも訪れる?経験談から考える夫婦の危機

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子どもが生まれるまでは夫婦仲良くやっていたはずなのに、産後、育児に必死の毎日の中で、妻側が夫に対し無性に腹が立ったり、以前のような愛情を感じられないようになってしまったりするなど、急激な気持ちの変化が起こることを「産後クライシス」といいます。

「産後クライシス」が起こるのは産後の2年間がほとんどで、その後はまた関係が回復する夫婦も多いのですが、うまく乗り越えられないと長期間愛情が低下した状態が続き、最悪の場合離婚につながってしまうケースもあると言われています。

今回は、「産後クライシス」はなぜ起こるのか、注意すべき時期や未然に防ぐにはどうしたらいいかなど、夫婦で乗り越えるための方法を考えてみました。

 

「産後クライシス」とは?


「産後クライシス」は2012年にNHKが番組内で提唱した呼び名。「クライシス」は、「危機(的状況)」を表します。

 

出産後すぐから子どもが2歳になるまでの時期に集中していることが特徴。

実際、平成28年度の厚生労働省「ひとり親世帯等の調査」では、離婚した時の子どもの年齢は、0歳~2歳が全体の約4割と、この時期に離婚するカップルが最も多いことが分かっています。

 

ベネッセが行ったアンケート調査によると、子どもが生まれるまでは、「配偶者といると本当に愛していると実感する」と答えた人は男女ともに74.3%でした。 

ところが、0歳児の時点では、夫側は愛情度が63.9%とゆるやかに下がっていますが、なんと妻側の愛情度は45.5%と急下降。

 

さらに2歳児になると、「本当に愛していると実感する」妻は34.0%しかいないという結果でした。

 

また、岡山大学・大学院が行った別の調査では、「自分は産後クライシスに該当すると思いますか」という質問に対し、「かなり当てはまる(10.3%)」「どちらかといえば当てはまる(39.6%)」とほぼ半数に心当たりがあり、さらにそのうち6割の人は愛情の低下した状態が続いていることが分かりました。

 

子どもが2歳の時点で、妻の3人に1人が夫を前のように愛せなくなっているとは衝撃の結果ですね…。

 

「産後クライシス」の原因は?


夫婦二人だけの時と比べ、子どもが生まれた後に恋愛感情が低下する現象は夫婦どちらにも起こりうるもの。必ずしも「産後クライシス」を感じるのは女性側だけとは限りません。

実は、アメリカでは上記の「配偶者を愛していると実感できるか」という質問に対し、男性・女性の回答比率がほぼ同じだそうです。

 

日本だけが男女に開きがあるのは、社会的な背景も影響しています。これもふまえて、「産後クライシス」の原因を挙げていきたいと思います。

 

女性にとって産後は環境が激変する

お産という大仕事から、初体験の新生児のお世話、夜中の授乳・夜泣きなどによる睡眠不足や疲労、日中大人と接することがなくなるための孤独感、このやり方でいいのか周りに確認できない不安…。

もちろん赤ちゃんはかわいいし、出産は望んだことであったとしても、これらは女性にとって文字通り人生が変わるほどの環境の変化であり、大変なことの連続です。

 

対して男性側は、赤ちゃんが生まれようとも仕事のある日は朝早くから夜遅くまで家に帰れない人がほとんど。アメリカでは、男性も家事育児を負担するのが普通なので、仕事を切り上げて帰宅するのが日本と違うところです。

 

また、育児については、学校や職場と違い「親として毎日これだけのことをする必要がある」と事前に説明を受けるわけではありません。

 

妻が育児で大変そうだなということは分かるものの、具体的に何をしたらいいのかよく分からず、今まで通りの生活を続けてしまう人も少なくないので、女性側は、

「こんなに大変なのに、どうしてそんなに気が利かないの?!」

「非協力的すぎて愛情も失せる!」

とイライラしてしまうのですね。

 

全て「ホルモンバランスの変化」では片付けられないけれど…

夫側だって、できるだけ協力して子どもを育てていきたいと思っている人は多いはず。

24時間子どもに神経を注いでいないといけない妻とは比較にならないかもしれませんが、家事や子どもの世話のうち、できることを見つけて率先して動いてくれる男性もいます。

 

それでも、出産前はそうでもなかったのに、産後、

「夫のちょっとしただらしなさに腹が立って仕方がない」

「顔を見ただけでイヤな気持ちになる」

などと感じるようになってしまうのは、もしかしてホルモンのしわざかもしれません。

 

妊娠中はもちろん、思春期・更年期などにもホルモンバランスは変化しますが、出産前後のホルモンバランスの変化は文字通り「激変」で、人生で、生まれたときと死ぬときに匹敵するホルモン変化が見られるのは出産時だけだそうです。

 

また産後の女性が子どもを守らなければいけないという本能が強まり、他者へ攻撃的になることを称して、SNSでは「ガルガル期」などと言ったりしますが、これもホルモンバランス変化の影響と言われています。

 

ただし、出産前はなんとか妻がカバーできていたような「靴下が脱ぎっぱなし」「食べた後の食器を片付けない」といったことがガマンできなくなるのは、ホルモン変化のせいではなく、育児でやることが激増してキャパオーバーした妻からの抗議だといえるでしょう。

 

何もかも「ホルモンバランスのせいだから仕方がない」と片付けてしまうと本質的な解決になりませんが、夫も努力しているのに腹が立って仕方ないような時は、ひと呼吸おいて、「今はそういう時期なんだ」と思えると良いですね。

 

産後クライシスは乗り越えられる?体験談で分かったこと


同じような家族構成や生活環境でも、産後クライシスが起こる夫婦と起こらない夫婦があり、さらに、産後いったん愛情度が下がっても、数年後に回復したという夫婦も存在する、と聞くと少し安心します。

 

では、産後クライシスを乗り越えるためのポイントはどこにあるのでしょう?経験談をもとに考えてみました。

 

「出産までは、できる方が家事をするというスタンスで共働きでもなんとかなっていました。でも、育児は何が何でも私がやるしかない状況。対して夫はこれまで通り飲み会があったら行くし、休みの日も目が覚めるまで寝ていることもあり、どんどんイライラがたまってきました。少しずつ子どもが成長してきて、目が回るほど忙しい時期は過ぎましたが、夫への愛情はあの頃下がったままです…」

 

と語るのはNさん(30歳・4歳のママ)。

 

ところが、昨年お姉さんに子どもが生まれ、帰省した時に話をしてみると、今も夫婦仲がとても良いと知ったそうです。

 

「よく話を聞いてみると、義兄も仕事は忙しく、繁忙期は終電になることもしばしば。でも、いつもメッセージアプリで妻や子どもの様子を気にかけてくれていて、姉が子どもと出かけた写真などを送った時にも、のんびり遊んでいられていいね、といった反応でなく、いつもママだけで子どもを連れていってくれてご苦労様、ありがとう…といった返事が返ってくるそう。実際に何か手を貸すことができなくても、その気持ちがあれば救われますよね」

 

冒頭の調査で、「産後クライシスに該当すると思わない」と答えた女性に共通して高かったのが、「夫と家事・育児を助け合っている」と感じていること。納得の結果です。

 

しかし、実は、夫が忙しく家事育児をする時間がなくても、「夫はよくわたしの家事や子育てをねぎらってくれる」と感じている女性では、そうでない女性と比べて「夫への愛情は出産前と変わらない」と答える人が4倍以上も多かったという結果が出ています。

 

「夫は出産後も積極的に育児に関わってくれている」というKさん(30歳・7か月のママ)は、出産前はこんな風に過ごしていたそうです。

 

「妊娠中、私は日常的に赤ちゃんの存在を感じて生きているけれど、夫はいま一つピンとこないようだったので、できるだけ身近に感じられるよう、夫の休みの日に検診を入れて一緒に行ったり、ベビー用品を選んだりしました。気をつけていたのは、私がぜんぶ選んで買うと夫もついてきただけになるので、事前にリサーチやセレクトをお願いしておくようにしたこと。通勤電車でスマホゲームやSNSを見る代わりに、優秀な抱っこひもはどれか?なんて比較記事を調べて送ってくれるようになりました。おかげで、産後もミルクやおむつ、赤ちゃんの成長に詳しくなったので、自然と育児に参加する気が起きるようです」

 

男性と女性では、親になった実感や自覚が天と地ほど違うのが普通なので、妊娠中から少しでも実感がわくような機会を意識して作っていくのが有効といえそうですね。

 

まとめ


「産後クライシス」は、単に女性がホルモンの影響でイライラしているとか、男性に自覚がないなどの単純な視点ではなく、働き方や社会の意識などの原因が重なり合っており、解決は簡単ではないかもしれません。 

しかし、気をつけておかないと今後の結婚生活に長く影響を及ぼすおそれもあることを夫婦ともに知っておき、できるだけ未然に防げるよう、今回の記事も参考にできる手は打っておきたいですね。

 

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 文/高谷みえこ

参考:厚生労働省「平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果」 

ベネッセ教育総合研究所「産後クライシス(危機)」で夫婦に何がおこる?!」 

朝日新聞デジタル「愛情、急速に冷えた 「産後クライシス」女性の半数経験」 

高谷 みえこ

ライター歴15年。大手企業サイトなどで執筆を行う。得意分野は女性・主婦向けの記事。育児ポータルサイトでは新米ママのお悩み相談コーナーで回答者を務めた実績を持つ。