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毎晩続く夜泣きにいつまでつき合うの…?トイレトレーニングが終わらない…!など、育児の悩みはつきません。自分を追い詰めてしまう前に、他の国に目を向けてみませんか?日本では当たり前の育児論も、海外では誰も知らないなんてことも。視野を広げれば、気持ちがラクになるかもしれません。日米での育児経験を元に、知ってほしい海外の情報をお伝えします。

 

[過去の記事はこちらから]
第1回|新生児との外出、アメリカの育児では当たり前!?
第2回|隠れたキッズメニュー注文でスタバが親子のオアシスに!
第3回|この夏ついに日本でも解禁の”液体ミルク”!そのメリットや上手な使い道は?
第4回|米国ワーママの必需品"さく乳器"で母乳育児にもう悩まない!
第5回|手作りはあり得ない⁉︎アメリカ育児の離乳食は市販がメイン
第6回|世界中で大ブーム!? 自主性を育てる離乳食・BLWって何!?
第7回|ネントレ「Cry it out」は夜泣きがつらいママにおすすめ!
第8回|これで寝かしつけいらず⁉️アメリカ流のネンネトレーニング!
第9回|アメリカのママも悩むTerrible twos(恐ろしい2歳児)

 [第8回 アメリカのしつけ]

アメリカの子育てで重視されるのは
「自立」と「自己肯定感」

自分の考えを大事にし、きちんと口にできるアメリカの子どもたち。それには、アメリカの育児で重要視されている「自立」と「自己肯定感」の2つが大きく関わっています。ママたちはどんなことを大事にしながら、子育てを行なっているのでしょうか?

「自立」は「ひとりでなんでも解決できる」ではない

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まず1つめの「自立」についてです。アメリカでは小さい頃から自室を与えたり、「あなたはどうしたいの?」「どう思っているの?」という質問をすることで、子どもの自立を促しています。例えば、朝食のパンに塗るのをバターにするのか、ジャムにするのかなどの選択をさせたりと、小さなことでも選択の積み重ねで「自立心」だけでなく「自己肯定感」も育てると言われています。

また、アメリカでは自立した個人を目指す一方で、「Interdependence(相互依存)」も重視されています。ここで言う相互依存とは、家族や友達同士などで困ったことが起きた時に助け合っていく関係性を意味します。いわゆる持ちつ持たれつの関係ですね。

日本だと問題が起きても自分でなんとかするのが自立であるというような考えがありますが、アメリカでは必要な時にSOSを出せるようになることも自立の重要な要素であるという考え方があるんです。

今回話を聞いたアメリカで暮らすママによると、

「娘の通うプリスクール(幼稚園)の子どもたちは助けを呼ぶハードルが低くて、初めて会う大人にもちょっとチャックを閉めてくれない?とか人形のお洋服を着せるのを手伝ってとか聞いています。困った時に誰かに助けを頼むハードルが低くていいなと思っています」

と、小さな頃から人に頼ることが当たり前であることがわかります。

このママの子どもが通うプリスクールは、子ども同士で助け合う機会を作るのがとても上手で、”Can you help me?”(助けてくれる?)という言葉をよく使うように薦めているそう。生きていれば、人に迷惑をかけない人なんていません。そう考えると、上手な助けの求め方を小さい頃から学ぶのは大事なことですよね。

親自身が人を頼る姿を見せるのも、子どもに「人を頼っていいんだ」と思わせるいいきっかけになるそう。日本のママたちはつい「自分のことは自分で」と頑張りがちですが、たまには人を頼る姿を見せるのもいいかもしれませんね。

自己肯定感を育てるほめ方のコツ

そして2つめは、「自己肯定感」。「自分は大切な存在である」という感情で、日本でも注目されていますよね。さまざまな調査でアメリカの子どもたちは自己肯定感がとても高いという結果が出ています。その秘密はほめ方にあるようで…。別のアメリカのママによると、「こちらでは、人前でも子どもが何かできるとみんなとにかくほめまくっていますね」とのこと。

アメリカのママたちは、子どもがほめられた場合には「うちの子すごいでしょ?私もそう思うの!」という返答をするというのが普通。謙遜するのが美徳とされている日本と大きな差を感じますよね。人前でもママから手放しでほめられることで、子どもも自分に自信を持てるのかもしれません。

さらにポイントなのは、結果ではなく過程を重視する声かけです。

「ほめる際には、具体的にどこが凄かったのか伝えるようにしています。例えば、どうやってできるようになったの?ジュリアが一番頑張ったのは何?など聞いて、その具体的に頑張った部分をほめています」

このほめ方だと、たとえ失敗したとしても「努力」を褒められるので「頑張ってよかった」と自己肯定感を高めることができますよね。

ただ、このママによるとアメリカではほめられる機会が多いため常に自分が一番すごいんだ、えらいんだと勘違いしてる子どもも多いと感じるそう。そうならないように「お友達やクラスメートと何かをした場合、例えば発表会などでほめる時は全体をほめるようにして、ジュリアが一番すごかったなどは言わないように心がけています」と工夫をした声かけを行なっているそうです。

自分だけでなく相手のことも同じくらい価値ある存在と思い尊重できる子にするためには、日々の関わり合いを増やすことが大事だそう。

「子どもたちの主治医からも教えてもらったのですが、人への思いやりの心は兄弟や姉妹、友達との関係性の中で学んでいくことでしか伸ばせないようです。なので私はジュリアにはなるべく友達とプレイデートを計画したり、学校のお友達を家に呼んだりしています」

自分や他者の存在を価値あるものと認め、互いに助け合える関係を築くことは、子どもが生きていくのにあたって大きな武器となります。日々の声かけを工夫しながらうまく伸ばしていけたらいいですね。

取材・文/阿部祐子