大人の女性に多いと思われがちな「便秘」。 でも、実は小さい子にも意外と起こりやすい症状でもあるんです。それというのも、子ども特有の理由があるのだとか…?
今回は、気になる「子どもの便秘」の起こるしくみや、家庭で今日からでもできる対策を集めてみました。
子供の「便秘」ってどんな状態?
ひとことで「便秘」と言っても、何日出なかったら便秘?便意がなくても出なかったら便秘?等と、はっきりした定義が分かりませんよね。
実は、医学書や医療機関のホームページなどを確認しても、「便秘」の定義は少しずつ違っていてあいまいな部分があります。
しかし、おおむね次のような場合は「便秘」に該当するといわれています。まずはお子さんの状況と照らし合わせてみて下さいね。
週に3回、スムーズに出ていればOK!
週に1~2回しか出ない、または5日以上出ない日が続けば便秘とされています。「うちの子、毎日出ないから心配」というママもいるかもしれませんが、毎回苦労せずに調子よく出ているのなら、1~2日おきでも大丈夫だそうですよ。
毎日出ていても、痛みや異常があれば便秘
反対に、毎日ウンチは出ていても、 「出す時に痛みがある」 「肛門が切れて血が出る」 「コロコロの小さな便しか出ない」 「柔らかく細い便がチョロチョロと出る」 などの異常がある場合は便秘とされています。
たまに1日だけなるのではなく、連続して上記のような状態になると、「便秘症」と呼ばれ治療が必要となります。さらに便秘症が1~2ヵ月以上続くと「慢性便秘症」と呼ばれるようになります。
便秘は何かの病気が原因なの?
成人の場合、「大腸がん」などの疾患が原因で便秘になっていることも考えられますが、子どもの場合は病気のために便秘になることは非常に稀だということです。
生後1年くらいまでの赤ちゃんでは、生まれつき腸が細くなっている・肛門が狭い・腸の神経が先天的に欠如している病気(ヒルシュスプルング病)などで便秘や下痢を起こすことがあります。
この場合、生後すぐに便秘が始まったり体重が増えなかったり強い腹痛や嘔吐などの症状が出たりしますが、1歳以降の子で「いままでは順調だったのに、最近便秘が始まった」という場合、ほとんどが体質や生活習慣からくる「機能性便秘(または習慣性便秘)」と呼ばれるものです。
どうして便秘になってしまうのか…排便のしくみも知っておこう
どうして子どもの便秘が起こるのかを知るために、まずは正常なウンチの出る仕組みを解説します。 腸内に便がたまってくると、腸が押し広げられ、これを合図に脳へ信号が送られます。脳からは腸や肛門をゆるめてお腹に力を入れるよう命令が送り返され、排便が起こります。
赤ちゃんは排便をがまんすることはできないので、オムツにウンチをしますよね。 対して、大人の場合は、トイレに着いて座るまで排便がスタートしないよう自分でコントロールすることができます。
その過渡期である子どもは、まだ調節機能が発展途上なため、急いでいてトイレに行く時間がなかったり、慣れない外出先のトイレが怖くて行けなかったり、その日ウンチが固くて出なかったり…と、ちょっとしたことで便秘になりやすいといわれています。
トイレトレーニングがストレスになり、ウンチがしたいのに言えないで排便のチャンスを逃してしまうといった理由が重なることもあります。
さらに、引っ越し・入園入学・家庭や友達とのトラブルなどのストレスで自律神経のバランスを崩して、脳からの信号が正しく伝わらないことも便秘の原因となります。
また、一度固いウンチでおしりが切れてしまうと、その痛みのせいでさらに排便しにくくなることも。
これらが続くと、固い便(宿便)でつねに腸が拡げられた状態となり、本来、腸の伸び縮みで脳に送られるはずの信号が送られなくなり、慢性の便秘につながってしまいます。
今日からできる、子どもの便秘対策
病気ではなくても、生まれつきの腸の形状のために、同じ食生活をしていてもきょうだいの一人だけ便秘になりやすいこともあります。
大人で慢性的な便秘である人の半数近くが、16歳以前から発症していたというデータもありますが、子どものうちからできるだけ便秘を長期化・慢性化させないであげたいですよね。
そのためには、自己判断せずに小児科医や消化器系医の診察を受けることが必要です。
ただ、医学的治療だけでなく、毎日の生活の中でも色々できることはありますし、治療と組み合わせればさらに効果が上がることも期待できます。
ここでは「今日からママにできること」を5つの項目に分けて紹介します。
ママにできること その1:食べ物・飲み物を変えてみる
「便秘には食物繊維」とよく言われますよね。 食物繊維の多い食材といえばごぼうやキャベツなどの野菜類が思い浮かびますが、小さい子はまだ食べ物の好き嫌いも多く、なかなか野菜をしっかり食べてくれないことも。
でも、食物繊維は青菜や根菜だけでなく、色々なものから摂ることができます。野菜が苦手であれば、果物やさつまいもなど、食べやすいものから取り入れてみましょう。 また海藻や豆類も食物繊維が豊富なので、「おから」をハンバーグに混ぜたり、ひじきと大豆の煮ものなどもおすすめです。
「水分をしっかりとりましょう」という話もよく聞くと思いますが、こちらも少し誤解があり、「水分をとれば便秘が治る」というわけではないそう。 すでに便秘になってしまった人に水分を多くとってもらう実験をしたところ、おしっこが増えるだけで便の回数は変わらなかったという報告もあります。
しかし、水分不足は便を固くして便秘の引き金になることは間違いありませんので、飲んでも無駄なのではなく、予防のために毎日継続して水分をとることが大切です。
甘いジュースや炭酸飲料は肥満の心配があるだけでなく、おなかがいっぱいになってしまうと肝心の食事がしっかり食べられず、便がカチカチになるもとなので、甘みのないお茶や水を選び、食事時にはスープやみそ汁などでも水分をとれるようにしていきましょう。
ママにできること その2:生活習慣を見直してみる
朝目覚めると、ヒトの体は交感神経が優位に切り替わり、消化器官も活動を始めます。 朝ごはんを食べて10~15分ほど経つと、腸も栄養の吸収や老廃物の排泄をするためにさかんに動き出します。 朝食を食べなかったり、食べてすぐバタバタと登園・登校したりすると、この時間帯に腸が活動できず便秘のきっかけになってしまうので、できるだけ出発まで余裕をもって朝ごはんを食べさせてあげたいですね。
ママにできること その3:体操で腸を刺激
ちょっとした体操をすることで、腸が適度に刺激されたり、排便に必要な腹筋や腸腰筋(ちょうようきん)などを鍛えることができます。 一例としては、いわゆる「体操座り」の状態で、骨盤を左右に動かし、おしりで前に進む「おしり歩き」が有効といわれています。 親子で並んで、前に10歩、後ろに10歩…を3回繰り返してみましょう。楽しみながらがポイントです。
ママにできること その4:マッサージ
マッサージは即効性はありませんが、毎日やさしく行うことで腸の働きがよくなったり、固まった便が少しずつ動くことが期待できますし、スキンシップは自律神経を安定させてスムーズな排便につながることも期待できます。 実は、体内で大腸が固定されているのは4か所だけだそう。漠然と押してもおなかの中で腸が動いてしまいあまり効果がありませんが、左右の腰骨の上と肋骨のすぐ下あたりを軽くつかむように持って、やさしくもみほぐすと効果的だそうです。つかむ位置を入れ替えて、左右とも行って下さい。
ママにできること その5:情報・知識を集める
わが子が便秘や下痢で苦しんでいるママは多いはずですが、あまり周囲に話すことはなく、日頃情報交換も難しいと思います。 インターネットでは、「これで頑固な便秘もスルリ」といったサプリメントや健康食品の宣伝もよく見かけますが、まずは小児の便秘や消化器官に詳しい医療機関など信頼のおけるサイトの情報からチェックしてみましょう。
特に「患者さんの声」が掲載されている場合、年齢や症状の近いお子さんの改善例が見つかったり、排便時の姿勢をこうしたらよくなった…などのヒントが得られることもあります。
かかりつけの小児科や病院も、すべての症例を把握しているとは限らないので、なかなか症状がよくならないときには「こんなケースもあるそうですが…」と相談してみると、改善の糸口が開けるかもしれません。
まとめ
今回は、働くママやパパにも無理なく今日からできそうな、子どもの便秘対策を集めてみました。 小さい子が便秘で苦しんでいるのは見ているママも辛いものですが、診察や治療と合わせ、できることから実行してみて下さいね。
文/高谷みえこ
参考:小児慢性機能性便秘診療ガイドライン作成委員会「こどもの便秘―正しい知識で正しい治療を―」」パンフレット
NHKらいふ「便秘解消したい!腸のマッサージ&体操」