「デリケートゾーンがかゆくて、ヒリヒリする!!」。人にはなかなか言えない、こんな辛い悩み。実は30〜40代の女性に非常に多いトラブルです。原因の多くは「腟カンジダ症」といって、女性の4人に3人が生涯に一度はかかる病気といわれています。
デリケートゾーンに「気になるかゆみ」を感じたら、まずは下のチェックにいくつ当てはまるか、試してみてください。
◻︎腟やデリケートゾーンに強いかゆみ、またはヒリヒリした感じがある
◻︎腟やデリケートゾーンに、ただれや発疹がある
◻︎おりものの量が増えた
◻︎カッテージチーズやヨーグルトに似た性状の、白いおりものが出ている
◻︎排尿時に痛みを感じる
◻︎性交痛があるか、性交後に出血がある
2つ以上あてはまるときは、「腟カンジダ症」の可能性が大です。
思春期から更年期まで、幅広い年代の女性を診ている産婦人科医の八田真理子先生によると「とくに特徴的なのは、カッテージチーズ状の白いおりもの。かゆみに加えこのようなおりものが出ているときは、腟カンジダ症を疑ってください」。
疲れによる免疫力低下がひきがねに
腟カンジダ症は、腟のなかでカンジダ菌という真菌(カビ)が繁殖する病気です。カンジダ菌はもともと、人の皮膚や粘膜にすみついている常在菌。腟だけでなく、口のなかや腸内にも生息しています。健康なときには他の常在菌とのバランスがとれているので、体への害にはなりません。
でも、疲れがたまって免疫力が低下しているとき、風邪や膀胱炎などで抗生物質を飲んでいるときなどには、他の常在菌とのバランスが崩れ、カンジダ菌が大量に繁殖します。これが「カンジダ症」といわれる状態です。授乳中で免疫力が下がっているとき、仕事や育児疲れがたまっているときなどは、特にかかりやすくなります。
妊娠中の腟カンジダ症にも注意。腟は通常、酸性に保たれていますが、妊娠するとエストロゲンという女性ホルモンが増加。カンジダ菌の好物であるグリコーゲンが増えるため、おりものが増えてカンジダ菌が増殖しやすくなります。湿った環境を好む真菌にとっては絶好の環境です。
また、おりものが気になるからといって、パンティライナーを頻繁に使っていると、デリケートゾーンがムレてカンジダ菌が増殖しやすくなります。更年期以降はおりものも減り、腟カンジダ症にもかかりにくくなりますが、40代までの女性は特に注意したほうがいいでしょう。
薬をきちんと塗れば、数日で治る!
腟カンジダ症かなと思ったら、まずは婦人科を受診しましょう。「腟のかゆみ=腟カンジダ症」と自己判断し、市販薬で対処する人も多いのですが、ほかの腟炎の可能性もあります。
たとえば、トリコモナス腟炎やクラミジア感染症などの性感染症(STI)が、腟カンジダ症に合併しているケースも。トリコモナス菌は公共浴場などでも感染することがあり、性行為がなくても油断はできません。
八田先生によると、「腟カンジダ症の再発時には市販の薬で対処してもいいのですが、初発時はまず婦人科で検査を受けましょう。再発のときも、市販薬で治りにくいときは他の病気の可能性があります。すぐに婦人科を受診し、原因を調べてもらってください」。
腟カンジダ症と診断されたら、治療は抗真菌薬を用います。塗り薬と腟錠があり、適切な治療をすれば通常は数日で症状が治まります。一方で、カンジダが繁殖しにくい環境をつくることも大切。陰部は清潔に保ちましょう。
入浴時は、一般的なボディソープでなく、「デリケートゾーン専用のソープ」で洗うのが理想的です。腟の粘膜は皮膚に比べてpHがやや低く酸性に保たれているので、洗浄力の強いアルカリ性石けんやボディソープで洗っていると、常在菌のバランスが崩れやすいのです。
洗浄するときは指の腹でていねいに外陰部を広げ、ひだの間までていねいに、やさしく洗うようにします。ただし、腟のなかまで洗う必要はないので注意してください。
綿の下着、ダイレクトパジャマで通気よく
腟カンジダを早く治し、再発を防ぐには、下着選びも重要です。
八田先生によると、「カンジダ菌は湿気のある環境を好むので、通気性をよくすることも大切。私だったら、夜はダイレクトパジャマ
(ショーツをつけずにパジャマを着ること)にするかな。生理中以外は、下着を履かずに寝るのもいいかも。日中も、普段からパンティライナーなどを使っているとムレやすいので、コットン製のショーツを選び1日2〜3回履き替えるといいですね。トイレに行くときに履き替えるようにすると、おりものによる不快感もなくすっきりしますよ。雑菌の繁殖も防げます」とのこと。
また、体力が落ちていると腟カンジダ症になりやすいので、免疫力を高めることも重要。なるべく体を休める時間をつくりましょう。
「産後にクリニックを受診する女性のなかには、育児の忙しさで症状を放置して、おしりの近くまで真っ赤になっている人も。産後の尿もれが気になってパンティライナーを使用しつづけ、腟カンジダ症になる人もいます。出産後はつい、子ども中心の生活になりがちですが、ママ自身の体をいたわりケアすることも忘れないでくださいね」
取材協力/八田真理子先生(聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田 院長)
1990年聖マリアンナ医科大学卒業。順天堂大学、千葉大学、松戸市立病院産婦人科勤務を経て、1998年より現職。思春期の女の子への性教育から、成人女性の不妊治療、更年期治療まで、幅広い年代の女性の幸せを願い、治療にあたっている。
《参考文献》『産婦人科医が教える オトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』八田真理子著(アスコム)
取材・文/川西雅子