高級パンの価格設定は、素材にこだわっているのはもちろん、製法にもこだわっているからこそのものだということは、なんとなく想像がつきます。そこで「こだわり製法」というのは、具体的には何が違うのか知りたい!納得できたら、たとえ2斤で1000円でも安いと感じるほどかもしれない!ということで、今回の記事では、高級食パン専門店 嵜本のこだわり製法についてインタビューしました。

こだわり製法「湯種」

一般的な食パンは、材料のすべてを一度に混ぜ合わせ発酵から焼き上げまで行う「ストレート製法」で製造されることが多くあります。この製法は作業工程が少なく、発酵に必要な時間も短いため、短時間でパンができあがる生産効率のいい方法です。

 

また、最初にすべての材料を混ぜて生地にするため、誰が作っても比較的安定した焼き上がりとなり、量産にも適しています。

 

いっぽう、高級食パン専門店 嵜本の場合、生地を傷つけないように低速でじっくり混ぜ込み、通常の1.5倍の時間をかけゆっくりと発酵させることで、香り高くしっとりとした食感を実現しているそう。

 

低速でじっくりと混ぜ込んでいく
通常の1.5倍の時間をかけ、ゆっくりと発酵させる

さらにおいしさのヒミツとなるのが湯種製法。湯種とは小麦粉に湯をかけてこね、ひと晩寝かせた生地のこと。一般的な食パンには、これが使われていないものが多くあるそうです。

 

こちらが湯種。これが食パンをおいしくするのです

こうすると小麦粉のでんぷん質が糊のような状態になり(アルファ化)、これを生地に混ぜ込むことで、食パンのもちっとした食感と、さっくりとした歯切れのよさを実現させるのです。

こだわり製法「中種」

さらに、嵜本の高級食パンでは低音長時間発酵の「中種」を用いた製法で作られる食パンもあります。

 

中種は、小麦粉の一部、水、パン酵母などをこねて発酵させたもの。嵜本では通常の食パンの5倍以上と言われる22時間もかけ、じっくりと低温で発酵させています。そのあとで、他の材料と合わせてパン生地を作ることで、スイーツのようなしっとりとしたやわらかいパンになるのです。

 

嵜本の食パンはあまりにもやわらかいため、扱うのが難しい。だからこそ、鍛錬した職人の手が必要になるのです。

 

先述の湯種だけでも十分においしい食パンを作ることができるため、これはパン作りに必ずしも必要な工程というわけではありません。なので、一般的な食パンにこの製法は使われてないことがほとんどです。

 

量産も難しいうえ、人件費もかかる製法ですが、時間と手間も、そして経費もかけてじっくり製造に取り組むことで、焼きたてだけでなく、翌日、翌々日以降も、もっちりしっとりとした繊細なおいしさが続くそうです。