学校が新年度を迎える度に、保護者たちの間で何かと話題にのぼる「PTA」。全員参加が前提となっている組織ですが、近年はその前提や活動方法に対する考え方が多様化しつつあります。

 

PTA会長や役員は今後PTA活動を牽引するに当たって、どのような意識をもっておくとよいのでしょうか。

 

日本各地のPTAを取材し、豊富な知見をもつライターの大塚玲子さんに、PTAの現状や改善点、理想的な姿などをLINE WORKS編集部が伺いました。

 

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PTAの在り方に疑問を呈し、取材を続けた11年間

—— はじめに、PTA活動に関する大塚さんの経験について教えてください。

 

大塚さん:

私はPTAの前に、保育園で卒園関連の係を引き受けました。これが意外と大変で、やらない人に腹が立ってしまった。本当はやりたくないのに「やらねば」と思ってやったからでしょう。「やりたくないことを義務感でやることは、もうやめよう」と、心に誓ったものです。

 

しかしその後に進学した小学校のPTAは、全員が強制参加。初めてのクラス役員決めのときは、疑問だらけでした。その後、委員や係をやってみたら思ったより随分ラクでしたが、それでも「何かがおかしい。そもそもなぜ強制参加なんだろう」という思いがありました。

—— 「PTAを変えたい」と強く感じるようになったきっかけはありますか?

 

大塚さん:

NHKの情報番組『あさイチ』で、改革に成功した小学校のPTAの様子を目にしたことです。そのPTAでは、保護者全員が半ば強制的に参加する従来の仕組みから、希望する保護者のみが参加する仕組みに変更しており、「こんな風にやることもできるんだ!」と大きな衝撃を受けました。

 

何より、保護者が楽しそうに活動していたのが深く印象に残りました。「やりたい人がやる形」にすると、こんなにも雰囲気が変わるんだ、という驚きです。

 

PTAという団体には、全員参加の慣習だけでなく、母親の無償労働に頼る社会の在り方や、学校に与えられる校費の不足など、さまざまな課題が絡んでいます。簡単に解決できないからこそ掘り下げ甲斐があると感じ、PTAの取材を続けています。

大塚さんが考える「PTAの適正化」

—— 大塚さんはご自身の体験や取材の中で、日本のPTAのどのような点に問題があると感じましたか?

 

大塚さん:

自動的に入会させられ、活動を強制される点が最大の問題だと思います。他の一般的な団体であれば、本人の意思に関係なく自動的に入会なんてことは起こりません。「気付いたら水泳教室に入っていた」なんてこと、普通では起こり得ないですよね。

 

ですが今も多くのPTAでは自動入会が常態化し、退会の手続きも明示されていません。PTAはその学校に通う全ての子どものための団体なのに、親がPTAを退会すると子どもに不利益が及ぶような残念なケースもあります。たとえば「PTAの非会員家庭の子どもは登校班に入れない」などというものです。

 

それから、それぞれの家庭状況の違いを考慮せずに「6年間のあいだに全員が一度は必ず委員をやってください」などとするルールもよくあって、これもおかしいですよね。無理に役員を押し付けられて泣いてしまう保護者が出るのも、そう珍しいことではありません。

—— PTAの強制加入や役員決め問題を解決するために、PTAはどう変わるべきですか?

 

大塚さん:

もっとも根本的な解決策は、任意加入を前提とした仕組みを整えて、「参加したい人だけが参加する組織」に変えることだと思います。会員の意思を尊重し、参加したくない人は無理に参加させない、ということです。

 

PTA活動は、楽しめる側面もあります。たとえば、保護者同士のネットワークが広がる。育児や地元に関する情報が入りやすくなる。学校におおっぴらに出入りできるので、学校や子どもの様子を掴みやすくなる、などなど。

 

私もPTAで楽しかった経験は結構あります。ただし、楽しいと思うかどうかは人によりますし、そのときの状況にもよるので、「みんなやるべきだ」とは決して思いません。

 

問題はPTA活動そのものより、活動への参加を強制する現在の「仕組み」でしょう。

 

「去年通りに活動を実施するためには○○人が必要だ」といって会員を動員するのではなく、「声をかけて集まった人数で、できることをしよう」というふうに発想を転換すれば、みんな気持ちよく参加できるようになるはずです。

 

もしもPTAであらゆる強制を廃止して、個人の意思を尊重する組織に作り直すことができたら、いろんな使い方ができると思います。これは「改革」というより「適正化」と呼ぶほうが正確かもしれません。ある意味「組織として通常の姿」に戻すイメージです。

 

—— 大塚さんはどのようなPTAが理想的だと考えていますか?

 

大塚さん:

親(Parent)だけでなく先生(Teacher)も入っている組織ということで考えると、「保護者と先生の情報共有、意見交換の場」を提供するのが本来の役割ではないかと思います。それさえできていれば、あとは何でもいいのではないかなと。

 

あくまで個人的な考えですが、「前年通り」に縛られなくなれたらすごくいいですね。年度ごとにやりたい活動をやる。会費は0円で、必要な資金はその都度調達する。そんなフレキシブルな形にできたら、喜ぶ人は多いだろうなと思います。

PTAを適正化するための一歩は、どんなに小さくてもよい

—— PTAを任意参加の組織にするために、まずは何をすればよいのでしょうか?

 

大塚さん:

改革がうまくいく条件として最も大きいのは、役員内で合意を得られることと、校長先生が同意してくれること、この2つだと思います。なかなか、この条件がそろわないことも多いのですけれど。

 

以前取材したあるPTA会長は、初めての役員会で「私はPTAをこんなふうに変えたい」と本音を話したところ、役員も校長先生もたまたま賛同する人ばかりで、あっという間に適正化が進んだそうです。珍しいケースだとは思いますが、まずは「変えたい」と意思表明することが大事でしょう。

 

—— PTAが変わるためには、保護者や学校側の意識も変わる必要があるのでしょうか?

 

大塚さん:

保護者も先生たちも「家庭の状況はそれぞれ違う」と認識することが必須だと思います。現在のPTAの問題の根底には「どの家庭も基本みんな同じ」という思い込みがあるように感じています。

 

家庭によって、保護者の人数や働き方等々、いろんな条件が異なります。たとえば「専業主婦ならPTA役員ができるのでは」と思われがちですが、共働きを選ばないのには何かしらパーソナルな理由が存在するはずです。そういった「個々の違い」を受け入れるところから、PTAの適正化が始まるのではないでしょうか。

—— 今すぐにPTAの適正化に取り組むのは難しいと感じる場合、まず簡単に取り組めることはありますか?

 

大塚さん:

まずは、身近なところから着手してみるといいかもしれません。比較的取り組みやすいのが、ITツールの導入による業務効率化です。

 

デジタルツールを導入するだけで、役員や委員、係同士で効率的に話し合えるようになったという話はよく耳にします。顔を合わせたほうがいい場合もあるでしょうが、文字のやりとりで済んでしまうことも、意外とたくさんあるんですね。

 

私が取材してきたなかでも、コロナ禍をきっかけにデジタルツールを取り入れたというPTAはたくさんありました。オンラインでアンケートを実施したり、チャットで意見交換をしたりできる、多機能型のツールもあります(※)

(※注)例えば会議ツールのzoomやLINE WORKSなどの活用が広がっている。LINE WORKSは、LINE同様の「トーク」に加え、情報や予定の周知に最適な「掲示板」「カレンダー」、資料等を保存・閲覧できる「フォルダ」「アンケート」などが無料で利用できるツール。

PTA運営に役立つヒントが満載「PTA改革 学びウィーク」を開催!

—— この1年PTAを運営する会長や役員に向けて、メッセージをお願いします。

 

大塚さん:

今のPTAの在り方に疑問を抱いていても、一気に変えることは難しいかもしれません。しかし、デジタルツールを導入することや「強制加入はおかしいのでは?」といった声を上げることは、今日からでも取り組めると思います。

 

これまでのやり方を変えようとすると、仲間内で意見が衝突することもあるでしょう。どうか、あんまり無理はしないでください。まずは簡単に取り組めるところから始めてみてはいかがでしょうか。

 

5月23日からオンラインで開催される「PTA改革 学びウィーク」には、私も登壇してさらに詳しくお話する予定です。ぜひ参加してみてくださいね。

【Information】「PTA改革 学びウィーク」とは?

この春から初めてPTAの役員になったり、新しいメンバーを迎えたりする中で、「もっとこうしたい!」「こうなった方が便利だな」とお気づきのことがあるのではないでしょうか。

 

5月23日より、LINE WORKSが「PTA改革 学びウィーク」を開催。PTA運営をもっと前向きに、もっとラクに変えていくためのヒントをお届けします。

 

さらに、PTA活動での活用が広がっているLINE WORKSの活用事例や、スムーズな始め方などの解説も!皆さんのPTA活動にぜひお役立てください。

 

日時:2022年5月23日(月)~5月29日(日) ご好評につき、6月5日(日)まで延長!
   ※無料。申込必要。期間中、いつでもご覧いただけるオンデマンド配信です。
場所:オンライン(YouTube)
   ※お申し込みいただいた方に、視聴用のURLをお送りします。

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PROFILE 大塚玲子さん

おおつかれいこ。著書『さよなら、理不尽PTA!』ほか。「PTA(保護者と学校)」と「いろんな形の家族」を主なテーマとして取材・執筆を行うライター、ジャーナリスト。

※これはLINE WORKS編集部が作成した記事の転載です。