リーズナブルで高品質が売りのシャトレーゼが高級路線を狙って立ち上げたブランド、「YATSUDOKI(やつどき)」の出店が加速しています。2019年に東京・銀座での出店を皮切りに、現在27店舗を展開し、コロナ禍でも年間の売上が2割伸びているというYATSUDOKI。その戦略や人気商品について国内店舗開発部の荻野吉隆さんと、企画開発統括部の白須暁さんにお話を伺いました。
気になる店舗戦略は
──コロナ禍の少し前の、2019年9月から展開を始めたYATSUDOKIの業績が好調だと伺っています。
荻野さん:
都内ですと、阿佐ヶ谷、浦和、経堂など駅から近い場所にある店舗やハイエリアの住宅地の売上が好調です。駅構内などに同業他社の高級店がございますが、弊社のブランドは負けていないなと実感しています。
コロナ禍で、各企業からの問い合わせも殺到しています。業績が落ち込んだフランチャイズや多店舗展開で苦戦している方などから、ブランドの乗り換えなどの相談です。
白須さん:
コロナ禍で在宅率が上がったことを受けて、私共はデイリープレミアムと呼んでいますが、日常の中でもちょっと贅沢なものをという思いでお越しいただいている方が多いです。
──「手の届く高級感」をコンセプトに展開するYATSUDOKIは、シャトレーゼと出店場所にどんな違いがありますか。
荻野さん:
シャトレーゼはロードサイドを中心に、郊外型の店舗を展開しています。YATSUDOKIは都心部に入る手段としてのブランドで、銀座7丁目を皮切りにスタートしました。
その後、商業地やオフィス、駅周辺の住宅地など多数の場所に布石を置かせていただきまして、現在は都内を中心に全国27店舗を展開しています。
本来は1号店も、銀座の中央通りなどブランドショップや有名店が立ち並ぶ一等地に出店したいという思いはありましたが、弊社は良いものをリーズナブルに届けるという理念がありますので、商品価格に影響が出るほど高額な家賃には対応できません。
また、百貨店からも出店のオファーがありますが、そうなると売りマージンがかかります。提供できる商品が高くなってしまうのであれば、ハイエリアでありながらもその少し周辺に出店する方を選ぶようにし店舗価格を抑えています。いずれは百貨店にも出せるような形で考えていきたいとは思っています。
会社の制服を着て街角に 地道な事前調査
──出店をするにあたって具体的にどんなことを調査しているのでしょうか。
荻野さん:
現段階では通行量が多いところを狙っています。また、徒歩なのか車なのかなど、買い物の移動手段なども仮説を立てています。弊社には競合はいないと思っておりますが、同業他社の一流ブランドも研究し高級店、洋菓子店、和菓子店なども調査します。
また、住んでいらっしゃる方へのヒアリングは、実際に部員が会社の制服を着て街角に立って行い、地元の主婦層や男性などに幅広くお話を伺っています。実際、シャトレーゼはまだまだ都内の認知度は低いのが現状です。「名前は聞いたことがあるが郊外にしかないイメージ」という方が多いです。聞き込みを通じてこの場所で通用するかどうかを見極めています。
──今はインターネットなどでアンケートを取ることもできますが、実際に足を運んで調べるのですね。
荻野さん:
部員が5感で感じる街の雰囲気もあります。共働きで昼間いない方もいらっしゃいますし、在宅率やどういった手段で買い物をされているかなども含め、実際にその土地を歩いて調べることを大切にしています。
──都内では、恵比寿に2店舗あるのはなぜでしょうか。
荻野さん:
恵比寿は駅の西口と東口で違った要素がありまして、西口のオフィス街と東口の広尾方面の住宅地でどう違うのか効果を出してみようと2店舗出店しました。
これは直営ならではできることで、どのような形でお客さんが入るか分析しているところです。この情報を落とし込んで、どうフランチャイズ展開していくかが今後の課題となります。
YATSUDOKIの人気No.1商品は
──突然ですが、お2人の好きなYATSUDOKIの商品はなんですか。
荻野さん:
うちの家族は全員、「八ヶ岳明野町契約農場うみたて卵のプリン」が大好きです。卵の濃厚さが好きで毎週買っています。
白須さん:
私は、「YATSUDOKI発酵バターソフト」が好きです。ソフトクリームと焼きたてのお菓子をセットにすると満足感がありとてもリッチな気分にさせてくれます。
──ネーミングからもこだわりが見えてきます。商品開発のコンセプトを教えてください。
白須さん:
シャトレーゼよりも上質感、高級感にこだわっています。有名店が多い都心で、シャトレーゼではできなかった希少価値のある素材や製法を実現しています。
シャトレーゼはロットの大きいものを扱うのでなかなか厳しいのですが、YATSUDOKIの店舗数であれば賄うことができる貴重な食材を使っています。
店内加工もシャトレーゼより多くして、できたて作りたてにこだわっています。シャトレーゼでしたいことをより尖らせたというのがYATSUDOKIのコンセプトです。
──どのような素材を使っているのでしょうか。
白須さん:
卵や牛乳、フルーツなどは、弊社のある山梨県の八ヶ岳山麓の契約農場で生産されたものです。最近、展開を始めた和菓子にも、山梨県産のお米や長野県産の鞍掛豆を使っています。また、鮮度にもこだわっていまして、できるだけ新鮮なうちに使っています。
──特に開発に力を入れた商品はなんですか。
白須さん:
「YATSUDOKIプレミアムアップルパイ」などの焼きたて商品です。人気が出まして、こちらはシャトレーゼでも販売をしています。そのほか、「一粒栗のマロンパイ」、「八ヶ岳明野町契約農場うみたて卵のパイカスタードシュー」などの焼き菓子も半年〜1年かけて開発しました。
実は店舗の立地によって、店内に設置できる釜が違うんです。ガスなのか、電気なのか、それに応じて焼き加減の調整や技術指導が変わってきます。店内加工が多いので開発に時間がかかりますが、その甲斐あって焼きたて商品が最も人気となっています。
シャトレーゼはおよそ400種類ですが、YASTUDOKIでは、150〜200種類ほど商品があり、1か月半から2か月に1回は商品を更新し、年間では60〜80点を入れ替えています。
──素材や製法にこだわりながらも価格を抑えられているのはなぜでしょうか。
白須さん:
シャトレーゼの調達ルートや物流を使っているのが大きな点です。シャトレーゼも素材にこだわる部分は同じですが、店舗数が多いので量を確保する部分で仕入れが難しい素材があります。
YATSUDOKIは生産者様と直接取引し、自社で素材の1次加工、2次加工もすることで価格を抑えています。それでも上品質なものにこだわっていますので、例えばケーキで比較しますと平均価格はシャトレーゼよりも100〜120円ほど上げていますが、シャトレーゼがなければこの価格と品質は実現できないと思っています。
──これから手がけていきたいことを教えてください。
白須さん:
安価であることがゆえにシャトレーゼの商品は手土産や贈答品として持っていきにくいという声を頂戴します。アフターコロナも見据えた上で、外に出てくる機会が増えることを想定し、少しフォーマルな贈答用にも現在着手しております。ハイセンスな手土産、贈答品としてもYATSUDOKIの地位を築いていけたらと思っています。
取材・文/内橋明日香 写真提供/シャトレーゼ