社会人になっても、母になっても宝塚ファン!20年近く宝塚の推し活をしている会社員のAussie mumさん(43歳)。シングルマザーとして16歳の長女と13歳の次女を育てるなか、どうしてそんなにハマったの?「推し」のいる人の人生を覗いてみたいと思います。
母親に連れられて観劇するうちにハマってしまった
もともとは、Aussie mumさんの母親が宝塚観劇のファン。2009〜2015年まで星組トップスターだった柚希礼音さんの大ファンだったそうです。Aussie mumさんも一緒に観劇するうちに、華やかな宝塚の世界に魅了されていきました。
「宝塚は、すべてが“美しい”のひと言です。まるで少女漫画から抜け出してきたような男役、可愛らしい娘役がつくり出す世界は、本当にきらびやか。観劇している間は現実を忘れ、舞台に没頭できます」
最初は、母親とともに柚希礼音さんの私設ファンクラブに入会していたAussie mumさんですが、次第に気になる存在が…。
「最初はやっぱり、舞台の中央にいるトップスターに注目するんですが、観劇の機会が増えるうちに、端のほうにいる若手も気になってくるんです。
私が推している礼真琴さんは、宝塚に95期生として首席入団した人。若手のなかでも早い段階から目立っていました」
最初は、“あの子上手だな、気になるな”程度の印象だったそうですが、気づくと観劇のたびに、オペラグラスで礼さんを探し、追いかけるように。
「キラキラとした宝塚の世界でも、特別輝いて見えました。可愛らしいお顔なのに、声は低音というギャップが魅力!ダンスもキレッキレのうえに、歌もお芝居も抜群に上手で、いつの間にか夢中になっていました」
宝塚歌劇団公式ではないものの、タカラジェンヌには、それぞれ私設ファンクラブがあります。宝塚ファンの間のルールでは、ファンクラブを掛け持ちするのは禁止されています。
そのため、最初に入会していた柚希礼音さんが宝塚を退団するのと同時に、礼真琴さんのファンクラブへ。本格的な推し活を始めるようになりました。
じゃんけんに勝って“推し”と2人で話せる瞬間が!
推し活の中心は公演の観劇ですが、宝塚歌劇団はスターとファンの距離が近いことが特徴です。
タカラジェンヌの私設ファンクラブに入会すると、タカラジェンヌの楽屋入りや帰宅を待ち、直接ファンレターやプレゼントを渡せる“入り待ち・出待ち”ができます。
さらに“お茶会”と呼ばれる、タカラジェンヌとファンの交流会などにも参加できます。お茶会は、それぞれのタカラジェンヌによって規模や内容が多少異なります。
ファンクラブの規模が小さい場合は、喫茶店などで本人と一緒に話をするものも。ファンクラブの会員数が多いと、ホテルの宴会場などの広い場所を貸し切り、大々的に開催されます。
いずれにしろ、タカラジェンヌ本人から直接、公演への思いやプライベートな話を聞けます。ゲームや握手会が開催される場合も。
「今はコロナでそれらの交流もなくなってしまいました。でも、以前はごひいきのタカラジェンヌと接する機会が多くて、楽しかったです」
忘れられない嬉しい思い出もあります。礼さんがトップスターになる前のことです。
入り待ちの際に、ファンクラブ会員の中でじゃんけんをして勝ったひとりが礼さんの隣に並び、楽屋口まで一緒に行けるシステムがありました。
Aussie mumさんは幸運なことに、1度だけじゃんけんに勝って、礼さんとふたりきりで歩きながら話せたことがあるそうです。
「緊張してあまり話せませんでしたが、ちょうど転職前のときで、思いきって“今度転職するんです。応援してくれませんか?”と、お願いしました。
そうしたらまっすぐ目を見て、“頑張ってください”と答えてくれたんです。めちゃくちゃかっこよかった。今も転職先で頑張れているのは、あのエールのおかげです」
ひたすら好きなことを共有できるヅカ友の存在
宝塚を通じて知り合った友人は、好きなものや魅力的だった舞台のシーンについて、思うぞんぶん語り合える仲。
推し活を通じて、ふだん出会わないような仲間にも恵まれ、入出待ちで出会った人や観劇を重ねるうちに多くの人と仲良くなったそうです。
「“やっぱり礼さんはカッコいいよねー”、 “あのデュエットダンス最高だった!”といった話をキャッキャとできるのがすごく楽しいです。
ふだんの人間関係だと仕事での関わりや母親としての立場があって、気をつかう部分があります。
でも、ヅカ友とはプライベートを詮索することなく、ひたすら好きなことを共有できます」
推しの情報は、宝塚の専門誌や宝塚歌劇専門チャンネル『タカラヅカ・スカイステージ』から得ています。
「私はシングルマザーなので、仕事も子育ても全部ひとりでこなし、目まぐるしい毎日を送っています。気持ちにも時間にも余裕がありません。
でも、宝塚を好きになったおかげで息抜きができ、精神的に余裕が持てるようになりました。夢中になれるものがあるっていいなと思います」
文/齋田多恵 写真提供/Aussie mumさん
※上記は、Aussie mumさん個人の経験談・感想です。