文字のバランスはちょっとしたガイドを
ご相談者様は「森」という字のバランスを気にされていますが、お子さんは集中して「ちゃんと書かなければ」と思うから一部のパーツが大きくなってしまうのかもしれません。
「小さい子あるある」です。幼稚園児がママやパパの顔を描くと目や鼻が異様に大きくなったり、ひげあとで顔が青々としてしまうなど、時にバケモノのようになるのは、見えたものを全部書こうとするから。それが文字でも起きていると考えてください。
その場合は、ハードルを細分化してあげましょう。「森」であれば、木を1つの塊と考えて、3つの丸を書いて「この丸の中に『木』を書いてごらん」とサポートしてあげるとよいでしょう。そんなちょっとしたガイドをしてあげれば大丈夫なので、つきっきりになる必要はありません。
ちなみに、文字の一部のパーツが大きくなりがちな子は、深く集中したり物事を突き詰めたりすることができる子です。昆虫を観察してとことん調べるなど、学びの深掘りが得意な傾向があるので、ぜひそういったよいところにも注目して伸ばしてあげてください。
お子さんの手を持ちながら、あるいは親御さんの手にお子さんの手を載せながら、「一緒に書こうね」と言って字を書いてあげるのもいいと思います。上手に書けた手の動きを体感させてあげましょう。
そのほか、心の問題や発達特性など、字がうまく書けない要因はさまざまですので、私がYouTubeで配信している動画も参考になさってください。
日本では、字が汚いと「育ちが悪い」などと責められる対象になりがちですが、文字が書けなくても人の価値は損なわれません。大切なのは責めることではなく、支援や対話。うまく書きたいけど書けない子の苦しみを理解し、その子の資質や能力が伸びるお手伝いをしていくことが重要です。そんなふうに、多様性を認めていける社会になってほしいなと思っています。
PROFILE 小川大介さん
教育家・見守る子育て研究所(R)所長。京大法卒。30年の中学受験指導と6000回の面談で培った洞察力と的確な助言により、幼児低学年からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。メディア出演・著書多数。Youtubeチャンネル「見守る子育て研究所」。
取材・構成/佐藤ちひろ