「子どもの前でお金の話をすると悪い影響があるのでは?」。そう考えている人は少なくないでしょう。自身も6児の父である家計再生コンサルタントの横山光昭さんは、言い方次第だと話します。「お金がない」ことも、包み隠さず話せる方法を聞きました。

家族全員の前で「収入ダウン」を話す

「子どもの前でしてはいけないお金の話はない。むしろ隠さずに話したほうがいい」。私はそう考えています。

 

これは私自身が実際に子どもたちにお金の話をしたことで得た結論です。

 

横山家では、毎月、給料が入った週の金曜日に「家族マネー会議」を開き、その月の収入や支出を詳しく確認し、翌月の支出について話し合っています。

 

よく驚かれるのが、この会議には、夫婦はもちろん、社会人から小学生まで6人の子どもたちも全員参加することです。収入ダウンのような子どもに聞かれたくない内容も、包み隠さずストレートに話しています。

 

なぜ話しているのかといえば、家計の話は、子どもたちの「金銭教育」をするうえで絶好の教材になるからです。

 

どんな収支があるのかが具体的にわかると、生活にはさまざまなお金がかかることや、何でも買っていたらお金をなくなることを理解できます。

 

すると、ムダづかいをしなくなりますし、計画的にお金を使う大切さも学べるのです。

買いたいものがあれば、家族にプレゼンする

ちなみに、横山家では、誰かが何か買いたいものがあるときには、家族マネー会議の場でプレゼンをしてもらいます。

 

たとえば、塾に行きたいなら、その必要性を塾通いを希望する子どもが熱弁するのです。

 

それに対して、「高すぎない?」「(これまでの習い事の経験から)本当に続くの?」と親や兄弟姉妹からツッコミが入り、皆が納得いく回答ができなければ、却下されます。

 

簡単にお金を使えない仕組みにすることで、お金の使い道を真剣に考えるようになります。

 

このマネー会議は長女が小学生の頃から実施しています。その結果、子どもたちはお金を大切に使うように育ったので、間違いではなかったと思っています。

「お金がない」も前向きになれる言い方がある

とはいえ、何も考えずに、子どもにお金のことを話して良いかというとそうではありません。言い方を間違えると、子どもが必要以上にショックを受け、不安を抱きます。

 

それを防ぐには、自分の家の窮状を急に伝えるのだけは避けること。何も知らない子どもに、いきなり「うちはお金がない」「貯金がつきた」などと言えば、子どもはショックを受けます。

 

家計が厳しいなら、状況を少しずつ伝えていき、お金の話に慣れてもらったうえで話しましょう。その意味でも、定期的に家族マネー会議を開くことはおすすめです。

 

ネガティブな言い方をするのも良くありません。「貯金がないので、お先まっくら」「これを買いたいけど、家計が苦しいからムリ」と話せば、子どもに過剰な心配をかけてしまいます。

 

そこでおすすめしたいのが、ポジティブな言い換えをすること。たとえば、「これを買いたいけど、家計が苦しいからムリ」ではなく、「高くていまは買えないけれど、安く買える方法がないか一緒に考えよう」と、前向きな言い方をするのです。

 

家計が苦しいのは同じですが、子どもに与える印象は180度異なります。

 

ちょっとした気遣いをすれば、子どもに余計な心配をかけることなく家計の現状を伝えられ、金銭教育にもつながるはずです。

監修/横山光昭 取材・構成/杉山直隆 イラスト/村林タカノブ