食品パッケージなどに付いているベルマーク
ベルマークの謎について、公益財団法人ベルマーク教育助成財団の斎藤健一・広報部長にお話を伺いました。「ベルマークは善意の積み上げ、正体は愛です」と話す斎藤さんの真意とは。
始まりは戦後のへき地学校支援から
── 小学生のころ、ベルマークをよく集めていた記憶があります。そもそも、いつ始まったのでしょうか。
斎藤さん:
ベルマークの始まりは1957年、私が生まれた年です(笑)。
第二次世界大戦から復興するなかで、山間部など、へき地にある学校の先生が「理科の実験をしたくても割れたフラスコしかない」「鉄棒を教えようとしても、支える木が腐っていてできない」と悩んだことが始まりです。そこで、当時、朝日新聞社に「なんとかならないか」と相談したところ、朝日新聞社がいろんな方の知恵をかりて、ベルマークの仕組みを作り、1960年に財団が発足しました。
── 歴史があるんですね。そもそもベルマークの仕組みというのは、どうなっているのでしょうか。
斎藤さん:
まず、学校や公民館など参加団体に登録してもらっています。そのため個人の収益にはできません。食品メーカーなど協賛会社が約50社あり、マヨネーズやガム、石鹸など協賛会社の商品にベルマークが付いています。
購入した後、各家庭でベルマークを切り取り、学校などで集めます。それをPTAなどが協力して企業のマークごとに仕分けし、財団に送ります。財団ではそれをチェックして協賛会社に数字を報告。すると、1点につき1円の計算で金額が振り込まれ、財団は学校ごとの預金として管理します。そこから、学校は協力会社のパンフレットを見て必要な商品を購入できます。
さらに、協力会社から購入した総額の1割が、自動的に財団に支援金として戻る仕組みになっています。学校が1万円の商品を買った場合、同時に1000円の寄付が財団に入る仕組みです。この支援金がベルマークの「肝」です。
ベルマークは年間数億点集まり、支援金は年間数千万円にのぼります。活動が始まってから60年以上たっていて、財団が実施してきた支援の総額は企業からの寄付を含めて、総額50億円にも上ります。
── すごい仕組みですね。
最も高いベルマークは「100点」その商品とは?
── 協賛会社のすべての商品にベルマークがついているのですか。
斎藤さん:
商品は一般的に100円で1点が目安で、どの商品に付けるかは、協賛会社の判断です。保険の証券には100点が付いているものもあります。捨てるともったいないです。
東日本大震災の被災地支援は5億円以上
── これまでの支援金は総額で約50億円というお話でしたが、そのお金はどのように使われるのでしょうか。
斎藤さん:
主にへき地にある学校の支援や被災地の学校支援にあてています。
へき地の学校支援は、毎年100校ほど選んで行います。子供達が使うボールや一輪車、逆上がり補助機や簡易鉄棒、デジタルカメラや探検ボードなどが多いです。最近はコロナ関係で消毒用品も増えました。
被災地支援では、例えば東日本大震災であれば、発生直後に学用品を送ったのをはじめ、現在も岩手、宮城、福島の小中学校に支援は続けていますし、今後も続けていきます。
何に困っているのかは現地が一番わかっているので、各地の支援額を毎年伝えて、現地の校長会で毎年、支援校を決めてもらいます。
今年は被災3県で120校支援しました。地震発生から今までの東日本大震災関係の支援金は5億円を超えており、これまでにのべ2146校を支援しています。
通常は必要な備品を買って送るのですが、東日本大震災で特徴的だったのはバス代として現金でもらいたいという声です。「子供たちを部活で他校と交流させたり、校外で社会科見学を実施したい」という理由ですが、そのように対応するケースも多々あります。
累計点数で1800万円分のベルマークを集めた学校も
── とても役立っているんですね。あの小さい点数から驚きです。毎年多い学校ではどれぐらいベルマークを集めてくるんでしょうか。
斎藤さん:
毎年トップ校は90万点、100万点ほど集めてきます。通常は児童・生徒数が多いところが点数も多くなりますね。
累計点数のトップは小学校では、1500万点集めています。中学で累計トップは1800万点、つまり、ベルマークでこれまでに1800万円集めた計算になります。その学校は、子供たち主導でベルマークを集め、全校生徒で仕分けをしています。地域からの寄付も多く、学校行事のようになっています。これまでに、ピアノの購入などに使っています。
── そんなにメリットがあるんですか!
斎藤さん:
ベルマーク預金で何を買うかは、学校で自由に決めることができます。子供たちが欲しいものを購入できるのがメリットだと思います。
ベルマーク集めは、手間だとよく言われますし、実際、手間だと思います。でも、子供が扱っても現金ではないので、悪さはできません。保護者と子供が協力してできるよさもあります。また、学校で取り組めばまさにちりも積もれば山となり、結構な金額にもなります。
子供が学校を卒業すると、ベルマークへの関心が薄れますが、それはもったいない。集めて、財団に送っていただいても支援に回せます。それは寄贈マークと呼んでいて、財団に送られてきたら、全額、支援金になります。これらのベルマークの仕分けはボランティアの方々が担当してくれています。
コロナ以降、寄贈マークが増えている
── ボランティアの方は集まるのですか。
斎藤さん:
東日本大震災の時、大量にベルマークを使って欲しいと一般の方から送られてきました。その時、仕分けの作業をするボランティアを募集したら、こちらも多数応募してくださり、今も多くの方が仕分けボランティアをしてくださっています。
実は、コロナ禍以降、寄贈マークは増えています。外出できないなか、自宅でできるボランティアをしたいと、ベルマークを集めて、送ってくださる方が増えているんです。
2021年の1年間で、寄贈マークは、5600件ほど送られてきました。企業で送ってくださるところもあれば、個人で送ってくださる方も。前年比1.5倍近くの伸びです。
ベルマークって善意の積み上げだと思います。子供たちや家庭、地域が苦労して集めて、企業が協賛・協力して、そして、PTAやボランティアの方たちが手間をかけて仕分けして、被災地やへき地の学校支援に繋がっている。善意の積み上げでベルマークはできているんです。
── 愛、ですね。
斎藤さん:
そうですね。愛だと思います。