NHKの幼児向け番組「いないいないばあっ!」に2代目お姉さんのりなちゃんとして出演し、現在は子育てをしながらヨガや幼児教室の講師として活動している齊藤里奈さん。小役時代のお話から、20代前半で始めた仕事について伺いました。
3歳から小学6年生まで続けた子役の活動
──小さい子どもたちに人気の着ぐるみのキャラクター、ワンワンなどと一緒に歌やダンスをする番組、「いないいないばあっ!」は、子どもが最初に見始めた番組だという声も多く聞かれます。齊藤さんは、その2代目お姉さんとして活動されていたそうですね。番組に出演することになった経緯を教えてください。
齊藤さん:
小学2年生の終わり頃に「いないいないばあっ!」のオーディションを受けました。出演させていただいたのは3年生の4月から6年生までの4年間。番組関連のイベントで地方に行くなど色々な経験をさせてもらいました。でもこれより前に、3歳からCMやドラマ、映画などの子役として活動していました。
──小さい頃から子役をされていたんですね。どなたかご家族が応募したのですか。
齊藤さん:
祖母がたまたま新聞の広告で子役の募集があるのを見て、応募したのがきっかけでした。何か少しでも思い出になればいいなと思ったようです。
家族からは、いつでも辞めていいよと言われていたんですけど、自分ではやると決めていたみたいで、子どもながらに「これは自分がすることで、代わりがいないんだ」と理解していたのだと思います。お仕事とは当時思っていなかったのですが、楽しんで撮影に参加していました。
──「いないいないばあっ!」の出演後は芸能活動をお辞めになったそうですね。
齊藤さん:
番組の出演が終わるころは、友達といるのが楽しくなってきて、目立つのがちょっと恥ずかしいと思い始めた時期でした。ちょうど中学に入るタイミングだったのもあって、学業に専念するため芸能界を卒業しました。
元々幼少期は人見知りで、学校の日直とかも苦手だったんです。
番組卒業後、子役からステップアップをするタイミングで演技や歌など自分自身で自信を持てることがなく、この道でやっていこうというはっきりとした目標が見えずに一旦芸能活動を辞める決断をしました。
──小さい頃からテレビで歌って、才能に溢れているように見えますが、そんな悩みがあったのですね。芸能活動を急に辞めて、未練はありませんでしたか。
齊藤さん:
物心がつく前、3歳から活動をしていたので心の中にぽっかり穴が開いたような感覚はしばらくありました。
他の習い事もしていましたが、ここまで長く続けてきたことは他になかったので、これから何を頑張ればいいのかなという気持ちもありました。
20代前半で母になりヨガ講師の道へ
──現在は、ヨガや幼児教室の講師をされているそうですが、きっかけはなんでしたか。
齊藤さん:
21歳で長男を出産後、若くして母になった当時、子育てを頑張ることと同時に自分自身がもっと成長し一生懸命になれる仕事に就こうと考えました。そうすることで息子にとって誇れるようなお母さんになりたいという想いがありました。
学生時代、スポーツクラブのフロントでアルバイトをしていた時にヨガに出会い、当時レッスンを担当されていた先生がとっても素敵な女性だったことが心に残っていて、長男が生後7か月のときにホットヨガのスタジオで働き始め、フロント業務と研修を受けながらヨガの勉強をしました。そこから講師の第一歩が始まりました。
──お子さんが生後7か月だとまだまだ手がかかる時期ですよね。
齊藤さん:
最初はフルタイムではなく週4日から働きました。あとは、自分で勉強する時間も取らなくてはならなかったので20代前半は子育てと仕事の両立に、葛藤しながらでしたね。
SOSをすぐに人に出せるタイプではなかったので、悩みがあっても家族や友達にすぐ話すということもできなくて。自分ではそんなつもりはなくてもストレスを溜めてしまっていたのを、ヨガがあったから自分自身を保つことができていました。日常を自分らしく穏やかにしてくれたヨガを沢山の人に伝えていきたいと思ったんです。
──そこからヨガの講師としてのキャリアがスタートしたのですね。
齊藤さん:
しばらくはホットヨガスタジオで専属講師として働いていたんですが、自分自身を支えてくれたヨガを我が子にも教えたいと思ったので、キッズヨガなど子どもに関する資格を取り始めました。
元々子どもが好きだったこともあって、最初は公民館を借りて、息子の幼稚園のお友達に教えました。そこからいろいろなスタジオで担当させてもらえるようになりました。
「若いお母さんだから」と思われないように…20代前半の葛藤
──小さいお子さんがいながら仕事をするのは、大変でしたか。
齊藤さん:
正直、とても大変でした。でも家族にもサポートしてもらいながらなんとか続けることができました。
勤務時間以外でも研修や資格など、常に何か覚えることに追われていたので、子どもが寝たあとや、朝早く起きて勉強の時間を確保していました。
──そこまで頑張ろうと思ったのはなぜですか。
齊藤さん:
自分の子どもに誇れる母親になりたいと思って、仕事を頑張ることで、自分の自信にも繋げたかったんだと思います。収入的にも子どもたちの将来を考えてしっかり稼げるようになりたいと思っていました。あとは若いお母さんだからと思われないように、だからこそしっかりしなきゃという想いがありました。
今だったら、もっと肩の力を抜いてやればいいのにと、当時の自分に言ってあげたいですけどね。常に気を張って、仕事も子育ても頑張らなきゃと思っていました。
実はヨガの講師を始めてから最初の5年間は「いないいないばあっ!」の経歴は載せていなかったんです。知名度がある番組なので、そちらの経歴の方が目立って、自分の仕事の方は実力不足となるかなと思ってしまって、あえて言いたくないなと思っていました。
大人の方をメインに教えていたのもあって幼児番組のことは直接的に関係はないかなとも思っていました。でも、キッズの指導を始めたときに、スタジオのオーナーが「よかったら載せてみない?」と言ってくださって。いいきっかけになるかなと思ってそこから載せ始めました。
最初は迷いながらだったのですが、番組のことを知っている方が多く、そこから話が盛り上がったり、当時の事を覚えていてくださったのをきっかけにクラスにご参加いただいたりと、よりご縁が深まるきっかけに繋がっていきました。
最近は保育園などのカリキュラムとしてキッズヨガの指導や監修をしていますが、園長先生や上の世代の先生方が子育て中に見てくださっていたということも多いんです。
お子さんは20代になっているんですけど、当時いつも見ていてお世話になりましたと言っていただき、とても嬉しい思い出話を教えていただくことが増えました。よりご縁が深まり、信頼へ繋がっていく経験を経て自分が頑張った4年間をちゃんとプロフィールに乗せて強みにしていこうという自信に繋がりました。
PROFILE 齊藤里奈さん
取材・文/内橋明日香 写真提供/齊藤里奈