中学受験の結果が出始めてきた季節。受かる人がいれば、落ちる人も。受験に落ちた経験は、子供にとってはショックな出来事になりかねません。子育ての専門家である東京成徳大学教授の田村節子先生は、親がついやりがちな「ある行動」で、子供が深く傷つくことがあると言います。

「大丈夫だよ」では届かない場合も

「受験も親にさせられた場合と、自分から受けたくて受けた場合とあると思います。しかし、どちらの場合でも受験に落ちるということはとてもショックな経験だと思います」と話す田村先生。
田村先生
中学受験をするのは小学6年生。年代として6年生は発達課題の境目に当たります。小学生は勤勉性、劣等感などを実感しやすい年代と言われていますが、精神的に早い子は自我をつくっていく自立の時期にも入ってきています。また、反抗期に入っている子もおり、複雑な年齢です。

 

特に劣等感や周りの評価を気にする時期で、中学受験に落ちることは、人格を否定されたような感じを受けてしまうと田村先生は危惧します。

 

「生活の大部分を受験が占めていたのに、次に進みたいところに入れなかった。能力がたりなかったと判定されたと感じ、自尊心がぺちゃんこになってしまいます」

 

だからこそ、フォローする声がけが大事だと言いますが、「大丈夫だよ」と声をかけても、子供が「親は本当は大丈夫じゃないと思っているんだろうな」と思ってしまうことがあると言います。

言葉よりも非言語のメッセージに注意を

ポイントは2種類のコミュニケーションだと田村先生。コミュニケーションには、言葉の意味が重要となる「言語コミュニケーション」と、言葉以外の表情、態度、声の調子などの「非言語コミュニケーション」の2種類があると言います。

 

田村先生は非言語コミュニケーションが重要だと言います。とくに無意識にしてしまう、親の「ため息」に注意が必要だと指摘します。

 

「子供は親をいちばん見ています。大丈夫だよと言っても、その前に結果を見て『はぁ』とため息ついていたとしたら、どうでしょうか。子供は親がショックを受けているんだと思ってしまいます」
どの子も親を悲しませることはとても嫌なので、親を傷つけたと思ってさらにショックを受けてしまうそう。

 

通常、言葉の内容は3〜4割が伝わるとされており、非言語で伝わる部分の方が6〜7割と大部分を占めていると言われています。

 

母親が子供に「大好き、あなたが何より大事」と言っていても、スマホばかり見ていて、子供に顔を向けずに言っていたら、子供は「スマホの方が大事なんだ」と非言語コミュニケーションから思ってしまうそう。

 

「ため息は無意識に出る動作なので、気づきにくいですが、子供はよく見ているので注意が必要です」

 

そのほか、腕組み、表情や姿勢、考え込むような動作を見せないなど親の工夫が重要だと言います。同時に、子供の「非言語コミュニケーション」を親がチェックすることも欠かせないと指摘します。

 

「あまりにショックすぎて平静を装う子もいます。子供の様子を見て、ため息、思い詰めている様子があれば親御さんも気をつけて見てあげることが大事だと思います」

5つの承認段階ごとに相手を認める

では、行動に気をつけた上でどんな言葉がけをしたら良いでしょうか。

 

「受験に落ちて、承認欲求が満たされず、親の期待を裏切ったと子供は自分を責めがちなので、逆に子供を認めてあげる言葉をかけることが大事です」と田村先生。

 

承認には5段階あるとされ、こちらを活用することがお勧めだとのこと。

 

まず「結果承認」です。合格した場合に結果を承認します。

 

次は「プロセス承認」です。過程を承認することで、結果が出たときに結果だけではなくてプロセスも褒めると良いと言われています。落ちて結果がでていなくても、「毎日勉強していたよね」などプロセスを認める言葉かけをします。

 

3番目は「行動承認」。受験以外の行動していたところを褒めてあげます。「受験だけじゃなく、よく学校に行っていたね」「体調崩しがちな時期に、体調管理できて偉かったよね」など受験に関係する学校生活について広く承認します。

 

4番目は「意識承認」です。あまり勉強していなくても、「いつも勉強のこと気にかけて、やろうとしていたよね」などやろうとしていたことをお母さんはわかっていたことを伝えます。これはよく観察していないと言えないのですが、子供にとっては「気持ちをわかってもらっていたんだ」ととても嬉しい気持ちになります。

 

最後は、最も大切な「存在承認」。これは、勉強しようとしていなかった場合や、あまりにもショックが大きい子供、そして全ての子供が求めていることなので、絶対伝えて欲しいと田村先生は話します。

 

「ただあなたがいるだけでいい。受かろうが落ちようが、あなたの価値には関係ないから。お母さん、お父さんは、あなたが、家族の一員ですごく嬉しい」など、無条件で「いるだけで良い」ということを伝えることを勧めます。

 

言葉で言えないときは、子供の好きな食べ物を作ってあげるのも効果的だと言います。食べ物も愛情の象徴なので、食べ物を通して十分に親が子供を気遣っていることが子供に伝わると言います。

メッセージは自分を主語にして

そのほか、親御さんの素直な気持ちを伝えることも良いそう。「私メッセージ」、自分を主語にして伝えると伝わりやすいとされます。「お母さんも残念だと思うよ」などの形です。

 

もし、子供に夢があれば、夢を引き合いに出して「道はいろいろあるんだよ」と言ってあげたり、親御さんの失敗体験を話して聞かせてあげたりすることも有効だと言います。

 

「子供にとって親は絶対的存在です。弱っているときは、そういう言葉かけをしてあげると気持ちが楽になると思います」。

 

PROFILE 田村節子さん

東京成徳大学大学院教授・博士(心理学)。長年、小中学校のスクールカウンセラーを務める。著書に『子どもに「クソババァ」と言われたら-思春期の子育て羅針盤-』など。

取材・文/天野佳代子 撮影/木村彩