「両親の金遣いが心配で、老後のお金は大丈夫かな…」。家計再生コンサルタントの横山光昭さんのもとには、親のお金に関する悩み相談にくる人がいるそう。贅沢をしているわけではないのに、早々と老後の備えがゼロになりそうな人も少なくないそうです。どうしてそうなるのでしょう。
朝食だけはいつもファミレスって贅沢?
「自分の親が心配だ」と相談に来られる方の9割は、たしかに心配になるレベルですが、身の丈に合わない豪快な使い方をしている人はほぼいません。ほとんどの人は「プチ浪費」を続けている人です。
たとえば、
- ちょっと高価な食材を買う
- 朝食をファミレスやカフェで取るのが日課
- 月に何度も飲みに行く
といった、必ずしも贅沢とはいえないようなことです。
しかし、それが積み重なると、毎月の収支が赤字に。たとえば、月20万円の年金をもらい、仕事の収入も5万円ほどあるけど、生活費が30万円前後かかっていれば、毎月3~5万円ほどの赤字です。
毎月5万円の赤字はあなどれません。その金額は年間で見れば60万円、10年間では600万円。貯金を切り崩して対応するしかありませんが、もし貯金が500万円しかなければ10年も経たずにゼロになります。1000万円あっても20年持ちません。
これでは旅行も気軽に行けませんし、自宅の大規模修繕や自動車の買い替えなど、数百万円単位の高額な出費が必要になったら、対応できなくなります。
さらに、両親のどちらかに介護が必要になったら、さらにお金もかかりますから、生活が一気に苦しくなるでしょう。
親子共倒れにならないためのポイント
もし親の貯金がゼロになったら、子どもが助けるしかありません。しかし、子育て中でお金や時間に余裕もなく、親の援助までしていたら、こちらまでつぶれてしまいます。一時期、老後の資金は2000万円必要と言われていましたが、その一部の数百万円を援助するだけでも大変です。
そうならないうちに、早めに手を打ちましょう。プチ浪費をしている親の多くは楽観的。「節約しなきゃダメ」と言ったところで、「まぁ、何とかなるでしょう」と言われるだけです。
何とかならないことを知ってもらうためには、両親の現在の収支状況や資産の総額を整理することが大切です。
収支の状況は「毎月の収入はいくらか」「何に使っているのか」を聞いて、ざっくりでも計算してみると良いでしょう。
資産の額を把握できていないケースが多く、通帳や保険証券などを探して調べます。以前「生命保険に2つ入っているから、自分が死んだら妻は大丈夫」などと言う人がいたのですが、実際は1つも入っていませんでした。
この手の勘違いはよくあるので、口頭で聞くだけでなく、現物をきちんと確認しましょう。
今の状況を整理して、数字で現実を示せば、多かれ少なかれ危機感を覚えてくれるでしょう。それだけで終わらせずに、お金を節約する方法を一緒に考えれば、良い親孝行になるはずです。
監修/横山光昭 取材・構成/杉山直隆 イラスト/村林タカノブ