料理上手で知られ、味噌や麹などの発酵調味料も手作りしている安田美沙子さん。
引越しに伴って自炊ができなかった数日は、心まですさんでしまうような気がしたと話します。二児の母として多忙な生活を送る安田さんにとって「毎日の食事作り」とは?
引越しで自炊のできない日が続いて
── 毎日の食事をとても大切にされている印象の安田さん。食事作りへの思いについて、教えていただけますか。
安田さん:
実は今「やっぱり食事って大切だな」と痛感しているところなんです。というのも、最近引っ越しをしたばかりで。調理器具や食器などの荷ほどきができないあいだ、レトルトやミールキットで食事を済ますことが数日あったんですよ。
── 引っ越ししたては、やむを得ないですよね。
安田さん:
一応、健康的な素材が売りのメーカーのものを選んだりはしたんですけど、それでも自炊ができないとだんだん心が貧しくなってしまいそうというか…。家族のコミュニケーションも「何かがたりない!」って感じがして。何より自分自身、食事が「楽しい」ものじゃなくなってきたんですね。
それで、まずはお味噌汁を作ったんです。息子には「またお味噌汁?なんでいつもこれ出すの?」と言われましたが、お味噌自体、息子と作ったものだったので「こういうことは大事にしなきゃいけないよ」って言いました。
── ご自身が家庭料理を楽しく味わってきた背景もありそうですね。
安田さん:
それはすごくあると思います。母が専業主婦だったので、子どものころは母の作る食事を当たり前に食べていましたし、祖母に至っては京都の舞鶴で畑を耕して、自給自足のような暮らしをしていたので、家族で祖母の家に行ったときはみんなで野菜を採って、それを食べていましたから。
── 採れたて野菜!間違いなく美味しかったでしょうね。
安田さん:
それはもう!当時はそれが当たり前で、母の味つけに文句をいうことだってあったけど、今では思い出の味、私のルーツだとさえ思います。
だから息子たちにも「また同じ?」と言われようと、出来る限り「家の味」は作り続けてあげたいんです。忙しい毎日、たとえ三食作るのは無理だったとしても、家族揃って食卓を囲む時間は生活の中心に置いておかなくちゃいけないなと思っています。
そういった意味でも台所は私にとって大切な場所。食器を選んだり揃えたりするのも楽しいし、何より料理を作ることがストレス発散になって、私自身、元気になりますね。
息子と一緒に作った味噌が我が家の味
── 先ほど、味噌汁の話で「息子さんと作った味噌」とおっしゃいましたが、味噌作りもされているんですね。
安田さん:
はい。味噌以外にも、醤油麦麹、塩麹などはずっと作っています。
── すごい…!何かきっかけはあったんですか?
安田さん:
発酵食品に詳しい料理研究家の真藤舞衣子先生と雑誌の連載をやっていて、そのときに先生から味噌作りを教わったのがきっかけです。
大豆に水を入れて、圧力鍋で柔らかくなるまで煮てから、それをバーミックスで攪拌するんですが、案外簡単なんですよ。一度にたくさんの量が出来るので、2年くらいは持つし、友人にお裾分けしたりしています。
大豆はネットで買うこともあるし、真藤先生の出されているキットで作ることもあります。やっぱり自分で作った味噌は格別に美味しいです。息子と一緒に作る時間自体も愛おしいですね。「作る人の手の菌で味も変わるから、息子の菌の味かな〜」なんて言いながら楽しんでます。
手作り味噌が自炊をラクにしてくれる
── 手作り、しかも親子で作ったとなれば、間違いなく美味しそうです。
安田さん:
今、子どもは4歳と1歳です。下の子は動き回るようになって、最近ますます目が離せません。毎日本当にバタバタしているけど、手作り味噌が結果的に自炊をラクにしてくれていると感じています。
── それはどういう意味ですか?
安田さん:
美味しい味噌ってとても便利なんですよ。醤油麦麹(麦麹に水を吸わせ醤油を混ぜたもの)をお芋にかけるだけでも美味しいし、サラダにかけても味がすぐに決まります。サラダ用のドレッシングを買う手間も省けるので、時間の節約にもなります。そういう意味でラクですね。
家族が安心して食べられるものが手元にあると、私自身の心もすさまなくて済むのも気に入っています。味噌作りに多少手間がかかったとしても、続ける価値があると思うし、そうやって「家の味」を子どもに作ってあげたいなって思います。
PROFILE 安田美沙子さん
82年京都府生まれ。ドラマや映画等で活躍する傍ら、フルマラソンにも挑戦。31歳で結婚し、現在は男児2人のママ。食育インストラクターの資格取得や和ブランド『FOUR O FIVE』プロデュースなど精力的に活動中。2022年1月13日、ライフスタイルブック『安田美沙子のRunから始まる笑顔な暮らし』(小学館刊)を発売予定。
取材・文/井上佳子 撮影/坂脇卓也