「この人苦手だな、でも話さないといけないし。どうしよう」そんなときはないでしょうか。話し方教室の講師でもあり、著書もある西任暁子先生、一体どうしたら良いでしょうか。苦手意識をなくす方法を教えていただきました。
苦手な人、原因は相手にはない
── 苦手だなと思う人と話すとき「緊張する、話したくない」という相談を受けることがあります。どうしたらいいでしょうか。
西任さん:
相手を苦手だと思うのは相手のせい、というのが一般的な考え方ですが、それは本当でしょうか。その人のまわりにいる100人全員が、その人を苦手と思うことはありません。ということは、その人を苦手かどうかを決めているのは、自分ということになります。
例えば、怒鳴っている人がいたとしましょう。「嫌だ」と思う人もいれば、「疲れるだろうな」と思う人もいるかもしれません。「威勢がいいな」と思う人もいるでしょう。受け止め方は千差万別です。
受け止め方は人それぞれ
そもそも、「怒鳴っている」という受け止め方も主観的かもしれません。ただ、声が大きかっただけかもしれません。本気で情熱的と受け止める人もいるでしょう。しかし、「相手が怒鳴っている」と思うと、「怖い。苦手だ」と感じることにつながります。
そう言われても、苦手だと思うのは相手のせいにしか思えないかもしれません。でもその人のある部分を、全員が苦手だと感じるわけではないということは、それを「苦手だ」と受け止めているのは自分ということになります。このような捉え方は、一見信じられないことかもしれません。
例えば、過去、犬に噛まれて怖かった人は、犬恐怖症になると、どんな犬を見ても怖くなるでしょう。昔、母親に大きい声で怒られて育ち、怖いと感じた記憶のある人は、大きい声を出す人や、母親に似た女性に出会うと、母親を思い出して、苦手意識を感じるかもしれません。いずれも、過去の経験が苦手な相手を作り出しています。
つまり、自分の過去の体験がもとになって、相手の言動を苦手に思ったり、好意を持ったりしているわけです。
── そこに気づいたら解決するのでしょうか。
西任さん:
不思議なことですが、気づいて受け入れるとそれだけでその人のことが気にならなくなります。さすがに大好きにはならないかもしれませんが、これまでのように嫌な感じを持たなくなるでしょう。
また苦手な相手とは、好きになれない自分を写す鏡だったりします。自分の嫌いな部分を同じように持っている人に会うと、嫌な自分を見せられているようで苦しくなるのです。
苦手な人に出会ったら、「どうして、相手を苦手だと感じるのだろう」と自分を見つめてみると、苦手な人が減っていきます。苦手な人がいない人間関係が広がると、何よりも自分自身が心穏やかに過ごすことができますね。
PROFILE 西任暁子
取材・文/天野佳代子 写真提供/ニシトアキコ学校事務局