今回は企業向けのシステム開発を行っている株式会社クリーブウェア(角北強社長・大阪市北区)の「ライフサポート休暇」を取り上げます。休暇の取得を1時間単位とし、生理や不妊治療、子どもの学校行事とさまざまな目的で活用できる制度です。角北強社長と企画管理部の前田美咲さんにお話を伺いました。

クリーブウェアの角北強社長(右)と企画管理部の前田美咲さん

生理の突発的な痛みに対応できる1時間単位の制度設計は、若手女性社員の声から始まった

── 今年5月、従来の生理休暇から「ライフサポート休暇」へと名称や内容が変わりました。どんな背景があったのでしょうか。

 

前田さん:

若手の女性社員から「一日単位の生理休暇は使いにくい」との声が挙がったのが、導入のきっかけです。生理は業務途中に来ることも多く、痛みや体調不良は1日で収まるものでもありません。1時間単位にすれば柔軟に対応でき、複数日に分けて取得できると考えました。

 

また、男性が多い職場ですので、生理休暇という名称はダイレクトすぎて口に出しづらいとの空気感も。取得を促すためにも、呼びやすい名称に変更する必要も感じました。

 

角北社長:

男性社員の家事や育児への参加を促したいとの思いもあり、取得要件も広げることにしました。最近は育児休暇を取る男性社員が増えています。こうした背景を追い風に、「お父さん社員」がもっと家庭に目を向けるようになってほしい。例えば、お子さんの個人面談や授業参観などにも使える制度を目指しました。

 

── 具体的にどういった内容でしょうか。

 

前田さん:

従来は女性社員にのみ付与してきた休暇を、男性も含めた契約・正社員全体に適用することとなりました。取得要件は生理休暇にとどまらず、不妊治療や、運動会や学芸会といった子どもの学校行事への参加にも広げています。

 

休暇を1時間単位とすることで、生理での突発的な体調不良や、不妊治療による月に複数回の通院にも臨機応変に対応できるようになりました。

 

── 社員の皆さんはどのような使い方をしているのでしょうか。

 

前田さん:

男女問わず、不妊治療のために使っている社員が一定数います。不妊治療の場合は月に3、4回通院するため、複数日に分けて2時間ずつ取得するケースが見られます。

 

また、主に30代から40代の男性社員がお子さんの学校行事のために、積極的に活用しています。例えば、午前中に仕事をして、午後の数時間は保育園のイベントに参加し、終わったらまた仕事に戻るといった使い方が見られます。

 

ライフサポート休暇の背景を話す前田さん

 

── ライフサポート休暇を導入してみて、現場の声はいかがでしょうか。

 

前田さん:

導入前は、不妊治療や学校行事への参加の場合、有給を時間単位で使っている社員がほとんどでした。有給を使うにしても定期的に休むと「こんなに休んで良いのかな」という後ろめたい気持ちを抱えてしまう社員もいたかと思います。

 

ライフサポート休暇が導入されたことで、会社としても応援している、認めているというメッセージが伝わり、心理的にもラクになっていると思います。

 

── 生理や不妊治療などプライベートな部分は職場で言いづらいのではないでしょうか。

 

前田さん:

あくまでライフサポート休暇を取得するとの申告だけで、休暇の理由を伝えるのは必須にしていません。社員同士でも休暇の内容を詮索することはなく、取得しやすい雰囲気にあると思います。

 

── 導入してみて感じた課題はありますか。

 

角北社長:

まだじゅうぶんに浸透しているとは言えず、取得率をもっと上げたいと思っています。特に、有給が少ない若年層が積極的に活用できるよう、社内での取得事例の情報公開を推進していく予定です。

 

前田さん:

ライフサポート休暇という名称でありながらも、子どもにまつわるものに取得要件がまだ限られていて、親の介護などには使えません。社員のいろいろなニーズに合わせた、本当の意味でのライフサポートができる制度になればよいなと思っています。

 

IT業界での女性活躍推進に向けた働きかけについて語る角北社長

 

── IT業界は男性比率が圧倒的に多く、ジェンダーギャップが解消できていないのが現状です。こうした課題解決のためには、どんな働きかけが必要でしょうか。

 

角北社長:

弊社も2008年の創業当時は女性社員が一人もいませんでした。それでも、将来的に女性社員が入社するのを見据え、生理休暇の導入など働きやすい環境づくりに務めてきました。ライフサポート休暇の効果もあってか、今年の採用面接は女性の応募が増え、来年入社の新卒社員も女性社員の割合が増えています。

 

一方で、社内の女性比率は2割にとどまっており、男性社員メインの職場であることは否めません。10年ほど前までは、3K(きつい、帰れない、給与が安い)と言われていた業界です。その負のイメージを払拭しなければなりません。

 

海外だとIT業界に勤めることはステータス。日本もそのレベルまで到達しなければならないし、我々のようなベンチャー企業がその一翼を担わなければなりません。

 

そもそも、大学や専門学校で情報分野を学ぶ女性は少ない。今も女性社員は法務や管理、制度設計を担う場合が多く、プログラミング部門で活躍する女性を増やしたいと思っています。

 

今年から、新卒社員や、業界経験の少ない社員、他業界から転職した社員を対象に、3年間の教育プログラムを始めました。入社後に勉強できる環境を整えることで、IT業界の間口を広げていきたいと思っています。

取材・文・撮影/荘司結有