結婚していて子どもがいないと「子どもは?」と言われ、ひとりっ子だと「寂しいよ」と言われ…。それ以前に「結婚しないの?」もありますが、そういった言葉は今やセクハラ。たとえ身内でも言わないほうがいいものです。とはいえ、無神経な人にそう言われることもあるかもしれません。
「人の幸せ」は誰が決めるものですか?
「ひとりっ子の何がいけないのかわかりませんよね」
笑いながらそう話すのは、ユキさん(39歳・仮名)です。3年つきあった同い年の彼と結婚したのは30歳のとき。5歳になるひとり娘がいます。
「私自身は結婚も出産も別にしなくていいと思っていました。女性は誰もが結婚・出産したいと思っているはず、という世間の“思い込み”がうっとうしかった。自分ではやりたいことがあったので、いちいち反論もしませんでしたけど」
ユキさんはデザイン関係の仕事をしていて、自分のキャリアを積み重ねることが大事と思っていました。ただ、30歳になる直前、両親を相次いで事故と病気で亡くします。落ち込んでいた彼女を心から慰め励ましたのが、当時つきあっていたタクヤさんでした。
「家族がほしいと思ったわけではなくて、彼と一緒にいたいと思ったんです。この人と一緒なら、私はずっと元気でいられるかもしれない。そう言ったら彼が『オレもユキと一緒なら、楽しい人生が送れると思う』って。だから私たちの結婚理由は、ひとりでいるより楽しいから、元気になれるから。それだけなんです」
ふたりだけで生活するのが当初の目的だったので、子どもについてはよく話し合ったそうです。仕事に支障のあるタイミングでの出産は困るとユキさんは思いました。
「そんな話を3人の子育てをする妹に言ったら、『自分のことしか考えてないのね』と言われたけど、自分の人生ですからね、自分のことしか考えなくて何がいけないの?と思いました」
子どもはひとりでいい、がユキさんの結論。タクヤさんにそう話すと、『いいと思うよ』と同意されたといいます。夫自身、ひとりっ子で何の不満もなかったことも、影響したそうです。
「子どもの人数なんて、人にとやかく言われることじゃないですからね」と、ユキさんはきっぱりと言います。
周囲の声に凹む夫を見て、悩む意味がわからなかった
ユキさんは仕事を始めた頃から、徐々に「人のアドバイスは聞くけど、他人の意見を丸呑みしない」よう心がけてきたそうです。仕事もプライベートも、それは変わりません。ただ、夫のタクヤさんは“もうちょっと”世間を気にするタイプ。
「夫は会社で『きょうだいはいたほうがいいんじゃない?』と言われたとかで、一時期、くよくよしていました。私はそこで悩む意味がわからない。タクヤは『ユキは強いからいいけどさ』とすねてました。周りからの声は気にしないと決めればいいだけのことなのに…」
とはいえ、みんながユキさんのように強く振る舞えるわけではありません。でも、もしかしたら、周りにユキさんのような人はいるかもしれない。それならそういう人に愚痴ったり、相談しするのはひとつの方法ではないでしょうか。
「私に相談してくる仕事仲間もいますよ。“こんなこと言われたけど、どうしよう”って。独身女性からは『母親が“結婚して!”とうるさい』とかね。今度、こう言い返してみたらどうかな?と一緒に作戦を立てます。身内なら言いたい気持ちもわかるから、大きなもめごとにならないよう、うまくかわすのも手だと思います」
世間の声、その流れに同調しないと生きづらい世の中。でも違和感を覚える意見に流されていくと結局、後悔するのは自分自身だとユキさんは言います。
「学生時代、流され続けたあげく、嫌な思いをしたこともあるので。それなら自分の意見ははっきりさせよう、意味なく同調するのはやめようと思ったんです」
気にしない、受け流す、重要なところは反論する。「ひとりっ子でもいいじゃない」とユキさんが言う裏側には、安易に人に流されないと決めた“価値観”が隠されていました。