「今回は主役じゃないの?」って、娘から聞かれたときはビックリ。子どもの言動や共有体験は面白いと、映画やドラマなどで活躍を続ける戸田菜穂さんはいいます。
俳優業を続けながらの家事や育児。“いっぱいいっぱい”になって得た、気づきがありました。それにより気持ちがラクになったと話す、その境地を伺いました。
家族の存在と同じくらい、ひとりの時間も大事
—— 2010年にご結婚されて、お子さんが2人いらっしゃるとのこと。家族を持って、どんなことを思いますか?
戸田さん:
やっぱり気持ちが安らぎますね。私がどこかに出掛けるときは、「行ってらっしゃい」って送り出されて、帰宅すると「おかえり」って迎えてくれる。独身の頃に比べたら、帰る港があるというか(笑)。人が待っていてくれる場所があるのはありがたいですね。
仕事に行くときも、子どもたちが待っていてくれると思うと、なおさら「いい演技してこよう!」って、励みになる部分はありますね。
また、家族がくつろげるように部屋のインテリアも楽しんでいます。フランスに行けば、家がフランス風になったり、バリ島に行けばアジア風になったり(笑)、私はすぐに影響を受けやすく、妹からはわかりやすいねって言われます。
—— 独身の頃から変わらないことはありますか?
戸田さん:
子どもの頃から自分と対話したり、空想するのが好きなんです。もちろん子育てもしていますが、自分の時間も保つように。
いろいろな人の手を借りながら、気持ちがいっぱいいっぱいにならないように、たまにはガス抜きもしていますね。基本的にひとりの時間が好きなので、子どもを産んでからもひとり旅には行っています。
—— 自分の時間も大切ですよね。旅行はどの辺りに行かれたんでしょうか?
戸田さん:
独身の頃は、20歳の記念に1人でパリに行きました。国内では最近は箱根とか新潟県の南魚沼にも行きました。南魚沼には、雑誌『自由人』の編集長さんが作った「里山十帖」というホテルがあって、期待通り素敵な場所でしたね。
もともと雪が好きなので、雪に囲まれた場所で原稿を書いたり、散歩をしたり。主人も「そういう時間は大切だから」と、最初から賛成してくれて、1年に1回くらい1泊2日で出掛けます。
「全部自分でやろう」と思わなくなったきっかけは…
—— とてもいい環境ですね。ところで、旅行中はもちろん、普段から家事は分担されているのでしょうか。
戸田さん:
元々二人とも働いているので、家事はできる方がやっています。料理は私が担当ですが、主人は掃除が上手です。主人もキレイ好きなので、家の中がいつも清潔で助かります。
週末は主人も手伝ってくれて、よく子どもたちを公園にも連れて行ってますね。私もときどき一緒に公園に行ってふと周りを見渡すと、そんな日曜日のお父さんと子どもたちがたくさんいる。「今日ぐらい外に子どもを連れて行って」と言われるのかなとか、想像しながら見てます(笑)。
—— おふたりのお仕事が忙しいときもありますよね。その場合はどうしていますか?
戸田さん:
ずっと同じシッターさんや、主人の実家や親戚にも、よく子どもたちを預けています。今は映画の撮影中なので、仕事で長く家を空けることもあります。そういったときは親戚にお願いして、子どもたちをみてもらっています。
主人の妹家族も子どもがいるので、いとこ同士で遊んでいますが、子どもたちも楽しそうで助かっています。
—— 周りのバックアップもあるのですね。ちなみに親戚と仲良くするコツってあるのでしょうか?
戸田さん:
お願い上手になることかなぁ。あとは普段からコミュケーションを取っているし、相手を信頼しているからお願いできる部分もあります。明るくて優しい親戚なので、遠慮しないでどんどん頼みます。
ただ、今でこそ親戚に預けていますが、もともとはそういうことができるタイプではなかったんですよ。子どもができてしばらくは、夫にも甘えられなくて、自分で何でも頑張ろうとしたこともあります。でも、実際毎日忙しいし、だんだんとそうも言っていられなくなり…。
それに、子どもたちには外の世界でいろいろな人と関わり、視野を広く持って欲しいですし。
—— お子さんたちも、戸田さんがお仕事に行くことには慣れているんでしょうか。
戸田さん:
子どもが1歳のときから京都に撮影に行っていたので、もう子どもたちも慣れてますね。この前なんか、「今回主役?」とか聞いてきたりして(笑)。“そこ聞くんだ”って思うと、子どもって面白いなぁと思います。
—— 子どもを持つと世界が広がりそうですね。
戸田さん:
今までは俳優同士の関わりが多かったんですが、子どもを持ったことで幼稚園や小学校のお母さんたちとの世界も開けて、いろいろな考え方を教えてもらっています。素敵なんですよ、皆さん。
それに、子どもがいると、自分が幼少期にやっていたことを、もう一度体験できるのも楽しいですね。子どもと一緒に教科書を読んで懐かしいと思うし、天気図とかもっと勉強すれば良かったと、思いだしたり。夏休みの楽しさや切なさなども蘇りますね。
子どもを持って“これが変わった”というのはないですけれど、たぶん私、我慢強くなりました。食事だけは栄養のあるものをと思って意識して作っています。でも、“完璧なお母さん”は目指していません。なる気もないし、それをすると疲れるのもわかっていますから。
PROFILE 戸田菜穂さん
取材・構成/松永怜 撮影/坂脇卓也