コロナ禍で外を出歩く機会が減って運動不足になり、基礎体力の低下で悩む人が増えています。疲れやすくなったり体の痛みを感じたり、さらには気持ちが落ち込んでしまったり…。

 

 「体力は日常の習慣を変えるだけでも向上させられますよ!」と語るのは、ダイエット美容家の本島彩帆里さん。特に、すべての動きのもとになる「立つ」「歩く」「座る」の姿勢の見直しは、すぐに始められておすすめなのだそう。

 

最新著書『生きているだけで やせる図鑑』でも伝授したその方法と、習慣づけのヒントを教えていただきました。

習慣を見直すだけで、体は元気になる…!?

── ランニングや水泳などの激しい運動ではなく、日常の習慣を変えることも体力づくりにつながるとは驚きました。

 

本島さん:

そうなんですよ。体力には精神的要素と肉体的要素があり、前者は、気力や精神的ストレスへの抵抗力のことを指します。後者は、運動したり日常生活で体を動かしたりする際に必要となる、基本的な身体的能力のこと。筋力(筋肉を動かす力)、調整力(体を上手に使うために必要な力)、瞬発力(瞬間的に引き出せる力)、持久力(運動や外的要因に長く耐える力)の4つに分けられます。

 

その中の筋力は、日常の動作次第で鍛えることができるんです。例えば、座る、歩く、立つのような、すべての動きのもととなる動作の基本姿勢を正しく整えるだけで、普段なかなか使えない筋肉が使われて筋力がつき、体力アップにつながります。 

 

── 座る、歩く、立つの姿勢の見直しなら、今すぐにでもチャレンジできそうです!

 

本島さん:

いつでもどこでも簡単にトライできるので、ぜひ試してください。それと、毎朝“交感神経のスイッチ”をしっかり入れる習慣づけも大切です。

 

体力の減少を感じている人の話を聞くと、睡眠不足もあるけれど、交感神経のスイッチがうまく入らないのが原因で常に疲れやすい状態になっていたり、日中ずっと眠い、だるいといった症状を訴えるケースが多いと感じていて。 

 

交感神経は日中の活動を支えるための自律神経です。意欲的に仕事やスポーツができるのは、交感神経が優位に働いているから。本来、交感神経は起床後から昼間にかけて徐々に活性化するのですが、うまくスイッチが入らないと交感神経が活性化せず、やる気が起きなくなってしまうんです。体力で言うと、気力が落ちている状態です。

 

── 私そうなっているかも…!交感神経のスイッチを入れるためにはどんなことをすればいいでしょうか?

 

本島さん:

昼間ずっとしんどいと感じる人におすすめなのが、朝起きたあとに体を動かして心拍数を上げることです。

 

もも上げやラジオ体操、ゴミ捨てに行くのもいいですね。以前は出勤があったので自然と身体を動かしていましたが、在宅ワークが増えて出勤がなくなったので、新しい習慣として取り入れてみてください。

 

アップテンポの音楽を聴くなど、気分が上がることをするのも効果的ですよ。

「座る・歩く・立つ」正しい姿勢でいれば太らない!

── 在宅ワークで座っている時間が今まで以上に長くなりました。まず、正しい座り方というのはどういう状態なのでしょうか? 

 

本島さん:

座る場合、骨盤を立てて脇を締め、足裏を地面につけて座るのが正しい姿勢です。しっかりおなかとみぞおちあたりを上に伸ばすのがポイント。これだけで筋力アップにつながります。

「座る」の基本姿勢

 座って作業すると背中が丸まってしまう方は、作業中でも自然と背筋が伸びる工夫をしてください。

 

おすすめなのは高さが調整できる椅子を使うこと。正しい姿勢がとれる椅子のちょうどいい位置は人それぞれ違いますが、私の場合は、パソコンを使うときは画面が目の高さに来るように調整しています。いっぽうで、書き物をするときは、机が胸のあたりに来る低い位置に合わせることもあります。

 

── 骨盤を立てて座るにはどうすればいいのでしょうか?イメージできないかも…。 

 

本島さん:

骨盤を立てるというのは、恥骨と左右の腰骨の3点をつなぐ三角形が床に対して垂直になる状態のことを指します。椅子の背もたれと背中の間にバッグを置いてみてください。骨盤が立った状態がキープしやすいですよ。 

 

わかりにくければ、座ったまま反り腰から腰を丸めたりして、骨盤を前後にゆらしてみると感覚がつかみやすいと思います。

 

── 正しい座り方を習慣づけるためのコツはありますか?

 

本島さん:

脚を組むクセがある人は、内ももの間にクッションや雑誌などを入れて挟むと、足を組む動きを防止できます。

「座る」姿勢のキープ方法

背中が丸まりがちな人なら、ペンやお箸を背中側から両脇で挟んで作業してみてください。胸が開き、背中の丸まりを防げます。

 

── 外に出る機会が減り、歩く機会が減っています。それでも歩き方を見直すと差がつきますか?

 

本島さん:

そうですね。歩き方を整えれば、少ない歩数でもけっこうな運動になりますから。正しく歩くポイントはたった1つ。脚を踏み出す際、後ろ足の「そけい部」を伸ばすよう意識するだけです。

「歩く」の基本姿勢

後ろ足で体を押し出すので自然と大股になり、骨盤を支える腸腰筋(ちょうようきん)というインナーマッスルを鍛えることができます。大きな筋肉があるお尻の背面も使うので筋力がアップするんです。 

 

正しい歩き方のポイントとして、おなかから足が出るようなイメージで動く、腕は前よりも後ろに引く、などを意識するといいと思います。ただそれらも、後ろ足の「そけい部」を伸ばすことを意識すれば同時にできるんです。 

 

── それならシンプルで誰にでもできそうです。正しい歩き方を習慣づけるためのコツはありますか? 

 

本島さん: 

「そけい部を伸ばす」という動き自体が最初は少しわかりにくいかもしれません。

そけい部のポイント

まずは「そけい部」に手を当てながらゆっくり踏み出し、体の動きや感覚を意識するといいと思います。 

 

靴が姿勢に影響を与えるので、歩きやすい靴を選ぶのもコツです。おすすめしないのは、厚底のフラットシューズや足首が固定されていないミュール。底が平らだとうまく足の付け根を伸ばすことができないので避けたほうが無難です。

 

── 「立ち方」にも正しい姿勢があるというのは意外でしたが…。

 

本島さん:

そうですよね。まっすく立つためにいちばん意識してほしいのは、重心のかけ方です。日本人女性の多くは、内股で足の外側重心で立つクセがあるんです。そうすると、足の前面や外側の筋肉は発達するけれど、背面と内側の筋肉は衰えてしまいます。

 

足の人差し指同士がなるべく平行か、それより内側に入らないようにして、重心が内くるぶしの真下、土踏まずあたりにくるようにしましょう。

「たつ」の基本姿勢

あとは、おへその少し上を意識しておなかをへこませ、内臓が持ち上げられるようなイメージで。頭上から1本の糸で吊られていると想像して立つと、普段使われていない筋肉を使えるようになります。

 

── 正しい立ち方を習慣づけるためのコツは何でしょうか。

 

本島さん:

頭にトイレットペーパーをのせて、まっすぐ立つ練習をすると身につきやすいですよ。正しい立ち方で前方を見て1分以上キープすればOKです!

「立つ」姿勢のキープ方法

鏡を見ながらやると、正しい姿勢がとれているかどうかがわかりやすいと思います。歯磨きをする35分を活用してやってみてください。

 

Profile 本島彩帆里さん

本島彩帆里さん
万年ダイエッターから産後マイナス20kgのダイエットに成功した経験や、痩身サロンで女性のダイエットサポートをしてきたキャリアを活かし、美容家へ。身体や心のセルフケアだけでなく、無理をしないライフスタイルや習慣の発信は幅広い層に支持されている。自身がプロデュースするブランド「eume(イウミー)」も人気。著書に『生きているだけで やせる図鑑』(西東社)など。https://www.instagram.com/saoooori89/ 

 

基礎体力特集 バナー画像
取材・文/小松﨑裕夏 イラスト/Akira Ayumi