まるで欧米人に変身したかのような立体的なメイクで、一躍有名になった美容YouTuber「マリリン」こと福世優里さん(以下、マリリンさん)。
YouTubeを始めて6年。現在は6歳と2歳の姉妹のママをしながら、精力的にYouTuberとして活動しています。「自分自身を好きになるということを伝えたい」と話すその素顔に会いに、ご自宅をたずねました。
第一子妊娠中に、パート勤務からYouTubeの世界へ
── いまでは有名YouTuberのマリリンさんですが、YouTubeを始めた当時はどんな状況だったのでしょう。
マリリンさん:
初めて動画を投稿したのは2015年3月。ちょうど20歳になったばかりの頃でした。当時まだ日本ではYouTuberという職業があまり認知されていなかったのですが、海外事情に詳しい先輩から「いま海外ではメイクYouTuberっていうのがすごく流行っているんだよ!優里もやってみなよ!」と勧められて。
高校時代から “変身メイク”の写真を撮ってブログにアップしていて、その当時もTwitterで発信をしていました。でもアクセスも少ないし、知名度は全然上がらなくて。だから先輩の話を聞いて、「よくわからないけどやってみようかな」くらいの感覚で始めることにしました。
── 高校生の頃からSNSで発信されていたから、動画投稿にもそれほど抵抗がなかったのかもしれませんね。
マリリンさん:
最初に投稿した1本目のことはほとんど記憶にないぐらい、ほんとに軽い気持ちでしたね(笑)。でも、いま思えば、その力が抜けた感じがよかったのかもしれません。収益化のことも知らなかったし、再生数を増やす方法もわからなかった。なんとなく「好きなことをやってみよう」という感じだったので、自分のやりたいことを存分に出せたのかなと思います。
それから2か月くらいで、「100円ショップコスメでフルメイク」という動画がバーン!と一気に跳ねたような感じがあって。あっという間に再生回数が何百万回になって、登録者数も1万人突破して…。そこから楽しくなってきて、自分がやりたいと思ったことをどんどん発信するようになりました。
臨月でYouTuberとして事務所と契約
── そのYouTubeを投稿した年に、プライベートでは授かり婚をしているんですよね。都内からパートナーの出身地に生活の拠点を移したそうですが、パートナーや義両親の反対などはなかったですか?
マリリンさん:
それが、義両親は本当に素敵な夫婦で…。夫は義父と一緒に自営業を営んでいて、結婚当初、私はその会社でパートで働きつつ、YouTuberの活動を続けていました。そんな状況でも、義両親は「自分の好きなことを思う存分していいからね」と言ってくれていたんです。
YouTuberとして「好きなことを職業にして生きてこう!」と決めて事務所に入ったのが臨月のときで、義両親には「2〜3年やっても結果が出なかったら辞めます」と伝えていました。でも、わりと短い期間で再生回数が上がったこともあって、思ったより早く認めてもらえたのが嬉しかったですね。
夫も良き理解者でした。じつは義両親には、夫が先に「優里ちゃんの好きなことを、とにかく自由にさせてあげてほしい」と言ってくれていたみたいで。そういった家族のサポートがあったことは本当に感謝しています。
子どもの頃からの夢を、ママになってもあきらめない
── 結婚や妊娠で、自分の夢を諦めざるを得ない人もいる中、周囲の理解があるのはありがたいことですよね。そもそも、子どもの頃からの夢は何だったのですか?
マリリンさん:
女優さんになりたくて、小学5年生のときに芸能事務所に入りました。高校生になると土曜の夜に大阪から夜行バスで東京へ行って、日曜日にレッスンを受ける…という日々を過ごしていましたね。
自分を誰かに知ってほしくて、好きなことを発信したい。それを誰かに見てもらって、誰かに勇気を与えたいという気持ちがずっとあったと思います。
人前に出たかったけれど見た目のコンプレックスも…
── メイクに興味を持つようになったのは、幼少期のコンプレックスが理由だそうですね。マリリンさんといえば明るいキャラクターのイメージなので、とても意外でした。
マリリンさん:
小学生時代は人前に出たい願望はありましたが、ぽっちゃり体型で見た目のことでいじめにあっていて。心を開けるような友達もいなかったし、休み時間はひとりで絵を描いているような子だったんです。
中学生になると、化粧で自分のコンプレックスを隠すことで、いじめられなくなるんじゃないかと思って、メイクを始めました。100円ショップでコスメを揃えて、当時のギャル風メイクを真似していました。自分の中ではすごく変わったつもりでいたけれど、心まではなかなか変われなくて…。
── 見た目を変えただけでは、気持ちの面までガラリと変えることは難しかったんですね。
マリリンさん:
無理をしていたのかもしれませんね。それが高校生のときに、たまたま本屋で手に取ったマリリン・モンローの本を読んで、その生き方に感銘を受けました。それ以来、自分のコンプレックスを見せる方向に変えていこうと考えが変わったんです。メイクの仕方もわからなかったから、海外のモデルさんの写真を拡大して、どういうふうに陰影がついているかをひたすら研究しました。
黒のアイライナーでぐるりと囲んでいたアイメイクや、唇の形をコンシーラーで消すことをやめて、自分の好きじゃないパーツをどうやったらきれいに見せられるか、考えるようになったんです。
中学生までうまくいかなかった友達関係も、そのあたりからすごく変わってきて。自由な校風の高校だったので私は金髪にしていたのですが(笑)、そういう個性的な私も受け入れてもらえることで自信がついたように思います。
ありのままの自分を見て欲しいからすっぴんも隠さない
── いまではすっぴんも公開していますよね。とても好感が持てます!
マリリンさん:
メイク動画を撮り始めたときはもう1人の自分がいる感覚があったんです。振り返ると恥ずかしいのですが、ちょっと気取ってました。
途中から、そうじゃない私自身を見てほしいと思うようになって、すっぴんも公開しています。日常の私を見てもらうことで「私も同じだよー!」「そうだよね!」と共感してもらえることが多くなりました。実際、日常はほぼすっぴんで、動画撮影やお出かけのときしかメイクしないですからね(笑)。
── YouTubeを通して、視聴者に一番伝えたいことって何でしょう?
マリリンさん:
YouTubeを始めたときから変わらず、「自分自身を好きになろう」ということ。たとえば学生さんなら、容姿のことや人間関係で悩む場面が誰しも出てくるし、主婦の方なら家庭や育児のことなど…みんな悩みはいっぱいあると思います。そういう方々に、私のチャンネルで共感や勇気を与えることができたらいいなと。「人生って楽しいんだ!」と思えることを伝えていきたいですね。
── まさにYouTubeがきっかけで自己実現できているんですね。この6年を振り返ってどう思いますか?
マリリンさん:
YouTuberになったことは自分でもすごくびっくりしていますが、同時に「自分の思いを実現できるときがやっと来た!」という感覚もあります。
子どもの頃から、かなえたい夢をノートに書いていたんですよ。家庭を持つとか、家を建てるとか、たくさん親孝行するとか、小さな夢も大きな夢もごちゃ混ぜで。それを一つずつ叶えていって、だいぶ実現したので、いまは次の夢を具体的に考えているところです。
…
26歳とは思えないほど、芯のある受け答えが印象的だったマリリンさん。あきらめないその姿勢が、いまの彼女をつくっているのだと思います。次回は、育児をしながら働く、母親としての日常生活についてお聞きします。
Profile マリリン(福世優里)さん
1994年生まれ。大阪府出身、茨城県在住。2015年より“変身メイク”をYouTubeに投稿を始め、チャンネル登録者数は89万人(2021年4月現在)。現在はYouTuberとしての枠を超え、メイク講師や、企業へのSNSアドバイザー、コスメ商品のプロデュースなど活動は多岐にわたる。夫、長女(6歳)、次女(2歳)の4人家族。
取材・文/大野麻里 撮影/松村隆史