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「第3子が生まれたら200万円支給」。そんな太っ腹な子育て支援の施策をかかげるのは、日本を代表するエンターテイメント企業グループであるバンダイナムコグループ。取り組みの背景と込められた思いを担当者と、実際に200万円を受け取り、3か月の育休を取得したパパ社員・松浦さんにお話を伺いました。

 

(右下)濵野 浩二さん/バンダイナムコホールディングス グループ管理本部 人事部 ゼネラルマネージャー。1996年株式会社ナムコ(現株式会社バンダイナムコエンターテインメント)入社。アミューズメント施設運営に携わったのち、各社人事部を経て現職。(左上)清水 明日香さん/2004年株式会社バンダイ新卒入社。営業・企画開発職を経て、現在株式会社バンダイナムコ ビジネスアーク人事部に所属。(右上)松浦 政信さん/2014年株式会社バンダイナムコビジネスアークに中途入社。入社以来、人事部に所属。

破格の出産子育て支援金で少子化問題に対応

──御社では、「本人あるいは配偶者が出産した場合、第1子、第2子は20万円、第3子以降は200万円が支給される」という出産子育て支援金を導入されているそうですね。社員の子育てをサポートする目的で同様の出産お祝い金を導入している企業はありますが、200万円という支給額はかなりのインパクトがあります。どのような背景から生まれた施策だったのでしょうか?

 

清水さん:

2005年にバンダイとナムコの経営統合により、バンダイナムコグループが誕生したのですが、実は、統合前にバンダイで導入していた制度をグループ全体の施策としてバンダイナムコホールディングスが取り入れたものです。

 

そもそもバンダイでこの制度が導入されたのは2001年。当時、少子化が社会問題となるなか、弊社にとって大切なお客さまである子どもたちと、子育てをしながら働く社員を応援するという意味で、まずは「第3子が生まれたら100万円をプレゼントする」ことをバンダイとしての少子化対策として掲げてスタートしました。当時、この取り組みは話題となり、新聞などでも随分取り上げられました。経営統合後もグループ各社に制度が引き継がれ、201110月に、グループの福利厚生の一環として導入されたという経緯になります。

 

──20年も前から制度が導入されていたのですね。2011年に支給額を100万円も引き上げられた理由は何でしょうか?

 

濵野さん:

せっかく統合してグループの施策として行うのだから、もっと社員に喜んでもらえる施策を打ち出したという思いがあり、200万円に引き上げたと聞いています。

 

これまでの支給者数は129名、さらに統合以前のバンダイでの支給者を含めると138名になります(取材当時)。会社としてお子さんの出産をお祝いしますという姿勢をアピールすることは、これから出産を控えた方や子育てと仕事の両立を考えている社員にとって、心強いものになるのではないでしょうか。

 

支給を受けるには、1週間以上の育児休業を取得し、「子育てレポート」を提出することが支給の条件です。子育てレポートには、どのような子育てに関する項目を経験したかや、子どもの成長の過程、子育て中のトピック、本人の感想、配偶者(ご家族)のコメントなどの記載欄を設けています。

男性社員の育休が仕事に生かされる場面も

──男性社員の育休取得にも繋がっているのですね。松浦さんは実際に支援金を取得されたそうですが、どんなことに活用されていらっしゃいますか?

 

松浦さん:

昨年、妻が第2子、第3子となる双子を出産し、会社から200万円の支援金をもらいました。各家庭によって支援金の使い道は違うと思いますが、わが家では主に妻の産前産後のケアのために使いました。子どもが双子ということもあり、妻の身体の負担を減らすために定期健診の移動にタクシーを使ったり、出産後にゆっくり心身を休めることができるようにと個室をとりました。

 

おかげでストレスなく出産に向き合うことができ、とても安心感があったと妻も非常に喜んでいましたね。だいたい1週間の育休を取るケースが多いのですが、わが家は双子育児ということもあり3か月間の育児休業を取得しました。なかには、1年間ほど育休を取る人もいるようですね。

 

 

──実際に、3か月間の育児休業を取得されてみて、いかがでしたか?

 

松浦さん: 長男のときに夜泣きが激しく苦労したので、それが3倍になると思うと大変だなと覚悟していたのですが、意外にもよく寝てくれました(笑)。ただ、日中は、双子の育児に加え、5歳の長男にも対応しなくてはならず、てんやわんやの忙しさ。生活のリズムを作るまでが大変でしたね。この3か月間で、普段見えなかった妻の大変さを知ることができ、より育児に積極的に関わっていこうという思いが芽生えました。

 

育児中の人たちは、普段職場でそうした大変さを表に出さないけれど、想像以上にいろんな工面をしながら働いているんだという事が身をもって分かり、人事部に所属する私にとって大きな収穫となりました。今後、こうした経験や気づきを子育てに関する施策に役立てていければと思っています。

 

清水さん:

弊社は、グループ各社によって福利厚生が多少違うのですが、子育て支援金のほかに、お祝いのイベントとして「アニバーサリーお祝い制度」を導入している会社は多いですね。例えば、社員の子どもの誕生日に社長のメッセージが印刷されたカードとともに、こども商品券3000円分が贈られます。また、社員の誕生日には、社長のメッセージが印刷されたカードに、上司が直筆メッセージを書き、図書カードを添えてプレゼントする制度を複数社で導入しています。名称や詳細は各社で異なりますが、子育て世帯を応援したいという思いは同じです。

 

グループ会社の一部で導入している「アニバーサリーお祝い制度」では、社員の誕生日に「図書券」など、社員の子どもの誕生日には「こども商品券」が贈られる。(左)株式会社BANDAI SPIRITSの社長から社員の子どもにあてた誕生日カードとこども商品券。(中央)株式会社バンダイの社長から社員にあてた誕生日カードと図書カード。(右)株式会社バンダイナムコビジネスアークの社長から社員にあてた図書カード ©BANDAI,WiZ

 

──社員ひとりひとりとその家族を大事にするというメッセージは、会社へのエンゲージメントにも繋がりますね。

 

清水さん:

こちらも統合前のバンダイで、社員が本当に喜ぶ福利厚生を作ろうと導入された制度だったのですが、評判がよかったので、統合後は各社の制度として引き継いでいます。部門によっては、月一の朝礼の時に手渡しをして、みんなで拍手をしてお祝いしているところもあるようですね。

 

子ども商品券は、育休中の社員に対しては、自宅に宅急便が届くようになっています。私も育休中に会社から贈られたことはすごく心に残っていますね。育休中は会社との距離を感じることもあるものですが、私の場合は届いたのがまさに子どもの誕生日の朝で、お祝いメッセージと共に贈られてきたことが嬉しく、会社と繋がってるんだという安心感がありましたし、「この会社に戻りたい」と決意を新たにしました。そうした思いが、今も働くモチベーションにも繋がっています。

 

 

エンターテイメント企業ならではのユニークで遊び心のある施策はさすが!子育て支援のほかにも、様々な立場に置かれている社員をきめ細やかにサポートする取り組みも行っているそう。次回はその取り組みについて詳しく伺います。

 

取材・文/西尾英子