急な欠員時も他ブランドへのヘルプが可能になり、互いに助け合える体制へと進化
── ブランド間の垣根をなくしたことで、スタッフの働き方に影響はあったのでしょうか。
佐田さん:
ある店舗でスタッフに欠員が出てしまった場合、同じ施設に入っている他店から応援に駆けつけられるようになるなど、店舗同士、互いに助け合える体制が築けました。
採用に関しても、たとえば「niko and ...」に応募してきた方と面接して、「LOWRYS FARM」のスタッフとしての配属を勧めることもあります。
アダストリアが展開するブランドは、「雑貨や家具の販売を通して、ライフスタイルを提案する店」もあれば、「レディースファッションに特化した店」もあるため、応募者の希望や適性を掘り下げて判断することが大切だと思っています。
「このブランド向きではないから…」と不合格にするのではなく、その人らしさが発揮できる場所に導く提案ができるようになり、ブランドごとの採用の偏りも改善できました。
── 面接の際に自分に合った環境を提案してもらうことで、働き始めてからのミスマッチが減らせますね。
雇用区分の拡充で広がる自分らしい働き方の選択
── 支店制度と同じタイミングで導入された「ストア職」は、どのような課題の解消につながったのですか?
佐田さん:
ストア職は、「地域に根付いた販売のプロとして働き続けたい」という従業員の声からできた職種で、多様な働き方のニーズに応えたものです。
以前は、「店長になること=キャリアアップすること」だったため、お客さまと密にかかわり続けたい人はキャリアアップをあきらめざるを得ませんでした。特に結婚している社員、育児をしている社員は、転勤することや店長として活躍することが難しいという人も多く…。
「ストア職」を設けることで、ライフスタイルに合わせた働き方を選べるように。さらに時短勤務者に関しては土日勤務や遅番勤務についても選択制にして、出勤日や勤務時間を選べるように整えました。
当社ではキッズからティーン、60代をターゲットにしたシニアブランドも取り扱っているので、「出産を機に、キッズ展開もあるグローバルワークへ異動したい」という人や、「今は30代向けのブランドだけど、そろそろ自分の年齢に合ったブランドにシフトしたい」と40代向けのブランドに異動していく人もいます。年代とライフスタイルの変化とともに、担当ブランドを変更できるのも、アパレル業界での働きやすさに繋がっているのではないでしょうか。
── アパレル業界というと、「転勤や土日勤務が多い」というイメージを持つ方も多いと思いますが、アダストリアではライフステージの変化に合わせた働き方を選べる、柔軟な体制が整っているのですね。
佐田さん:
女性社員の比率は、現在75%。育休取得率は98.1%で、妊娠、出産した方はほぼ復帰されています。時短勤務の期間もお子さんが小学4年生になるまでと、国で定められている期間よりも長く設定しており、育児サポートにも力を入れています。
また、2013年に導入した「ママアドバイザー」も、育児と仕事の両立を支援する取り組みのひとつです。女性が多い会社なので「ママさん社員の声を聞くポジションがあっても良いのでは」ということで導入しました。
新米ママからの子育てや仕事の両立などの悩みを気軽に相談できるよう、子育て中のママさん社員を「ママアドバイザー」として認定しています。相談役という立ち位置以外にも、通常業務と兼任で、産前のケアや時短勤務の期間などをまとめた冊子の作成や、自治体の活用方法などの情報提供、つわりなどの悩みを先輩ママさんに相談できるコミュニティの企画や運営などをしています。
── 相談できる存在が身近にいるというのは心強いですよね。佐田さん自身が感じるアダストリアでの「働きやすさ」とはどのようなところにありますか?
働き方を選べるのも家庭やプライベートを大切にできる魅力的な制度だと思います。例えば、店舗スタッフは土日勤務の印象が強いかと思いますが、「家族との時間を持ちたいから」と、あらかじめ土日を公休に設定しているママさん社員も一部いますし、反対に平日を休みにして土日に出勤するなど、ライフスタイルに合わせた休み方ができます。
当社では、「働く人」を大事にしています。「スタッフが店頭に立って販売をすることで、会社の売り上げが成り立っている。だからこそ、働く人材の環境を整えたい」という会長の強い思いが、社員一人一人に浸透し、働きやすい環境づくりにつながっています。
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アダストリアでは柔軟な働き方が選択でき、女性もライフイベントを通じて長く輝き続けられる土壌が整っています。加えて、「ブランド間の垣根を取り除いた」採用や人事が、社員同士のサポート体制の向上と、長く働ける風土に直結しているに違いありません。
取材・文/佐藤有香 撮影/緒方佳子